[2017_06_06_01]ベント了解削除 地元との「約束」忘れるな(新潟日報2017年6月6日)
 
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ベント了解削除 地元との「約束」忘れるな

 削除という結果が妥当かどうかは疑問が残る。いずれにせよ「再稼働ありき」に陥らず、地元と丁寧に向き合うことを求める。
 県と東京電力は、柏崎刈羽原発6、7号機を巡る審査申請書の一部を削除することで合意した。申請書は、東電が原子力規制委員会に提出したものだ。
 削除対象は、重大事故時に原子炉格納容器内に発生した高温高圧の蒸気を外に逃がす「フィルター付きベント」に関する文言だ。地元の事前了解を盛り「立地自治体の了解の後に運用開始」などとした部分である。
 東電側は、規制委員会の審査会合の議論を踏まえた判断だと説明している。会合では文言の解釈次第で重大事故の際の対応に支障を来すと問題視され、申請書の補正を求められたという。
 削除ではなく、文言の修正で対応する方法はなかったのか。そうした疑問が拭えないのは、この文言は6、7号機の審査申請を認める条件として県が東電に求めた経緯があるからだ。
 4年前、東電は地元への事前説明なしに審査の申請を表明し、県などから「地元軽視」と厳しい反発を浴びた。
 申請を急いでいた東電は事態を打開するため、当時の泉田裕彦知事の要請をほぼ受け入れた。ベントを巡る「立地自治体の了解」はその約束の一つだ。
 県と東電は削除後も「立地自治体の了解」の約束に変更がないことを確認した上で合意したが、東電はこの文言がなぜ盛り込まれたかを思い起こすべきである。
 福島第1原発事故の発生直後に炉心溶融が起きていたにもかかわらず、すぐに公表しなかった。柏崎刈羽原発の免震重要棟を巡って事実と異なる説明をしていた。東電は自己の都合を優先し、批判を浴びてきた。
 地元への事前説明なしに審査申請の表明を急いだことも、これらと同根の問題といえる。問われているのは、「自社優先」「地元軽視」の体質から本当に脱却できるか否かである。
 柏崎市の桜井雅浩市長は6、7号機の再稼働を認める条件として他号機の一部廃炉などを求めた。
 こうした再稼働を巡る新たな動きへの対応にとらわれ、東電がこれまでの反省を忘れるようなことがあってはならない。
 東電では近く首脳陣の交代があるだけに、反省を社内全体で共有していくことは不可欠である。
 米山隆一知事は東電から文言削除の方針を伝えられた際、「重要なのは(申請書に)記載することより中身」と述べた。
 実態が変わらないのなら削除はやむを得ないという理屈だろう。だが地元了解に関する文言が申請書で認められれば、県の判断の重みはさらに増したはずだ。
 米山知事は柏崎刈羽原発の再稼働に慎重姿勢を示してきた。文言削除に同意したからといって、それが変わるわけではなかろう。
 「地元了解」の削除がおかしな形で独り歩きしないよう、改めて知事自身の姿勢をきちんと説明していく必要がある。

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