[2017_01_28_03]原発避難者住宅 復興は支援継続にあり(東京新聞2017年1月28日)
 
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原発避難者住宅 復興は支援継続にあり

 福島原発事故の自主避難者向けに福島県が無償で行っている住宅支援の廃止が迫る。国策が招いた災害の被害者を強制退去などで住まいから追い出してはならない。被災者の復興は支援あってこそ。
 住まいという生活の基盤を奪われてしまったらどうなるか。行き場を失う人が出る。自主避難者たちは不安を募らせている。
 自主避難者は国が決めた避難指示区域の外から被ばくを避けるために県内外に避難した人たちだ。避難指示区域から避難した人たちとは違い、不動産賠償や精神的慰謝料の支払いなどはなく、経済的にも追い詰められがちだ。
 その点でも福島県の判断で「みなし仮設住宅」として無償提供される住宅は役立った。災害救助法に基づく制度で最終的には国庫負担金などで全額賄われる。対象者は昨年10月時点での約12000世帯(約32000人)。賠償の蚊帳の外に置かれた自主避難者にとっては唯一の補償のようなものだ。
 この支援が3月末で打ち切られようとしている。県は除染が進んだことや、食品の安全が確認されたことなどを廃止の理由に挙げているが、避難者が納得できるだろうか。県によると昨年10月時点で7割が4月以降の住居を決めていなかった。
 復興庁の調査などでも分かるように、ふるさとに帰還を希望する避難者の割合は低い。若い世代ではほとんどが避難先での生活を続けることを望んでいる。子どもの生活環境をまた変えることや、汚染の残る場所に戻ることへの不安が大きいからだ。
 自主避難者の団体は4月以降も住宅の無償提供を継続するよう求めているが、県は廃止方針を変えていない。避難者側に示されたのは月額所得214000円以下の約2000世帯への家賃補助である。
 避難者は国の原発政策が招いた事故の被害者であることを忘れてはならない。一方的に支援の打ち切りを通告するのではなく、もっと被災者の思いを聞き、時間をかけて話し合うべきではないか。
 避難者を受け入れてきた自治体の中には、住宅支援の必要を理解し、独自予算を組んで支援継続を表明したところもある。
しかし、こうした自治体は一部であり、その努力には限りがある。
 未曽有の原発事故である。国は事故翌年に議員立法で成立した「原発被災者支援法」を骨抜きにしてきたが、それは誤りだ。住まいなど被災者の生活安定に責任を持って関与するのが筋である。

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