[2018_06_15_05]原発動くと電気代は… 「財務優先」九電は下げず 再エネ買い取り負担も重く(西日本新聞2018年6月15日)
 
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原発動くと電気代は… 「財務優先」九電は下げず 再エネ買い取り負担も重く

 2011年の東京電力福島第1原発事故後、原発停止による火力発電の燃料費増加で経営が悪化した大手電力会社は相次いで電気料金を値上げした。では、原発の再稼働が進めば電気料金は下がるのか。当面は据え置く方針の九州電力に対し、関西電力は値下げを決めるなど対応は分かれる。一方、電力会社の意向とは別に料金が上がっている実態もある。電気料金はどうやって決まるのか。
 九電は13年、経営悪化を受けて家庭向け電気料金を平均6・23%(法人向けは11・94%)値上げした。値上げ幅は川内1、2号機と玄海3、4号機の原発4基が13年度中に再稼働する前提で算出した。

玄海原発の再稼働、3号機は想定より4年2カ月遅れ

 しかし、再稼働に向けた原子力規制委員会の審査は長期化。玄海原発の再稼働は3号機が想定より約4年2カ月遅れの今年3月、4号機も約4年半遅れの今月16日にずれ込み、経営改善のシナリオは大きく狂った。玄海3、4号機の再稼働で1基あたり月約55億円の燃料費削減効果があるが、九電は「当面は財務改善に注力する必要がある」として電気料金の値下げには慎重な姿勢を崩さない。
 一方で高浜3、4号機(福井県)と大飯3、4号機(同)の原発4基態勢になった関電は5月、家庭向け電気料金を平均4・03%値下げする届け出を経済産業省に出した。値下げは2年連続だ。関電は福島事故後2回値上げし、値上げ幅も九電より大きかったことに加え、電力小売り自由化に伴う販売競争が関西で激化していることも、値下げの決断を早めたとみられる。

利用者に重くのし掛かる「賦課金」

 電力会社が設定する電気料金とは別に、利用者に重くのし掛かるのが、太陽光など再生可能エネルギーで発電した電力の固定価格買い取り制度(FIT)に基づき上乗せされる「賦課金」だ。
 FITでは電力会社が電力を買い取る費用を利用者が負担する。再エネの増加に伴い賦課金は積み上がり、18年度は電気使用量1キロワット時当たり2・90円。九電のモデル家庭で計算すると月725円で、FITが導入された12年度の約13倍に達している。
 賦課金は今後も増えるのが確実で、電力中央研究所社会経済研究所の朝野賢司上席研究員の試算では30年度の総額は3兆6千億円と18年度比で50%増える見通し。
 発電コスト削減と国民負担軽減のため、国は改正FIT法に基づき、大規模太陽光発電所を対象に入札制度を始めたが、朝野氏は「入札の対象を拡大するとともに、実態を踏まえた入札量を設定してコストダウンを図るべきだ」と指摘する。

=2018/06/15付 西日本新聞朝刊=


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