[2016_10_18_05]科学する人 41 地震学者 島崎邦彦さん(3) 津波警告 批判受け沈黙 (東奥日報2016年10月18日)
 島崎邦彦さんの代表的研究の一つが、1980年に発表した「地震発生時予測モデル」だ。地形学者の中田高・広島大名誉教授との共同研究。地震の発生時期と規模に関するもので「大きな地震が起きると、次の地震までの準備期間≠ェ長くなる」というアイデアが基礎になった。
 年月日を特定するような予知にはつながらないが、活断層などで起きる地震の大まかな予測に道を開くと注目された。
 95年の阪神大震災を契機に、島崎さんは国の地震調査研究推進本部で、活断層や、プレート(岩板)が接する海溝で起きる地震の長期的な予測を担当。2002年に、東北地方沖の太平洋を南北に走る日本海溝のどこでも大津波が起きうるとの報告書をまとめた。
 直後から異変が起きた。公表する報告書の内容に官庁から横やりが入った。防災対策を担う国の中央防災会議では、報告書を黙殺された。原子力安全・保安院と原子力安全委員会で原発審査に加わっていた2人の高名な地震学者に批判された。
 平安時代、東北地方を巨大津波が襲った貞観地震の研究が進み、島崎さんは日本海溝で起きる「ハルマゲドン(この世の終わり)地震」を考え始めていた。だが報告書を巡る出来事の後、次第に別の研究テーマに移っていく。「声を大にすべき時だったのに、黙ってしまった」
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