[2017_08_19_01]「できるだけ住民を避難させない」という規制委員会の姿勢が露呈している「原子力災害対策指針」の改悪について_上岡直見 [環境経済研究所(技術士事務所)](たんぽぽ舎2017年8月19日)
 
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「できるだけ住民を避難させない」という規制委員会の姿勢が露呈している「原子力災害対策指針」の改悪について_上岡直見 [環境経済研究所(技術士事務所)]

◎ 原子力規制委員会の「原子力災害対策指針」が2017年7月5日に改訂されたが、重大な内容の後退がみられる。
 これまで「警戒事態(EAL)」の要件として「当該原子炉施設等立地道府県で震度6弱以上の地震が発生」と「同、立地道府県沿岸で大津波警報が発令」とされていたが、対象の「道府県」が「市町村」に縮小されてしまった。
◎ 具体的にどういう影響があるかというと、2004年10月23日の中越地震では、震度6弱が小千谷市、震度4が長岡市と柏崎市であったから新規制基準を適用したとすると柏崎刈羽原発は警戒事態から除外されてしまう。
 同じく2007年7月16日の中越沖地震では、震度6弱が長岡市と出雲崎町、震度5強が柏崎市であったから、これも同じ結果になる。
◎ 2016年4月14日以降の熊本地震では、川内原発のすぐ近くで震度6弱以上が観測されているのに、隣の県だから警戒事態にあたらないという不合理が指摘されていながら、逆に範囲を縮小する改悪が行われた。
◎ 物理現象として同じであっても、紙の上の手続きを変更して「できるだけ住民を避難させない」という原子力規制委員会の姿勢が露呈している。

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※以下は8月26日付のたんぽぽ舎メルマガの訂正文と差し替え部分である。
※8/19発信【TMM:No3152】で、規制委員会の「原子力災害対策指針」が2017年7月5日の改訂において「当該原子炉施設等立地道府県で震度6弱以上の地震が発生」の条件で「道府県」が「市町村」に縮小されたことについて、中越地震と中越沖地震を適用したとすると柏崎刈羽原発が対象から外れてしまうと指摘しましたが、説明が不足していたので下記のように訂正します。

○気象庁の「気象庁震度データベース検索」
 http://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/
によると2000年以降で新潟県内で震度6弱以上の地震は7件ありました。従ってこれらは旧指針(立地都道府県)ならば警戒事態の対象となりますが、改訂指針(立地市町村)では5件が対象外になってしまいます。それら5件の震度分布を次の地図に示します。
 http://sustran-japan.eco.coocan.jp/datafile/EAL.pdf
 これらの中には余震・誘発地震と思われるものもありますが、それらがどのように発生するかは予測できませんから各々別の地震とみなします。

○隣の市で震度6強でも改訂指針では警戒事態になりません。これはできるだけ住民を避難させない方針であり、その理由は明白でしょう。
 たとえ運良く短期間で収束しても、一部でも避難あるいは準備だけでも住民に生活妨害・業務妨害が発生し、電力事業者に賠償が請求されます。その可能性を減らしたいという意図であると思われます。

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