[2016_11_01_04]島崎氏による問題提起の顛末_「結論ありき」で情報操作を行う原子力規制庁とそれを見抜けない原子力規制委員会_大阪府立大学名誉教授_長沢啓行(生産管理システム)(伊方原発を止める会2016年11月1日)
 
参照元
島崎氏による問題提起の顛末_「結論ありき」で情報操作を行う原子力規制庁とそれを見抜けない原子力規制委員会_大阪府立大学名誉教授_長沢啓行(生産管理システム)

1 国民の面前で演じられた原子力規制委員会によるドタバタ劇
 前原子力規制委員長代理の島崎邦彦氏が退職後,「入倉式による地震動の過小評価」を学会で4度指摘したのを受け,原子力規制委員会は2016年6月16日,遂にその重い腰を上げて島崎氏と面会し,事態収拾に動いた.大飯3・4号の基準地震動を見直すかどうかが焦点になったが,「見直す必要なし」の決定−白紙撤回−再決定のドタバタ劇を演じた末,国民にキチンと説明することなく,わずか40日でその幕を閉じた.
 その結果,明らかになったのは,入倉式によれば地震動が過小評価されるという事実に加えて,原子力規制委員会には地震動評価の専門知識を持った委員が皆無であること,原子力規制庁による地震動過小計算を見抜く能力に欠けていることであった.原子力規制庁が「結論ありき」で情報操作を行い,原子力規制委員会がそれを見抜けず,追認するだけになっているという恐るべき実態,「世界最高水準の規制基準による適合性審査」の余りにもひどすぎる実態が赤裸々に暴露されてしまったのである.しかも,それは,誰かの内部告発によってではなく,原子力規制委員会の本会議で白昼堂々と演じられた議論と決定そのものによってであった.まず,そのドタバタ劇の事実を整理しておこう.
2014年9月18日 島崎邦彦氏が原子力規制委員を任期切れで退職
2015年5月28日 島崎氏が日本地球惑星科学連合大会で入倉式による地震規模の過小評価を批判(1回目)
2015年10月28日 島崎氏が日本地震学会で同様の批判(2回目)
2015年11月28日 島崎氏が日本活断層学会で同様の批判(3回目)
2016年4月14日 2016年熊本地震の前震M6.5が発生,4月16日に本震7.3が発生
2016年5月25日 島崎氏が日本地球惑星科学連合大会で再び同様の批判(4回目)
2016年6月10日 地震調査研究推進本部(以下「推本」とよぶ)が断層モデルのレシピを改訂し(以下「新レシピ」とよぶ),「長大な断層」を定義し,電力会社が行ってきた「長大な断層」でない断層での応力降下量の設定法に制約を付す
2016年6月16日 田中俊一原子力規制委員長らが島崎邦彦氏と1回目の会見
2016年6月20日 原子力規制委員会が本会議で「大飯原発について地震動評価を行う」ことを決定
2016年6月23日 脱原発弁護団全国連絡会が新レシピに関する要請書を原子力規制委員会へ提出
2016年7月13日 原子力規制委員会が本会議で「武村式による地震動計算結果は基準地震動の範囲内」であり,「大飯原発について基準地震動見直しの必要はなく,これで結論が出た」と決定
2016年7月14日 島崎氏が田中原子力規制委員長へ抗議の手紙を提出し,記者会見で批判
2016年7月19日 田中俊一原子力規制委員長らが島崎邦彦氏と2回目の会見
2016年7月20日 原子力規制委員会が本会議で,規制委員自身の無知を棚上げにして,原子力規制庁による説明不足をやり玉に挙げ,7月13日の「結論」を白紙へ戻し,入倉式や武村式以外の推本のレシピ(イ)(本論でいう「修正レシピ」をさす)や中央防災会議の方法も検討するよう原子力規制庁へ指示
2016年7月27日 原子力規制委員会の本会議で,新たな試計算結果が示されることは一切なく,原子力規制庁による「改ざんレシピ」が数式とポンチ絵で説明されたが,委員からはその改ざんレシピそのものの妥当性や推本のレシピ(イ)の適用可能性に関する意見は出ず,7月13日の「結論」が再びそのまま了承された.
(後略)
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