[2017_02_24_04]社説 [知事と川内原発] あいまい姿勢は無責任(南日本新聞2017年2月24日)
 
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社説 [知事と川内原発] あいまい姿勢は無責任

 知事選の公約に掲げた「脱原発」に向けたエネルギー政策に注目している県民がこれで納得するだろうか。
 鹿児島県の三反園訓知事は運転中の九州電力川内原発1号機(薩摩川内市)について、県議会代表質問で「現状では(九電に)強い対応を取る必要はない」と答弁した。
 昨年7月の就任から半年余りたつ。知事が初めて川内原発の安全性を認め、運転継続を容認したものと受け止められている。
 公約に期待を寄せてきた県民の中に、失望感が広がっているのは当然だろう。
 知事は、記者会見などで「原発に頼らない社会をつくる」と再三繰り返してきた。
 「脱原発」の姿勢はぶれていないと言うものの、本音は違うのではないかと疑念を持たれていることを真剣に受け止めてほしい。
 「脱原発」の考えが変わったのなら、率直に県民に語るべきだ。それがトップの説明責任である。あいまいな姿勢は無責任だ。
 川内原発1号機は原発の新規制基準により2015年8月、全国の原発で初めて再稼働した。昨年10月に定期検査に入り、12月に運転を再開した。
 その際、知事は川内原発に関する県の専門委員会の議論を踏まえて判断するとし、運転再開を黙認して「本年度中に自身の判断を示す」としていた。
 今回の答弁はそれにあたるものなのか。知事は運転継続を容認する根拠として、「専門委員会で専門的見地から熱心で活発な質疑応答が交わされた結果、問題があるとの意見は出されなかった」と述べた。
 だが、専門委がまとめた1号機についての意見書は、「熊本地震の影響はなかった」という九電の特別点検などの結果を了承したにすぎない。
 専門委は昨年末に設置されたが、原発自体の是非判断や廃炉の検討はしないことは確認済みだ。安全性の検証にしても、限界があるとの見解を座長が示している。
 これでは、原発に不安を持つ県民に到底受け入れられまい。
 本会議後に報道陣に答弁の真意を問われた知事は、「本会議で述べた通りで、それ以上でもそれ以下でもない」と述べた。
 まるで木で鼻をくくったような言葉である。真摯(しんし)に県民に向き合う「心」が伝わってこない。
 まずは脱原発に向けた中期的なビジョンを明確に示すべきだ。今のままでは、「脱原発」は知事選に勝つための方便だったとのそしりは免れない。

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