[2017_09_07_03]原発と核燃料サイクルは膨大な無駄遣い_ほとんどが税金の投入と電力料金への上乗せでまかなわれています_原発と核燃料サイクルから撤退して膨大な無駄遣いをへらそう_木原壯林(若狭の原発を考える会)[中]3回連載(たんぽぽ舎2017年9月7日)
 
参照元
原発と核燃料サイクルは膨大な無駄遣い_ほとんどが税金の投入と電力料金への上乗せでまかなわれています_原発と核燃料サイクルから撤退して膨大な無駄遣いをへらそう_木原壯林(若狭の原発を考える会)[中]3回連載

(2) 新規制基準クリアに膨大な経費
 福島第一原発事故後に導入された新規制基準に適合させるには莫大な費用がかかり、電力会社にとっては大きな負担となっています。新規制基準をクリアして再稼働した九州電力川内原発1、2号機は、耐震補強などの費用、合わせて2千数百億円かかったといわれます。原発を新規制基準に適合させるために追加が必要になった原発安全対策費は、電力11社で約3兆3千億円に上るとの報道もあります(2016年7月)。とくに老朽原発での工事費がかさんでいます。

 注意しなければならないのは、この新規制基準も、福島第一原発事故から十分学んだものではなく、原子力規制委員長までもが言うように「安全を保証するものではない」こと、また、新規制基準は、「原発に完全な安全性を求めるべきでない」という考えの下に作られていることです。
 もし、考えられる全ての安全対策を要求したとしたら対策費は無限大になります。原発は、万が一にも重大事故を起こしてはならない装置です。
 関連して、原子力防災道路の建設にも巨費をつぎ込んでいます。例えば、高浜町音海から高浜原発を避けて南下する1.4kmの原子力防災道路が作られていますが、総工費は約380億円で、財源は国の交付金(元は税金)です。
(3) 原発の建設費、廃炉費は格段に高い
 1997年稼働の柏崎刈羽原発7号機(100万kW、現在は135.6万kW)の建設費は約2,704億円で、2015年に稼働した天然ガスエンジン発電所日本テクノ上越グリーンパワー(100万kW)の建設費約1,401億円、現在建設中の中部電力西名古屋発電所LNG7号機(231.6万kW)の建設費約1000億円、2011年から検討が始まった東京天然ガス発電所プロジェクト(100万kW)の建設費約1,000億円に比べて圧倒的に高い。
 一方、原発の廃止措置の費用は、事故を起こしていない原発について、以下のように予想されています(ただし、この費用には、使用済み核燃料や放射性廃棄物の処理保管費は含まれていません)。
 ・小型炉(50万kW級):360〜490億円、
 ・中型炉(80万kW級):440〜620億円、
 ・大型炉(110万kW級):570〜750億円
 (なお、日本には完全に廃炉にされた原発は1基もありません。)
 これらは、火力発電所(50万kW級以下)の廃炉費:〜30億円程度に比べて、けた違いに高い。
 全国の原発を廃炉にするための費用について、電力各社でつくる電気事業連合会は、事故を起こした東京電力福島第一原発の1号機〜4号機と中部電力浜岡原発の1、2号機を除いて、2015年度末で約2兆9000億円にのぼると見込んでいます。
 これに関して、各電力会社が昨年度末までに積み立てた資金は約1兆7000億円。残る約1兆2000億円はまだ手当されていません。その積み立てに必要な資金は「総括原価方式」という制度のもとで、電気料金で徴収する仕組みになっています。
 なお、国の委員会は、この廃炉費用を託送料(電気を送るための送電線を所有している電力会社が、電力の供給先である家庭や企業から集めているいわば送電線の“利用料”)に上乗せしようとしています。この場合、電力自由化によって新規参入した電力販売事業者も、原発電気でなく太陽光などの再生可能エネルギーによる電力を供給していても、廃炉費用を支払うことになります。新規事業者は送電線を自前で持たず、大手電力会社に託送料を払って、電力を供給しているからです。

(4)原発は停止中でも、膨大な維持管理費がかかる
 経産省の試算では、原発が止まっていて収益を生まない状態でも、全国総計で1兆2千億円(2011年)〜1兆4千億円(2014年)と巨額の費用がかかるとしています。大半が電力料金に転嫁されます。原発の運転には減価償却費、人件費、固定資産税など合計1兆5千億円かかります(2011年)。
 このうち、原発を止めると不要になる経費は使用済み核燃料の再処理コストや燃料費などの計3千億円ですから、停止中でも1兆2千億円がかかることになります。これが、電力会社が再稼働を急ぐ理由の一つでもあります。なお、2014年の経費が膨らんだのは、安全対策工事費の増加によります。 [下]に続く

KEY_WORD:_: