[2016_10_04_02]再処理機構スタート 理事長「サイクル推進を」 青森で開所式 安全、地域振興に留意を(東奥日報2016年10月4日)
 
 原発から出る使用済み核燃料の再処理事業を担う認可法人「使用済燃料再処理機構」が3日、設立した。機構職員らが青森市堤町2丁目の事務所で開所式を行い、業務をスタートした。政府は、再処理の実施主体を電力各社が出資する日本原燃から同機構に移行することで、事業に国の関与を強め、将来にわたり再処理を継続させる狙い。再処理やプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料加工などの実務は、サイクル施設を運営する原燃に事業委託する。 (阿部泰起)

 政府は、電力小売り全面自由化に伴い電力各社の経営状況が悪化しても、各社の共同事業である再処理を滞りなく実施するため、1日に再処理等拠出金法を施行。各社に拠出金として再処理費用の支払いを義務付けたほか、経済産業省の認可法人となる同機構を設立した。機構の人事や事業計画への認可を通じて、国が運営に関与する。
 理事長に就いた井上茂・元東北電力副社長(66)は開所式で「機構は安全確保を大前提に再処理計画策定などの業務を着実に進める。サイクルの推進に寄与する大きな一歩にしたい」と抱負を述べた。来賓として出席した井原巧経済産業大臣政務官は「サイクルを推進する政府方針はいささかも変わりない。機構はその中核となる組織だ」と激励した。
 井上理事長はこの後、県庁を訪れて三村申吾知事と面談。三村知事は「サイクルの安定的かつ継続的な運営に不退転の決意で取り組んでほしい」と要請した。
 面談後の取材に井上理事長は、六ヶ所再処理工場の完工が遅れていることを取り上げ「サイクルは厳しい道をたどっているが、立地自治体の理解、信頼を得て、原燃と一緒に実現させたい」と決意を語った。
 機構事務所は総務、事業管理、事業計画の3部体制で、再処理事業や実施計画の策定、拠出金の徴収を行う。職員29人は電力各社からの出向。このほか、理事長と理事2人が常駐する。原燃サイクル施設が立地する六ヶ所村には連絡事務所を設置する。

 機構の意思決定磯明達営委メンバー13人

 認可法人「使用済燃料再処理機構」の井上茂理事長は3日、理事4人と、外部有識者でつくる運営委員8人を任命した。理事長、理事、運営委員で組織する、機構の意思決定機関「運営委員会」のメンバーが決まった。
 業務執行に責任を負う役員は井上理事長のほか、村永慶司・元東京電力常務執行役ら理事4人。業務を監督する役割の運営委員は近藤駿介・原子力発電環境整備機構理事長(前原子力委員長)ら8人。任期はいずれも2年で再任できる。
 このほかの委員は次の通り。
 ▽理事 関口恭三氏(公認会計士)出光一哉氏(九州大学教授=非常勤)豊松秀己氏(関西電力代表取締役副社長執行役員=非常勤) ▽運営委員(50着順)秋池玲子氏(ボストンコンサルティンググループ シニア・パートナー&マネージング・ディレクター)塩越隆雄氏(東奥日報社代表取締役社長)徳植桂治氏(太平洋セメント相談役)永田高士氏(公認会計士)中根猛氏(外務省参与)山口彰氏(東京大学大学院工学系研究科教授)四元弘子氏(森・濱田松本法律事務所弁護士)    (阿部泰起)


 解説

 本県が核燃料サイクル施設の受け入れを決めたのは31年前。県民世論を分かつ激しい論争の末、決断した。以来、国策であるサイクル事業に協力してきたのは、実施主体・日本原燃との立地基本協定により安全と地域振興を担保したためだ。
 本県に根差してきた事業だが、大きな転換期を迎えた。新たな実施主体として認可法人「使用済燃料再処理機構」が発足し、国が運営に関与する。今後は事業に一層の効率性、経済性が求められるだろう。
 ただ、地元が求める安全と地域振興は、効率性や経済的観点では計れないものだ。機構設立に伴い、県内には地域振興策への影響を懸念する声が上がる。ある企業関係者は原燃が地元企業を支援するために一部工事で随意契約を行ってきたことを挙げ「今後の随意契約に影響が出ないか心配だ」と漏らした。機構と地元に何らかの協定が必要ではないか。
 一方、サイクル中核施設の六ヶ所再処理工場は着工から23年がたつ。22回もの完工延期を繰り返し、いまだ稼働していない。再処理工場と二枚看板であったはずの高速増殖炉もんじゅ(福井県)が廃炉見込みとなり、サイクルを取り巻く環境は厳しさを増す。
 「再処理事業の着実な実施」という大義を背負い発足した再処理機構。多難な船出となるが、事業進展へ、その手腕が問われる。
     (阿部泰超)
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