[2016_12_01_03]チェルノブイリに鋼鉄の覆い 「問題解決 まだ先」 事故処理した元作業員ら(東奥日報2016年12月1日)
 
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 30年前に爆発事故を起こしたウクライナのチェルノブイリ原発4号機は、鋼鉄製の巨大シェルター覆われ、事故対応は一つの節目を迎えた。しかし、事故当時、命を危険にさらして、処理に当たった元原発作業員らは「放射能はずっと残る。4号機が見えなくなっても、問題は解決していない」と強調する。  事故後、4号機の周りに急造されたコンクリート製の石棺が老朽化。放射性物質の漏出を防ぐ新しいシェルターは4号機をすっぽり.覆うように移動を終え、29日に記念式典が行われた。
 タービン技師だったアレクセイ・リシンさん(74)は30年前の爆発当日、黒煙をくぐり抜け、4号機に駆けつけた。「(シェルター設置は)もちろん一歩前進だが、中に残った核燃料除去をどうするか、今後が重要だ」と指摘する。
 同じくタービン技師だったイワン・クジミンさん(58)は処理作業後、体を壊し、30代半ばで働けなくなった。作業員らは「リクビダートル」(清算人)と英雄視され、手当や優遇措置を受けてきたが、財政難で年々削減。12月には抗議デモが予定されているといい、クジミンさんは「4号機を覆って、われわれのことも忘れようとしているのか」と皮肉まじりに話す。
 原子炉の保守担当だったニコライ・シコリンさん(74)は事故後、何も知らないまま、生後八カ月の孫娘と散歩していた。その孫娘は入退院を繰り返し、三十歳を過ぎた現在も仕事に就けない。「新しいシェルターも、もって百年。原発は結果的にコストに合わない」
 国際原子力機関(IAEA)によれば、ウクライナでは原発が稼働を続け、総発電量の五割以上を占める。クジミンさんは「残念だが、われわれの国は資源に乏しい。さもないとロウソクの明かりだけだ」と自嘲する。東京電力福島第一原発事故を経験した日本人を「同じ苦しみを知る仲間」と呼んだ上で希望を託す。「技術の進んだ日本なら新エネルギーを開発し、脱原発を実現できるはずだ」(ウクライナの首都キエフで、栗田晃、写真も)
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