[2017_04_21_04]東電社長謝罪 いまさら地元最優先とは(新潟日報2017年4月21日)
 
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東電社長謝罪 いまさら地元最優先とは

 東京電力柏崎刈羽原発の免震重要棟の耐震性が不足していた問題で、東電ホールディングスの広瀬直己社長が県、柏崎市、刈羽村を訪れ、米山隆一知事ら首長に社内調査の結果を報告した。
 東電は免震棟の耐震性が原子力規制委員会の新規制基準を満たしていないことを把握しながら、社外にきちんと伝えていなかった。
 広瀬社長は謝罪し、問題の背景には「自社の都合優先の体質がある」と結論付けた。また報道陣に対して「社員一人一人に『地元最優先』を根付かせなければいけない」と述べた。
 東電トップが改めて「地元最優先」に言及したことに驚く。同時に問題の根の深さを実感する。
 原発はいったん事故が起きてしまえば、立地地域を中心に甚大な被害をもたらす可能性がある。それは、東電福島第1原発事故で現実になった。
 原発を運転する電力会社には地域や住民の安全と安心に責任を負う義務があるはずだ。その土台となるのが「地元最優先」「地元重視」の意識だろう。
 東電は収益改善に向け柏崎刈羽原発の再稼働を目指している。だが、いまさら「地元最優先」を掲げなければならない電力会社が原発の運転を担うに足る組織なのか疑問が募る。
 米山知事は「根本的な考え方を変えてもらわないといけない。意識改革ができないなら、信頼するに足りないということになる」と述べた。当然の指摘だ。
 これから東電が問われるのは、改革を本気で実行し、目に見える形で企業体質の改革ができるかどうかである。
 報告書では広瀬社長が述べたように、免震棟問題が起きた背景について「自社の目線のみにとらわれ、社会の視点よりも自社の都合を優先して考え、行動してしまう体質がある」と分析し、再発防止を誓っている。
 そのための具体策として、審査に対応する部門と地元に説明する部門との連携を深めることや、改善策が地元本位になっているか第三者からの評価を受けることなどを盛った。
 しかし、それだけでは本当の改革にはつながらないだろう。問題の根本には「自社の都合優先」が改まらないことがある。それがなぜかを突き詰めて考えることが不可欠である。
 東電は2002年の原発トラブル隠しで失墜した立地地域の信頼回復のため、地元への丁寧な説明を重視するとしていたはずだ。2年前には新潟本社と新潟代表を置く機構改革も実施した。
 にもかかわらず東電の「地元重視」は社外の意識と乖離(かいり)したものにすぎなかった。さかのぼって詳しく検証し、今後に生かさなければならない。
 先ごろ、柏崎刈羽原発の敷地にある断層が将来活動する可能性が県内の地質学の専門家から指摘された。東電はこれまで活動性を否定しており、主張を変える姿勢も見せていない。
 この問題についても、地元最優先の観点で対応してもらいたい。

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