[2017_12_21_03]『民をだまし大地と海を汚した東京電力と政府の責任を問う』 東電は長期評価の津波予測について2008年3月には福島第一原発に 波高15.7mの津波が来襲するという結論に至っていた 12/13「井戸川裁判」(福島被ばく訴訟)第9回口頭弁論の報告 冨塚元夫(たんぽぽ舎ボランティア)(たんぽぽ舎2017年12月21日)
 
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『民をだまし大地と海を汚した東京電力と政府の責任を問う』 東電は長期評価の津波予測について2008年3月には福島第一原発に 波高15.7mの津波が来襲するという結論に至っていた 12/13「井戸川裁判」(福島被ばく訴訟)第9回口頭弁論の報告 冨塚元夫(たんぽぽ舎ボランティア)

 12月13日午前10時開廷の103号法廷には続々傍聴者が入廷し、満員で入れない人が10人以上出たそうです。この日法廷では第13準備書面の要旨が原告弁護団から読み上げられました。
 裁判後の報告会では、この準備書面について古川元晴弁護士から詳しい説明がありました。
 さらに原告井戸川克隆さんから「福島原発行政の今昔」というプレゼンがあり、科学ジャーナリストの添田孝史さんから「国が隠した福島沖の大津波」というプレゼンがありました。
 井戸川さんのプレゼンは、福島第一原発事故前の彼の日記・記録を元に、国(保安院等)、福島県が事故後の対策のマニュアルがあったのに無視して、すべきことをしなかった罪を明らかにしています。
 添田さんのプレゼンは、津波予想についての「東電のうそ」を国も県も知っていたので同罪であること、検察も知っていながら起訴しなかったことを明らかにしています。
 第13準備書面の要旨は下記のとおりです。
1.被告らは各自に課せられている責務を遵守して、2006年に改定された耐震設計審査指針(新指針)に照らした耐震安全性確認を実施すべきだった。
 (1) 被告らの根幹的な責務
  ア.東電は、原発事業者の高度注意義務、特に高度の予見義務を遵守すること。
  イ.被告国は原発事業者が遵守すべき安全基準を定め、規制権限を行使すること。
  ウ.被告国は原発事業者に対し、主導的、積極的な役割を果たすこと。
 (2) 最新の知見に即応した安全性の確認が実施されていない場合は、「設置許可をしてはならない」ので、まず原子炉を止めて万全の措置をとるべきだった。

2.被告らの、新指針に基づくバックチェックの致命的な不備と不作為は違法である。

3.被告らの反論は失当である。特に被告国の第8準備書面による「切迫」性、「優先順位」性は、論理的に成り立たない。

4.被告の最後の「優先順位」の主張は「津波対策は地震対策に比べ早急に対応すべきリスクとしての優先度がない」という主張ですが、驚くべき理屈です。
 あたかも地震対策に時間と費用をかけたので、津波対策があと回しになり、時間的に間に合わなかったかのように述べていますが、実際は耐震補強工事をほとんど行っていなかった。
 被告東電は、最終報告予定を2016年1月としており、保安院も東電のバックチェック実施および対策工事の遅れを黙認していた。

5.被告らは津波についてのバックチェック実施を完全に先送りしていた。
 しかし被告らは、福島第一原発に重大な影響を及ぼす津波として、2つの「津波予測」が存在していることを認識していた。
 1つは、バックチェック指示前の2002年に推進本部が公表した「長期評価」の津波予想で、もう1つは、バックチェック指示後に知見の進展が見られた貞観津波についての予測です。
 長期評価の津波予測について東電は、2008年3月には福島第一原発に波高15.7mの津波が来襲するという結論に至っていた。
 貞観津波の予測については、安全性確認が不可避ではないかと、保安院内部で検討されたが、プルサーマル推進を優先させようとする人たちが、まともな意見を抑えつけたことが知られている。

6.ほかの裁判では取り上げられていない重要なことがあり、それは東北電力が女川原発についてバックチェックを実施していたということです。
 そのことは、原子力安全基盤機構(JNES)が2010年に文書で報告しており、津波対策の必要性、緊急性は当時一般に認識されていなかったという被告の主張を完全に否定するものです。
 しかも、実は女川よりも福島第一のほうが津波対策の必要性、緊急性が高かったと認識されていたのです。

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