[2017_07_04_03]再処理事業費13.9兆円 機構発表 安全対策で1.3兆円増 MOX事業費2.3兆円 県や六ケ所村「安全確保第一」 反対派「国民負担増す」(東奥日報2017年7月4日)
 
 原発から出る使用済核燃料の再処理事業を担う認可法人「使用済燃料再処理機構」は3日、日本原燃・六ヶ所再処理工場の総事業費が約13兆9千億円となり、約1兆3千億円増額すると発表した。新規制基準対応に向けた安全対策工事の増加が主な要因。
           (阿部泰起)

 MOX(ブルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料工場の総事業費は具体的な設計を基に試算した結果、約2兆3千億円となり、従来の約1兆2千億円から膨らんだ。両事業費を踏まえ算定した、同機構が電力各社から集める拠出金の単価が6月30日付で経済産業相から認可された。
 再処理工場の総事業費は、工場建設費と40年間の運転費。廃止措置費を含む。内訳は再処理が約13兆円、海外から返遺された高レベル放射性廃棄物の貯蔵管理が約9千億円。
 今回、事業費が大幅に膨張したのは、原子力規制委員会の新基準適合性審査での指摘を踏まえ、安全対策工事費が従来の約540億円から約7500億円に増加したため。原燃は重大事故発生時の指令拠点となる緊急時対策所と貯水槽の新設や、耐震補強などの工事を今後本格化させる。
 同機構は原燃から提案された事業費原案を運営委員会で精査し、見直しや再算定した結果、再処理事業費で約210億円、MOX事業費は約50億円をそれぞれ減額した。事業費精査で委員からは「安全確保のために十分な投資がなされているか、最新知見を反映しているかを確認していくべき」「何年後かに大きく費用が増えるのは良くない」などの意見が出たという。
 同機構は「原燃に対し、より一層、安全確保・コスト最適化に向けた取り組みを促していく」とコメント。原燃報道部は「再処理等事業費が増えることになるが、安全安心をつくり上げていくために必要不可欠と考えており、引き続き安全を最優先に取り組んでいきたい」と語った。同機構は原燃に対し17年度事業委託費として約2269億円を予算措置していたが、今回の見直しにより約7959億円に変更した。

 県や六ヶ所村
 「安全確保第一」
 反対派「国民負担増す」

 使用済み核燃料の再処理関連事業費が大幅に膨張したことに対し、県や六ヶ所村は3日の取材に「何より安全確保を第一に取り組んでほしい」との認識を示した。一方で反核派は「電気利用者である国民の負担増につながる」と批判した。
 六ヶ所村の戸田衛村長は報告がなく詳細は承知していないとした上で「村としては(第一に再処理事業の安全対策をしっかりと講じていただきたい」と語った。県エネルギー総合対策局の大澤隆夫局長は「事業者は新規制基準の適合に万全を期すとともに、安全性向上の対策に一層の責任と使命感を持って取り組んでほしい」と、認可法人・使用済燃料再処理機構と日本原燃に注文を付けた。
 一方、市民団体「核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団」の山田清彦事務局長は東海再処理施設(茨城県)の「廃止措置費用が約1兆円に膨らんだことを例に挙げ、「六ヶ所再処理工場の総事業費は過少に積算されているのではないか。再処理工場は既に老朽化しており、補修費用などを含めるとさらに事業費は増えるはず。国民につけをまわす事業は即刻止めるベきだ」と訴えた。(阿部泰起、加藤景子)
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