[2016_05_13_05]平成 28 年(2016 年)熊本地震* の評価(地震調査研究推進本部_地震調査委員会2016年5月13日)
 
参照元
平成 28 年(2016 年)熊本地震* の評価

 平成28年5月13日
 地震調査研究推進本部
 地震調査委員会

 平成 28 年(2016 年)熊本地震* の評価

 [地震活動の概要]

○ 4 月 14 日 21 時 26 分に熊本県熊本地方の深さ約 10km でマグニチュード(M) 6.5 の地震が発生した。また、4 月 16 日 01 時 25 分に同地方の深さ約 10km で M 7.3 の地震が発生した。これらの地震により熊本県で最大震度7を観測し、被害を生じた。

○ 一連の地震活動は熊本県熊本地方から大分県中部にわたる。熊本県熊本地方では、北東−南西方向に延びる長さ約 50km の領域で地震活動が活発である。また、熊本県阿蘇地方では 4 月 16 日の M5.8 の地震により熊本県で最大震度6強を観測したほか、大分県中部では 4 月 16 日の M7.3 の地震発生直後に別の地震が発生し、最大震度6弱を観測するなど、M7.3 の地震発生直後から地震活動が見られている。

 [発震機構]

○ 4 月 14 日の M6.5 の地震の発震機構は北北西−南南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内の浅い地震である。この地震の余震分布と発震機構から推定される震源断層は北北東−南南西方向に延びる右横ずれ断層であった。

○ 4 月 16 日の M7.3 の地震の発震機構は南北方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内の浅い地震である。この地震の余震分布と発震機構から推定される震源断層は、北東−南西方向に延びる右横ずれ断層で正断層成分を含むものであった。

 [強震動]

○ 4 月 14 日の M6.5 の地震に伴い、熊本県内の KiK-net 益城観測点で 1580gal(三成分合成)、また、4 月 16 日の M7.3 の地震に伴い、熊本県大津町の自治体震度観測点で 1791gal(三成分合成)など、大きな加速度を観測した

 [地殻変動]

○ GNSS観測の結果によると、4 月 14 日の M6.5 の地震及び 4 月 15 日の M6.4 の地震の発生に伴って、熊本県内の城南観測点が北北東方向に約 20cm 移動するなどの地殻変動が、また、4 月 16 日の M7.3 の地震の発生に伴って、熊本県内の長陽観測点が南西方向に約98cm 移動するなどの地殻変動が観測されている。陸域観測技術衛星2号「だいち2号」が観測した合成開口レーダー画像の解析結果によると、熊本県熊本地方から阿蘇地方にかけて地殻変動の面的な広がりがみられ、布田川断層帯の布田川区間沿い及び日奈久断層帯の高野−白旗区間沿いに大きな変動がみられる。これらの地殻変動から、すべりを生じた震源断層の長さは約 35km であると推定される。

 [活断層との関係]

○ 4 月 14 日の M6.5 の地震及び 4 月 15 日の M6.4 の地震の震源域付近には日奈久断層帯が存在している。これらの地震は、その高野−白旗区間の活動によると考えられる。地震調査委員会は日奈久断層帯(高野−白旗区間)について、活動時に M6.8 程度の地震が発生する可能性があり、30 年以内の地震発生確率は不明と評価していた。なお、日奈久断層帯(高野−白旗区間)を含む九州南部の区域では、M6.8 以上の地震の発生確率は 7-18%と評価していた。

○ 4 月 16 日の M7.3 の地震の震源域付近には布田川断層帯が存在している。この地震は、主に布田川断層帯の布田川区間の活動によると考えられる。地震調査委員会は布田川断層帯(布田川区間)について、活動時に M7.0 程度の地震が発生する可能性があり、30年以内の地震発生確率はほぼ 0%〜0.9%(やや高い)と評価していた。なお、布田川断層帯を含む九州中部の区域では、M6.8 以上の地震の発生確率は 18-27%と評価していた。

○ 現地調査の結果によると、布田川断層帯の布田川区間沿いなどで長さ約 28km、及び、日奈久断層帯の高野−白旗区間沿いで長さ約 6km にわたって地表地震断層が見つかっており、益城町堂園付近では最大約 2.2m の右横ずれ変位が生じた。一部の区間では、北側低下の正断層成分を伴う地表地震断層も見つかっている。

 [地震活動の見通し]

○ 一連の地震活動は、全体として減衰傾向が見られるが、熊本県熊本地方及び阿蘇地方の活動は、減衰しつつも依然として活発である。大分県中部の活動は減衰している。

○ 平成 16 年(2004 年)新潟県中越地震(M6.8)や 2011 年の福島県浜通りの地震(M7.0)では、本震から1〜2ヶ月後にも M5程度の余震が発生した。こうしたことから、今後も最低1ヶ月程度は、熊本県熊本地方及び阿蘇地方では M5〜6(最大震度6弱程度)、大分県中部では、M5程度(最大震度5強程度)の余震が発生するおそれがあり、引き続き十分注意が必要である。

○ 九州地方では、1975 年の熊本県阿蘇地方(M6.1)から大分県西部(M6.4)の地震活動や、1997 年の鹿児島県薩摩地方の地震活動(M6.6、M6.4)のように、当初の活動域に近接する地域で2〜3ヶ月の間をおいて、同程度の地震が発生したことがある。こうしたことから、熊本県から大分県にかけて、今後も最低2ヶ月程度は、震度6弱以上の揺れにみまわれることも否定できないことから注意が必要である。
*:「平成 28 年(2016 年)熊本地震」(気象庁による命名)は、4月 14 日 21 時 26 分以降に発生した熊本県を中心とする一連の地震活動を指す。

(中略)

(3)震度と加速度
 最大規模の地震である4月16日01時25分の地震により震央付近の熊本県益城町、西原村で震度7の揺れを、熊本県南阿蘇村、菊池市、宇土市、大津町、嘉島町、宇城市、合志市、熊本市で震度6強の揺れを観測した。また、14日21時26分の地震により熊本県益城町で震度7の揺れを観測した。これらの地震を含めて5月6日までに、震度6弱以上を観測した地震は7回発生した。

 ア.最大規模の地震の震度と加速度
 最大規模の地震の震度分布図を図3−1に、計測震度及び最大加速度を表3−1に示す。

 図3−1 4月 16 日 01 時 25 分 熊本県熊本地方の地震(M7.3、深さ 12km、最大震度7)の震度分布
   (中略)

 表3−1 4月 16 日 01 時 25 分(M7.3)の計測震度および最大加速度(震度6弱以上)

都道府県 市区町村 観測点名 震度 計測震度 合成最大加速度(gal) 南北成分 東西成分 上下成分 震央距離(km)
熊本県 益城町 益城町宮園* 7 6.7 899.1 775.5 825.4 668.5 6.4
熊本県 西原村 西原村小森* 7 6.6 904 742.1 770 531.3 15.8
熊本県 菊池市 菊池市旭志* 6強 6.4 977.4 799.2 857.4 535.8 22.7
熊本県 南阿蘇村 南阿蘇村河陽* 6強 6.2 1316.3 1111.8 954.6 654.4 25.1
熊本県 宇土市 宇土市浦田町* 6強 6.2 802 572 792.4 466.2 12.3
熊本県 嘉島町 嘉島町上島* 6強 6.2 622.3 564.8 597.1 474.1 2
熊本県 合志市 合志市竹迫* 6強 6.2 705.3 398.8 690.8 306.6 14.5
熊本県 大津町 大津町大津* 6強 6.1 1791.3 1379.6 1740.1 594.7 16.8
熊本県 宇城市 宇城市豊野町* 6強 6.1 751.7 573.4 575.1 724.7 13.2
熊本県 宇城市 宇城市松橋町 6強 6 564.1 492.8 342.6 313.9 14.2
熊本県 宇城市 宇城市小川町* 6強 6 474.9 389.8 369.4 233.4 19.1
熊本県 熊本市中央区 熊本中央区大江* 6強 6 656.9 626.8 478.2 403.4 6.3
熊本県 熊本市東区 熊本東区佐土原* 6強 6 843.5 827.5 616.5 534.2 4.2
熊本県 熊本市西区 熊本西区春日 6強 6 677.5 606 551.6 405.3 7.5




(中略)






(後略)

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