[2017_03_29_05]高浜原発 再稼働へ 3,4号機 運転禁止取り消し 高裁「新基準に合理性」(東奥日報2017年3月29日)
 関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転を差し止めた昨年3月の大津地裁の仮処分について、大阪高裁は28日、関電の抗告を認めて取り消す決定をした。山下郁夫裁判長は東京電力福島第1原発事故後に策定された原子力規制委員会の新規制基準の合理性を認定した。2基が法的に再び運転可能となり、稼働中の原発を止めた全国初の司法判断は約1年で覆った。
 関電の岩根茂樹社長は「地元の理解を得ながら、再稼働に向け安全最優先で準備を進める」と述べた。時期は未定としたが、早ければ4月下旬ごろにも運転を再開する見通し。早期の電気料金値下げを目指す。
 山下裁判長は新基準に関し「事故の教訓を踏まえ、最新の科学的、技術的知見に基づいて策定されており、不合理とはいえない」と指摘。
 新基準によって高浜原発で新たに設定された基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)は過小とはいえず、耐震補強工事や津波対策なども適切だとして「事故時に炉心の著しい損傷を防ぐ確実性は高度なものになっている」と判断した。
 抗告審では地裁決定後に発生した熊本地震も争点となり、住民側が新たに「大きな揺れが連続して起きると想定していない」と主張。決定は「高浜原発で基準地震動規模の揺れが連続するとはほぼ考えられず、起きたとしても安全性は確保されている」と退けた。
 住民側は今後、特別抗告などの手続きで最高裁の判断を仰ぐことができるが、憲法違反などの要件が定められ、退けられた場合に全国の同種裁判へ与える影響も考慮して慎重に対応を検討する。
 仮処分は福井県に隣接する滋賀県の住民が2015年1月に申し立て、大津地裁が昨年3月9日に運転禁止を決定。新基準などに疑問を示すとともに、福島の事故を踏まえた広域被害の恐れなどを挙げて住民らへの人格権侵害を認めた。
 関電が翌10日、当時実際に稼働中の3号機を停止後、2基は稼働していない。関電は2基の停止に伴う代替発電で生じる損失は1日当たり2億〜3億円規模としていた。
 さらに地裁は関電側の異議なども退けたため、関電は大阪高裁へ抗告する一方、停止期間の長期化を見込んで昨年8、9月に燃料を取り出した。
 地裁では昨年3月の仮処分決定やその後の異議審などを全て同一の裁判長が担当。高裁では一連の手続きで初めて別の裁判長が審理した。

 高浜原発と運転差し止め

 関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)は1985年に営業運転を開始した。避難計画の策定が必要な半径30キロ圏には福井県だけでなく滋賀県や京都府の一部を含む。東京電力福島第1原発事故後に再稼働や運転の是非が争われ、福井地裁は2015年4月に再稼働差し止めの仮処分決定を出したが、関電の異議で同年12月に覆った。半径約70キロまでの範囲に住む滋賀県の住民が申し立てた2度目の仮処分で大津地裁が昨年3月に運転差し止めを決定。その後法的に運転できない状態が続き、関電は2基の核燃料を取り出した。
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