[2017_12_17_01]<沈滞 核のごみ最終処分>(中)矛盾 「全量再処理」見通せず 直接処分も研究進める(河北新報2017年12月17日)
 
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<沈滞 核のごみ最終処分>(中)矛盾 「全量再処理」見通せず 直接処分も研究進める

 原発の高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分が行き詰まっている。国は処分場の候補地となり得る地域を示した「科学的特性マップ」を公表し、意見交換会を全国で開いているが、運営を巡る不正が発覚。根本課題の説明も不十分なままだ。五里霧中で沈滞する最終処分政策を検証する。(東京支社・小沢邦嘉)

<「対策 道半ば」>
 経済産業省で10月下旬、原発の使用済み核燃料対策を話し合う会合があった。出席した11人の大手電力首脳に対し、世耕弘成経済産業相は「対策はまだ道半ば。取り組みを加速させてほしい」と呼び掛けた。
 「対策」とは核燃料サイクルと、燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分に向けた取り組みを指す。いずれも実現のめどは立っておらず、国や電力各社にとって重い課題だ。
 会合では、サイクルの中心施設である日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)の完工遅れへの対応も話し合われた。
 工場は使用済み核燃料から再利用可能なウランやプルトニウムを回収し、残りを核のごみとして分離させる施設。着工から24年たっても稼働時期が見通せない。相次ぐトラブルや原子力規制委員会の審査への対応遅れが響いているためだ。
 世耕氏は「工場完成に向け、電力各社も最大限の支援と協力をお願いしたい」と強調した。

<冷却後に埋設>
 再処理を含む核燃サイクル事業の長期にわたる停滞は、最終処分政策の土台を激しく揺さぶっている。
 最終処分の候補地を決めたスウェーデンやフィンランドは、使用済み核燃料を再処理せず冷却後に地中深く埋める「直接処分」の手法を採る。日本は全量の再処理が前提で、六ケ所村の工場が動かなければ最終処分は進まない。
 「核燃サイクルは破綻しているのに、最終処分の政策のベースとしているのは不適切ではないか」
 国が今秋、都道府県別に始めた核のごみの意見交換会では、東京都や愛知県の会場で参加者から疑問の声が上がった。経産省の担当者は「計画通り進んでいないが、破綻はしていない。再処理も技術的には可能」と釈明する。
 使用済み核燃料の問題に詳しい明治大の勝田忠広准教授(原子力工学)は「国は再処理が進まない場合、核のごみをどう処分するか説明していない」と指摘。北欧で進む直接処分について「コストも低く各国で技術研究が進む。日本も採用すべきだ」と主張する。

<幅広い選択肢>
 国内でも直接処分の研究は始まっている。経産省は2013〜17年度で計約13億円の予算を確保し、日本原子力研究開発機構に研究を委託。機構は第1次報告書を15年に公表しており、課題を整理しながら次期報告書の作成を目指す。
 経産省は研究理由を「幅広い選択肢を確保するため」と曖昧な説明にとどめるが、国内でも有力な処分手法となる可能性はある。
 勝田准教授は「国も本気で全量の再処理を考えてはいないのではないか」との見方を示し、「最終処分政策を再検討し、核燃サイクルを見直す契機とすべきだ」と提案する。

[核燃料サイクル]原発の使用済み核燃料からプルトニウムと燃え残ったウランを取り出し、新たな核燃料に加工して利用する政策。国内では青森県六ケ所村にある関連施設の稼働のめどが立たず、実現していない。プルトニウムの主な使い道とされた高速増殖炉もんじゅ(福井県)はトラブルで廃炉が決まった。

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