[2017_10_13_03]隕石直撃は現実の脅威だ(島村英紀2017年10月13日)
 
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隕石直撃は現実の脅威だ

 さる7日の夜、中国南部にある雲南省で人々が中秋の名月を楽しんでいた最中に隕石(いんせき)が落下した。
 暗闇が急に明るくなって大きな火の玉が落下した。多くの動画や写真が記録され、その映像は中国の国営中央テレビでも放映された。
 落ちてきた隕石は小さかった。マグニチュード(M)2.1の振動を生じた。TNT火薬540トンの爆発に相当した。2001年にニューヨーク貿易センタービルに旅客機が突っ込んで崩壊したときはM2.3だったから、それよりも小さかった振動だったことになる。
 だが、今週10月12日昼過ぎ、はるかに大きな10〜30メートルの大きさの小惑星「2012 TC4」が地球に最接近した。地球からは約4万3500キロの距離を通ることが計算されていたので、幸い地球に落ちてこないことが分かっていた。
 だが、もし10〜30メートルもの隕石が落ちてきたら大変なことになる。たとえば2013年にロシア西南部・チェリャビンスクに落ちて爆発した隕石は約17メートルの大きさだった。衝撃波で東京都の面積の7倍もの範囲で4000棟以上の建物を破壊し、1500人もの重軽傷者を生んだ。都会のような人口密集地だったら大変だった。
 じつは、地球から4万キロあまりの距離というのは意外に近い。衛星テレビや気象衛星、通信衛星などの赤道上の静止衛星の高さは約36000キロだから、静止衛星なみのところを通ることになる。
 じつは9月1日に、過去最大級の小惑星が地球に最接近していた。この小惑星は直径約5キロもあり、「フローレンス」という愛称までついていた。白衣の天使フローレンス・ナイチンゲールにちなんだ名前だ。
 この小惑星は地球から約700万キロの距離を通った。ちなみにこの距離は月と地球の距離の約18倍の距離だ。
 米航空宇宙局(NASA)は声明で、フローレンスについて「地球からこれほど近い距離を通過する小惑星としては、1世紀以上前に最初の地球近傍小惑星が発見されて以来で最大」としている。
 最近では、大きな隕石が地球に衝突する頻度は、これまで考えられていたよりもずっと高いことが分かってきている。現代の私たちにとっては月見がてらに楽しむのではすまないのだ。
 2000年から2013年の間に26個の大きな隕石が落ちてきた。この26個が地球に衝突したときのエネルギーは、TNT火薬にして1000トンから60万トンの威力があった。ちなみに米国が広島に投下した原子爆弾は16000トン相当だったから、どれも相当な威力だった。
 直径数十メートル以上の天体は、地球に接近する可能性があるものだけで100万個もある。
 そのうち発見されているのは1万個ほどにしかすぎない。チェリャビンスクに落ちた隕石も、落下してくるまで知られていなかった。
 いまの探査技術では将来を知るにも限界があるのだ。Jアラートも、もちろん対応していない。

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