[2017_11_14_06]地球史に名 チバニアン 77万〜12万6000年前「千葉時代」決定へ(東京新聞2017年11月14日)
 
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地球史に名 チバニアン 77万〜12万6000年前「千葉時代」決定へ

 国立極地研究所は13日、地球の歴史のうち77万〜12万6000年前を「チバニアン(千葉時代)」と名付けるための申請が、国際学会の1次審査を通過したと発表した。審査は続くが、結論が覆った前例はほとんどなく、来年中に正式に決まるとみられる。地質年代に日本にちなんだ名称が付くのは初めて。
 ほかにイタリアの二カ所の地層にちなんだ名称も申請され投票となったが、千葉県市原市で見つかった七十七万年前の地層をもとにしたチバニアンが六割以上の支持で選ばれた。
 四十六億年に及ぶ地球の歴史は、地層中の化石などから決める地質年代で分け、恐竜が繁栄した「ジュラ紀」や「白亜紀」などがあり、さらに細かな年代に分かれている。茨城大や極地研のチームは六月、市原市の地層が、年代の境界を示す代表的な地層の「国際標準模式地」にふさわしいとして、国際地質科学連合に申請し審査を受けていた。
 地層には、七十七万年前に地球の磁気のN極とS極の向きが逆転した跡が、鉱物などに良好な状態で残っている。岡田誠茨城大教授(古地磁気学)は「地学に関心をもってもらえる良い材料になる」と喜びを語った。
 この地層はかつて海底にあったころに積もり、その後に盛り上がって陸地になり、市原市を流れる養老川沿いの崖に現れている。
 今回通過したのは作業部会の一次審査。票が僅差なら決選投票になる可能性もあったが、一回で決着した。今後、国際地質科学連合が実施する三回の審査を経て正式に認定される。

◆市原の地層 磁気逆転跡 初の日本名 空白埋める
 四十六億年におよぶ地球の歴史を表す目盛りの役割を果たすのが地質年代と呼ばれる時代区分で、その年代が具体的に何年前なのかを示す基準となるのが国際標準模式地だ。これまで約七十七万〜約十二万六千年前の時代区分の名前がなかった。そこに千葉にちなむ名がつく見込みとなった。
 これまで名付けられた模式地の多くは欧州を中心とした地域が占める。地質学が欧州で生まれて発達したため、伝統的に欧州の地名から選ばれることが多かった。
 時代を区分する目印として、生物の大量絶滅による化石の変化や、氷河期など気候変動の痕跡などのほか、地球磁場の逆転の跡も使われる。地球は大きな磁石の性質を持っているが、N極とS極が反転して入れ替わる現象が何度も起こっている。目印になるのは、地質をつくる岩石に痕跡を残すからだ。
 市原市の地層には、最も新しく起こった七十七万年前の磁場逆転の跡がはっきり残る。国内の多くの研究者が協力し、地層に含まれる微生物の化石や火山灰などを調べることで地磁気が逆転した年代や環境を精密に割り出した。世界的な標準にふさわしいことを示す綿密なデータをそろえてライバルを突き放した。(永井理)

 <国際標準模式地> 46億年間の地球の歴史は、繁栄した生物や環境の変化に基づく「地質年代」で区分する。国際地質科学連合は、年代の境界を観察しやすい代表的な地層を「国際標準模式地」として世界に1カ所ずつ認定。世界で65カ所以上あるが、大半が欧州で日本にはない。

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