[2017_03_30_07]東電の対応に不信 柏崎刈羽原発 再稼働審査 規制委、異例の社長面会(東奥日報2017年3月30日)
 東京電力が再稼働を目指す柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の審査で、東電の対応が地元や原子力規制委員会の不信を招いている。規制委は2月、東電の広瀬直己社長を呼び出し、審査申請書の出し直しを要請。福島第1原発事故から6年たったが「東電の安全意識に変化がない」との批.判が消えない。規制委の田中俊一委員長は3月29日の記者会見で「安全文化の最大のキーはトップマネジメントだ」とくぎを刺した。
 要請の引き金となったのは、柏崎刈羽の免震重要棟の耐震性不足を示す試算を東電が約3年前に把握していながら、審査会合などで報告していなかったことだ。
 「事故で社会的信頼を失墜し、人一倍努力しないといけないのに、こういうことが起きている」。広瀬社長も出席して2月28日に開かれた規制委臨時会合で、田中委員長は厳しい口調で非難した。
 規制委が審査中の原発に絡み、電力の社長と面会するのは異例。委員長は「審査の前提となる内容に疑義を抱かざるを得ない」などとして、申請書の出し直しを求め、当初1時間を予定していた会合を約30分で終えた。
 免震棟の問題以前から、不信感を抱かせる出来事はあった。東電は昨年10月、1〜4号機の海側に設置した防潮提が、地震による地盤の液状化で損傷する恐れがあると説明。規制委関係者によると、東電はそれまで「液状化はしない」との主張を続け、規制委が何度も根拠を確認する中で、ようやく認めたという。
 「東電は説明の内容や根拠に変化が生じたときに、その変化を説明しない。不備なら不備、変化なら変化と自ら言うことが信頼回復になると思うが、形になっていない」(更田豊志委員長代理)
 会合では、他の委員からも厳しい意見が相次ぎ、広瀬社長は「小出し、後出しになり、隠しているのではないかということにつながるケースがあった」とうなだれた。
 東電は当初、免震棟を事故時の対応拠点として使用する考えで、柏崎刈羽で想定する地震で免震棟が揺れても、多くの場合、地下にある周囲の壁と衝突することはないと説明。今年2月になって、衝突する恐れがあるとの試算を2014年にしていたことを明らかにしたが、審査会合の資料に記載しただけで、規制委側から聞かれるまで積極的な説明をしようとしなかった。
 東電の姉川尚史原子力・立地本部長は「試算は信頼性が劣ると考えた。社内の情報共有も不十分だった」と釈明したが、長年、柏崎刈羽原発に反対してきた柏崎市の矢部忠夫市議は「隠蔽体質が変わっていないのでは」と憤る。
 規制委の要請に「しっかりたたき直して対応する」と応じた広瀬社長。しかし、数千ページに上るとみられる関係資料の全ての確認が必要となり、提出時期は見通せない。新潟県の米山隆一知事が再稼働の前提と位置付ける福島第1原発事故の検証作業などにも数年かかる見通しで、東電が経営再建の柱に据える柏崎刈羽原発の再稼働は、ますます遠のいている。
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