[2017_03_06_02]<玄海原発>「再稼働の判断材料」アリバイ作りの第三者委?(毎日新聞2017年3月6日)
 
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<玄海原発>「再稼働の判断材料」アリバイ作りの第三者委?

 ◇佐賀知事が設置 国、九電が延々説明 提言すら求めず

 佐賀県玄海町が近く町内に立地する九州電力玄海原発3、4号機の再稼働に同意する。今後の焦点は県の判断に移るが、山口祥義(よしのり)知事が「再稼働の判断材料とする」として設置した第三者委員会の位置付けがあいまいだ。知事への提言なども予定されておらず、委員会内部からも「再稼働のアリバイ作りに利用されているだけでは」と疑念の声が上がっている。
 第三者委は昨年末に設置された。委員は農林水産業や経済、医療など県内各界の代表30人だが、原発の専門家は工藤和彦・九州大名誉教授(原子力工学)だけ。このため工藤名誉教授を部会長に専門家7人でつくる部会も別途設け、それぞれが別々に議論している。
 ただその立場は「再稼働について広く意見を聞く場」(設置要綱)にすぎず、県は「議論して何か方向性を出すものではない。県民説明会での(一般の)意見と同じ位置付け」(新エネルギー産業課)とする。

 川内(せんだい)原発の安全性を議論する鹿児島県の専門家委員会も位置付けが不明瞭だが、それでも「(1号機に)熊本地震の影響はなかった」という意見書をまとめ、三反園訓(みたぞのさとし)知事はそれを根拠に2月22日、1号機の運転容認を表明した。これに対し、佐賀県はそうした意見書や提言すら求めず、委員会や部会での個々の意見が山口知事に伝えられるだけだ。
 しかも知事は元々「再稼働の方向で考える」という立場で、早ければ4月にも同意表明するとみられている。そうした中で設置された第三者委の役割には委員自身が懐疑的だ。

 象徴的な場面が2月8日の2回目の会合の際にあった。委員の一人で、県地域婦人連絡協議会会長の三苫紀美子さん(71)は午前中、再稼働に反対する立場から発言した。だが他に発言者は少なく、午前の会合を終えた控室で三苫さんがたまらず他の委員に「なんで何も言わないの」と聞いたところ、ある委員が「決まったこと(再稼働)ば、いくら言うたって同じやろもん」と答えたという。
 この会合では、原子力規制庁や九電などの職員による説明が延々と続いた。同じく再稼働に反対する委員の県労働組合総連合議長、北野修さん(53)は「再稼働を目指す国と九電の説明ばかり聞かされ、再稼働にもっていこうという意図を感じた」と話す。三苫さんも「委員会を作ったことが再稼働のアリバイに利用されるのならば許せない。知事は結論ありきではなく、もっと時間をかけた議論を促すべきだ」と訴える。【関東晋慈】

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