[2017_07_12_01]【社説】核のごみ 増やさないのが大前提(東京新聞2017年7月12日)
 
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【社説】核のごみ 増やさないのが大前提

 核のごみの最終処分。政府は“有望地”すら示せない。福島の事故を起こして省みず、この上ごみを増やしてしまう再稼働にはひた走る。そんな日本の「原子力」への強い不信が根にあるからだ。
 原発再稼働が“なし崩し”に進んでいると、不安の声が上がっている。広域避難計画、立地地域以外の地元同意、そして核のごみ問題の“三点セット”を置き去りに、安全よりも電力会社の収益改善最優先で、事が進んでいるかのようにも映ってしまう。
 中でも核のごみ、とりわけ、高レベル放射性廃棄物の最終処分に関しては、この十年、ほとんど進展が見られない。
 高レベル放射性廃棄物とは、使用済み核燃料を再処理、つまりリサイクルしたあとに出る、極めて危険な廃液のことである。
 原発を持つ電力会社でつくる原子力発電環境整備機構(NUMO)という事業主体、安全な容器に封じ込め、地盤の安定した地中に埋設−という処分方法は決まっている。
 だが、肝心の処分地を決められない。長年公募を続けていても、受け入れを申し出る自治体は現れない。そこで政府が前面に出て、「科学的有望地」を示すマップを提示した上で、処分地選定を主導する方針に切り替えた。
 しかし、いまだマップは示せていない。「有望地」という表現では、そこに住む人たちの強い反発を招くだろうからと、「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」に名称も改めた。
 政府は五月から六月にかけ、新たな処分地選定方針の説明会を全国の主要都市で開催した。予想どおり、会場からは、地下水や地震の影響、政府による一方的な押しつけを懸念する声が相次いだ。

 学識者がいくら安全を強調しても、不安は次々わいて出る。
 福島の事故を「想定外」と決めつけ、事故処理や被害の補償もままならない。その上、動かせば核のごみがまた増えることを分かっていながら、再稼働には前のめりな日本の原子力行政と、それを支えた“科学”に対する不信はまったく拭えていない。

 処理困難なごみは出さない−。発生抑制こそ、ごみ問題の基本である。核のごみも同じこと。
 再稼働をいったん棚上げし、核のごみを増やさない状態にした上で、地震国日本における原子力のあり方そのものを、国民と徹底的に話し合う−。そんな覚悟がない限り、応募者は現れない。

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