[2016_12_22_02]福島沖地震が警告 燃料プールの怖さM8余震100年続く予測 使用済み燃料増やす再稼働 渡辺寿子(原発いらない!ちば)(たんぽぽ舎メルマガ2016年12月22日)
 
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福島沖地震が警告 燃料プールの怖さ M8余震100年続く予測 使用済み燃料増やす再稼働 渡辺寿子(原発いらない!ちば)


1.燃料プールの冷却一時停止

 11月22日未明福島沖を震源とするM7.4の地震が発生しました。福島県内で最大震度5弱を記録。地震は勿論原発のすべての設備にダメージを与えるものですが、今回の地震では使用済み燃料プールの危険性が改めて突き付けられました。
 この地震で東電福島第二原発3号機の使用済み燃料プール(以下燃料プールまたはプール)の冷却が1時間半に渡って停止したのです。東電はプールに併設されているタンクの水位計が、揺れに伴う水位変化を「水位低下」と判断したためと説明。午前6時10分水位低下の警報が出て、冷却用の循環ポンプが自動停止。東電は漏れなど異常がないことを確認し、7時47分にポンプを再起動させ冷却を開始したと発表しました。1時間半の冷却停止で燃料プールの水温は28.7度Cから29.5度Cへと1度C弱上昇しましたが、運転管理制限限度の65度Cまでは7日間の余裕があり、問題なかったとしました。

2.冷却停止の原因は不明

 燃料プールの冷却装置が1時間半とはいえ停止したことは重大であるのに規制委はこの事故を小さく見せようとしました。停止前水温28.7度Cを実際は29.3度Cだったと根拠もなく訂正し、水温上昇は0.2度Cとしました。
 東電はポンプ停止の原因について「タンクの水が地震で揺れたことを水位変化と検知したため」という当初の説明から「プール脇にあるタンク内の水位低下」に変更しました。
 2度目の説明によると使用済みプールの水は壁のダクトに流入し、約485リットル漏れていたということです。当初の説明通り、揺れでポンプが止まっていたなら、今後の地震対策上改善が必要であるわけですが、原子力規制委はポンプ停止の原因を明らかにしていません。
 冷却停止について東電から原子力規制委への報告が1時間も遅れたことについても田中規制委員長は何ら問題にせず、大したことではないと答えました。
 3号機のプールには2544体の使用済み燃料が貯蔵されていました。冷却停止が長期に及んだら大変なことになります。原子力規制委は燃料プールの原子炉にも劣らない危険性について国民に知られたくないのでしょう。
 この際、「使用済み燃料プール」の危険性について改めて認識を深める必要があると思い、たんぽぽ舎のメールマガジンに投稿した木原壮林さんの文を参照、引用させていただき以下記述します。

3.使用済み燃料プールとは

 核燃料は永久に使い続けることはできず、一定期間燃焼させると新燃料と交換しなくてはなりません。そのため稼働すると使用済み燃料が溜まっていきます。
 使用済み燃料は交換直後は高放射線、高発熱量で移動させることができませんから、原発内にある水を張った貯蔵プール(使用済み核燃料プール)で3〜5年保管・冷却されます。
 こうして空冷で輸送できる状態になった使用済み燃料は、現在の国の方針では再処理工場に輸送され全量再処理されることになっています。
 しかし2兆2千億円注ぎ込んでも再処理工場稼働の目途は立たず、再処理工場が実質的に搬入先になっていたので、行き場を失った使用済み燃料は各原発サイトのプールに留め置かれています。
 燃料プールの設置場所は沸騰水型原発(BWR)と加圧水型原発(PWR)では異なります。どちらにしても使用済み燃料は極めて高い放射線を出していて、水で遮蔽する必要があり、燃料交換は常に水中で行います。水中から燃料を出したら作業員が即死します。

○沸騰水型原発の燃料プール
 燃料プールは原子炉上部にあり、原子炉と水路で繋がっていて、普段は仕切りで区切られています。燃料交換時は格納・圧力容器の上蓋を開け、水を満たし、プールとの仕切りをはずします。
○加圧水型原発の燃料プール
 燃料プールは原子炉建屋の隣にあり、格納容器内のピットとは小さなトンネルで繋がっていて、トンネルを使って燃料の出し入れをします。
 加圧水型原発では燃料を立てたまま移動できる大穴を格納容器に開けられないので、燃料交換作業は複雑になり、長くかかり、トラブルも多くなります。
 事故時に原子炉からプールへの燃料の迅速な移送は困難です。

4.原子炉本体に比べ脆弱な燃料プール

 緊急事態対策が極端に不十分なプールは、原子炉本体(圧力容器)より格段に脆弱です。プールは冷却水喪失→メルトダウンの危険性が高いことは福島事故の際、4号機のプールから冷却水が漏れ、メルトダウンの危機になったことで明らかです。
 原子炉本体での炉心溶融などの破滅的な事態の発生防止は中心的な課題になっていますが、使用済み燃料プールに起因する重大事態の可能性はあまり関心が払われていません。
 原子炉は炉心溶融を防ぐために、冷却システム、電源供給システム、ポンプなどにバックアップシステムを備えていますが、燃料プールにはそれらのシステムがありません。
 原子炉圧力容器は高温、高圧にも耐える鋼鉄の閉じ込め容器ですが、プールは蓋がなく、上部が開放されていて、閉じ込め効果がありません。

5.燃料プールを大地震が襲ったら?

 11.22福島沖地震はM7.4で阪神淡路大震災よりも大きいものでしたが、3.11東日本大震災の「余震」であり、気象庁は今後もM8、M7クラスの余震が心配されるといっています。地震学者の島村英紀さんは、M9クラスの大地震の後は100年位はM8クラスの余震が続く可能性があるといいます。
 燃料プールは、システムとして脆弱であり、また施設自体の強度もなく、大きな地震で倒壊してしまう可能性があります。プールが倒壊すれば破滅的事態が予想されます。冷却水が失われるとプール周辺の何100メートルもの範囲が人が近寄れないほどの高いガンマ線に曝され、何もなすすべがなく、プール内の核燃料はメルトダウンする危機に直面します。プールの使用済み燃料が異常に加熱されれば、燃料被覆管のジルコニウムと水が反応して生じる水素の爆発、ジルコニウムの酸化による火災発生の恐れもあります。
 燃料の間隔が変形や溶融によって狭まれば臨界に達し、核分裂連鎖反応が起きかねません。いずれにしても厖大な放射性物質が放出され、福島第一原発事故かそれ以上の大惨事になる恐れがあります。

6.再稼働で使用済み燃料増え続ける

 今,国内の原発は,川内2号、伊方3合を除いて停止しています。3年以上停止している原発の使用済み燃料の放射線量と発熱量は燃料をキャスクに入れて空冷で貯蔵、移送できるまでに減衰しています。使用済み燃料発生初期に比べれば、危険性が格段に低くなっているのです。
 しかし,原発再稼働を促進すれば、放射線量、発熱量の高い使用済み燃料を次々と生み出し続け、それがプールに搬入され、過酷事故の確率は格段に高くなります。
 現在,日本の使用済み燃料は17000トン以上貯まり、原発の燃料プールと六ヶ所再処理工場の保管スペースを合計した貯蔵容量の73%が埋まっていて、再稼働が進めば数年後には満杯となります。
 再処理工場完成の目途が立たず、再処理の操業ができないので再処理工場の一時保管スペース(容量3000トン)の貯蔵量は2954トンで殆ど満杯に達しています。
 福井県にある原発13基が持つ燃料貯蔵施設の容量は5290トンで、その7割近くが埋まっています。高浜、大飯、美浜の原発が再稼働されれば7年程度で貯蔵限度を超えるのです。
 高浜3,4号機運転差し止め、大津地裁仮処分決定に対する抗告審の決定が来年2月にも出されようとしています。
 使用済み燃料の各原発サイトでの保管が限度に近づきつつあります。むつ市に中間貯蔵施設を作っていますが、たとえこれが操業開始をしても原発が稼働し続ける限り、使用済み燃料処分問題は永遠に解決しません。
 使用済み燃料問題、つまり放射性廃棄物処分問題は原発のアキレス腱です。この観点からも再稼働に反対していかなくてはなりません。

7.地震で原発排気筒倒壊リスク

 福島沖地震で燃料プールの冷却が一時止まり、再び大きな原発震災が起きる可能性をつきつけられました。廃炉作業中の福島第一を再び大きな地震が襲ったら、3.11以上の惨事になりかねません。燃料プールを含め、すでにボロボロのあらゆる建屋、設備が崩壊する危険があります。
 1号機と2号機の間にある高さ120メートルの排気筒が倒壊するリスクも大問題です。「」女性自身12月5日号」がこの問題を取り上げました。
 福島第一原発事故の際、この排気筒から高濃度の放射性物質を含む蒸気を放出(ベント)したため現在も内部は高濃度(100兆ベクレル)に汚染されたままです。
 この排気筒を支えている骨組みの溶接部分5カ所が破断(地上66m)、さらに3カ所が変形していることが2013年東電の調査により判明。これ以来大地震が来れば倒壊するリスクが懸念されてきました。排気筒は、日々潮風にさらされるため腐食が進んでいます。配管付近の地表面は2011年8月の調査で最大毎時25シーベルトを記録し、人間が近付けません。
 排気筒が倒れたら内部の高濃度放射性物質が放出され、所内の作業員は内部被曝し、粉じんが風に乗って遠方まで飛ばされたら、人や土地、農作物が再び広範囲に汚染されてしまいます。
 排気筒が倒れる時、1号機や2号機の原子炉建屋を直撃して破壊してしまう可能性があります。プールが破壊されれば、先述したように冷却水喪失から過酷事故を招来します。
 東京電力は排気筒について、「解析モデルで耐震性を計算した結果、東日本大震災レベルの地震動に耐えられる安全性があることを確認しています。(破断がある)現状でも同程度の地震動に耐えられることを確認しています」と何とも矛盾したデタラメなことをいっています。
 東京電力は「比較的線量の低い上層部分のみ、18年度から解体していく予定」とのことですが、それまでに大地震・大津波が起きないという保障はありません。
 原発を稼働するということが事故後もあらゆる惨事を招き寄せるということをあらためて思い知ります。
 今、政府・経産省はこんな事故を起こした東京電力に何の責任も取らせていないばかりか、国民全体にツケをまわしてさらなる東電救済、原発保護策の悪だくみを画策しています。東京電力を破綻させ、責任を取らせることが原発廃止への道です。(了)

 「原発いらない!ちばネットワークニュース」
  2016年12月号より許可を得て転載

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