[2016_10_06_01]東電支援の国民負担拡大も 廃炉・事故処理費の上限見えず(東京新聞2016年10月6日)
 
参照元
東電支援の国民負担拡大も 廃炉・事故処理費の上限見えず

 原発の事故処理・廃炉に必要な費用の国民負担につながる議論が五日、本格的に始まった。「東京電力改革・1F(福島第一原発)問題委員会(東電委員会)」が、東京電力福島第一原発の処理費用について国民負担を求める方針を示したほか、「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」の作業部会も通常の原発の廃炉費用について、すべての電力利用者に負担を求める方向で検討を開始した。両会合は連携しながら、年内に方向性を打ち出す。
 東京電力福島第一原発の事故処理にかかる費用の資金繰りを話し合うため、経済産業省は五日、財界人らでつくる「東電委員会」の初会合を開き、東電の経営改革で費用を工面しつつ、足りない分は国民に負担を求める方針を示した。しかし、必要な処理費用は確定が難しく、最終的に国民負担がどこまで増えるかは見えない状況だ。
 委員会は、東電や提携先の内部情報を含むとして非公開。会合後に委員長の伊藤邦雄一橋大大学院特任教授らが内容を説明した。
 委員からは、東電が他社との連携や事業売却を含めた事業の再編など経営改革を徹底し、できるだけ自社で費用を工面するよう求める意見が出た。伊藤委員長は、それでも資金が足りない場合は税金の投入など「負担のあり方を議論する」と説明。ほかの原発の廃炉費用と同じように電気料金に上乗せする形で国民に負担を求める可能性もある。
 しかし、福島第一原発の処理に必要な費用は上限が見えない。政府は二〇一三年に被災者への賠償と除染、廃炉に必要な費用を計十一兆円と見込んで支援を拡大したが、すでにこの額も大幅に超える見込み。廃炉費用だけを見ても、溶け落ちた燃料を取り出すなど世界に前例のない作業を控えるなど、経産省電力・ガス事業部の畠山陽二郎政策課長も「合理的な見積もりはできない」と話す。
 このままでは国民に負担を求める額も議論できないため、経産省は次回以降の委員会で一定の見積額を示すことにしているが、設定した見積額を超えて国民負担を増やした前例を繰り返す恐れがある。
 東京電力ホールディングスの広瀬直己(なおみ)社長は会合後、記者団に「東電が費用をまかなっていけるよう、制度的(な支援の)措置をつくってもらい、東電が債務超過になって倒れてしまう危険を取り除いてほしい」と話した。

◇東電委員会の委員

伊藤邦雄 一橋大大学院特任教授
遠藤典子 慶大大学院特任教授
小野寺正 KDDI会長
川村隆  日立製作所名誉会長
小林喜光 経済同友会代表幹事
白石興二郎 読売新聞グループ本社会長
冨山和彦 経営共創基盤最高経営責任者(CEO)
原田明夫 原子力損害賠償・廃炉等支援機構運営委員長
船橋洋一 日本再建イニシアティブ理事長
三村明夫 日本商工会議所会頭
広瀬直己 東京電力ホールディングス社長(オブザーバー)

KEY_WORD:FUKU1_:_