[2016_08_31_08]泉田新潟県知事「『説明しろ』と言った以上、県からの回答を握りつぶさないでいただきたい」と注文!新潟日報は「事実を書いている。圧力には屈せない」と反論も説明責任は果たさず!白熱した記者会見詳報! 2016.8.31 (記事:原佑介、文責:岩上安身)(IWJ2016年8月31日)
 
参照元
泉田新潟県知事「『説明しろ』と言った以上、県からの回答を握りつぶさないでいただきたい」と注文!新潟日報は「事実を書いている。圧力には屈せない」と反論も説明責任は果たさず!白熱した記者会見詳報! 2016.8.31 (記事:原佑介、文責:岩上安身)

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 新潟県の泉田裕彦知事が8月30日、新潟日報の報道への不満を理由に知事選への出馬取りやめを発表した。
 泉田知事は知事選への出馬を取りやめた理由として、県が出資する第3セクターの子会社の船購入トラブルをめぐり、県の関与を追及する新潟日報の報道を挙げ、「憶測記事や事実に反する報道」と指摘。「このような環境の中では、十分に訴えを県民にお届けすることは難しい」と説明した。

○泉田裕彦後援会HP この秋の新潟県知事選挙からの撤退について

 撤退発表を受け、新潟日報は翌31日付の朝刊紙面で、「泉田知事が知事選から撤退する理由として本社の報道を挙げたことは、報道機関に対する圧力にも等しく、許しがたい行為と言うほかはない」と批判。「一連の報道は綿密な取材と事実に基づくもので、断固として抗議する」と反論した。

○新潟日報 2016/08/31 正当な記事へ圧力 本社執行役員編集局長 服部誠司

 31日には新潟県庁で泉田知事の定例会見が開かれた。会見では泉田知事の選挙撤退理由に関して質問が集中した。

(写真有)
▲会見で知事選撤退の理由を説明する泉田裕彦新潟県知事(2016年8月31日)

 新潟日報による「圧力に等しい」という指摘について、泉田知事は、「県からは都合10回ぐらい事実に反する記事についての訂正を求めた。これを『圧力だ』と言われても、少し理解ができない」と主張。「もし圧力だと言うのであれば、『県からはこういう申し入れがあった、これに関して我が社はこう思う』と紙面上で議論すればいいのではないか」と訴えた。
 さらに、「特に、読者の投稿欄で『説明責任を果たせ』という投稿が載ったので、県は2日後には回答をお送りした。しかし、待てど暮らせど載らない。(どういうことかと)うかがったら『載せない』ということだった」と振り返る。
 「どうして説明責任を果たせという投稿を紙面に載せておいて、県は回答を出しているのに載せないのか、しっかりと議論すべきではないかと思う。民主主義は、情報を主権者・国民、県民、住民に伝えたうえで、どうするかを判断するものだ」
 しかし、新潟日報の記者たちも譲らない。
 「新潟日報としては事実を書いている。適正な報道をしているのに適正な報道を求めると言われても、『はい、そうですか』で終わりだし、事実を書いている以上、それを直せという圧力には私たちは屈せない」
 新潟日報の記者はさらに、「まるで私たちが偏向している報道をするかのようにおっしゃっているが、これに対しては抗議する」とも憤った。
 泉田知事と新潟日報の記者は、ときに語気を荒げながら互いの主張をぶつけあうものだったが、新潟日報は、なぜ県からの回答を紙面に載せなかったのか、答えていない。言論機関として、これは不誠実な対応であろう。新潟日報には、その点については県民、国民に対して説明責任がある。

 泉田知事の出馬撤退問題は、新潟県だけの問題ではない。

記事目次
「訂正を求めたことを『圧力だ』と言われても理解ができない」
産経新聞が泉田知事の選挙撤退理由について「非常に信じがたいと言うか、あり得ない、非常に恥ずかしい、情けない」と言及
泉田知事「『説明しろ』という投稿を載せて編集した以上、県からの回答を握りつぶさないでいただきたい」
泉田知事の撤退で上がった東電の株価、「世の中そういうふうに見ていたのかと、素直にそのまま受け止めている」
「私が引くことで新潟をどうするか、原発にどう向き合うのかという純粋な議論ができる」
新潟日報が反論!「新潟日報としては事実を書いている。圧力には屈せない」
撤退の撤回はありえる?泉田知事「基本的に政治家が出処進退に言及したらそこで決まり」
福島に免震重要棟を設置させた立役者の泉田知事「原発震災を疑似体験したのが中越沖地震だった」
「原子力規制委員会が決めたことは金科玉条のごとく守るということでは、住民の命、健康を守るのは難しい」

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ハイライト
全編動画
日時 2016年8月31日(水)14:00〜
場所 新潟県庁(新潟県新潟市)

 泉田知事の撤退発表は大きな波紋を呼んでいる。

 日刊ゲンダイは、「地元紙からの攻撃だけでなく、新潟県内では“泉田包囲網”が出来上がっていた」として、新潟県庁関係者のコメントを次のように紹介している。
 「新潟日報は今年に入ってフェリー問題をしつこく批判していました。新潟日報は泉田さんの政治手腕に疑問を持っていたようで、社内には“泉田嫌い”が蔓延していたといいます。新潟日報には東電が広告を出していた。さらに、今月には泉田さんと近い自民党県議が県連会長を辞任している。泉田さんは嫌気が差したようです」
・日刊ゲンダイ 反原発のシンボル 泉田新潟知事が突然「出馬撤回」の背景
 また、思想家の内田樹氏は、「新潟の友人からいろいろ裏話をお聞かせ願いました」と述べ、「東電は新潟日報に最近全面広告を5回も出しているそうです。一回1000万円とか。再稼働の可否は東電にとって兆単位の利益にかかわる経営問題ですからそれくらいの出費はなんてことはないでしょう」とツイートし、多くの反響を呼んでいる。
内田樹さんのツイート

 一方、新潟日報は、泉田知事が県内の自民党や経済界の支援をまとめられず、「『泉田包囲網』は着々と築かれていた」との情勢分析を紹介。泉田知事の「焦り」が撤退の一因であると示唆している。
・新潟日報 2016/09/01 緊急連載 泉田氏不出馬の衝撃・中 頼みの自民、経済界の離反

 以下、8月31日に行われた泉田裕彦新潟県知事の記者会見における、選挙戦撤退に関する質疑部分を掲載する。
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「訂正を求めたことを『圧力だ』と言われても理解ができない」

朝日新聞 「日本は民主主義社会なので暴力や脅しなどが仮にあったのだとすれば許すべきことではない。知事やご家族へ知事選に出ないでほしいというような圧力はなかったか」
泉田知事 「圧力の定義にもよるが、日本海横断航路の問題を使って、知事選への立候補を取り下げるようにするプロジェクトがあり、取材の申し入れを受けたことは事実としてある。それ以外にささやかれたものをこの場でご紹介することは適切ではない」
朝日新聞 「知事の原発への姿勢などを支持する方々もたくさんいる。知事が撤退したのは、意中の候補がいるのではないか。原発に対して知事と同じスタンスで歩もうとする候補者が出てきたら、街頭に一緒に立つ可能性はあるか」
泉田知事 「告示までまだ1か月ある。新潟の未来をどうするべきか、原発、原子力防災とどう向き合うべきか、真剣に議論する選挙であるべき。しかし、日本海横断航路の船舶問題が前に出てくると、県民が今後、新潟県をどうするのかという議論ができなくなってしまう。したがって、無投票というのはやはり避けるべきだと思う。選挙戦でしっかりとこの辺りを議論して、地域全体のコンセンサスになっていくような選挙戦になることを期待している
NHK 「今朝の朝刊で、新潟日報が(「正当な記事へ圧力」だという)見解を出していたが、どう感じたか」
泉田知事 「斜め読みしかできていないが、『圧力ではないか』という点について、県からは都合10回ぐらい事実に反する記事についての訂正を求めた。これを『圧力だ』と言われても、少し理解ができない。もし圧力だと言うのであれば、『県からはこういう申し入れがあった、これに関して我が社はこう思う』と紙面上で議論すればいいのではないか。
 特に、読者の投稿欄で『説明責任を果たせ』という投稿が、編集によって載ったので、県は2日後には回答をお送りした。しかし、待てど暮らせど載らないので、(どういうことかと)うかがったら『載せない』ということだった。
 どうして説明責任を果たせという投稿を紙面に載せておいて、県は回答を出しているのに載せないのか、しっかりと議論すべきではないか思う。民主主義は、情報を主権者・国民、県民、住民に伝えたうえで、どうするかを判断するもの。新潟日報の場合は40万部を超える発行部数があり、毎日(新聞が)県民に届く中で、この主張が載せられない。県からはちゃんと回答を出しているのに載せられないとなると、民主主義の基盤が揺らぐのではないかと懸念している」

 「新潟日報」からは、なぜ県としての回答を紙面に載せないのか、その理由の説明はなかった。新潟日報は、泉田知事の指摘に対して、誠実に答える義務があるだろう。

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産経新聞が泉田知事の選挙撤退理由について「非常に信じがたいと言うか、あり得ない、非常に恥ずかしい、情けない」と言及

産経新聞 「撤退の理由は報道だ、というのは社会的な常識に照らすとちょっと考えにくい。しかも県のトップを10年以上勤めている方が。非常に信じがたいと言うか、あり得ない、非常に恥ずかしい、情けないと思う。撤退の本当の理由は何か」
泉田知事 「本当の理由は、『ちゃんとした声を県民に届けることができない』と認識したということ。(新潟日報社に)直接申し入れをしているが、対応していただけない。説明しろと紙面で書かれたので、回答すると、載せてもらえない。これで県民の皆さんに訴えを届けるのは難しい。本当に悲しい思いをしたことが撤退の理由」
産経新聞 「撤退の理由は他にはないか」
泉田知事 「実はいくつか世論調査、情勢分析を私は見ている。選挙をやれば負けないと思っている。ただし、訴えが届かないかたちでの選挙戦になる。本来は新潟県政どうすべきか、地域の安全をどう守るべきか、原発、安定ヨウ素剤、原子力防災とどう向き合うのかという、未来に向けての議論をすべきだが、今の環境だと船舶問題で県の関与があったかどうかみたいなことがテーマになる。それは極めて本意ではない。本来県民に訴えたいことが訴えられない形でここまで来ている。だからそれは避けるべきだというのが大きな理由」
産経新聞 「今選挙をやれば勝てるとか勝てないとか、それは有権者に対して不遜だと思う。審判をあおぐ立場にある方がそんなに軽々しく勝てるとか勝てないとか言うべきではないのでは」
泉田知事 「ですから審判は受けない、ということ」

 上記の通り、産経新聞の記者は質問の形を借りて泉田知事を侮辱し、挑発するような発言に終始していた。その産経の記者が「不遜」という言葉を使ったのには驚かされた。攻撃的な質問を繰り返す各社の記者たちの中でも、ひときわ浮いていた産経の記者は、自らの「不遜」さについては自覚はないのだろうか?

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泉田知事「『説明しろ』という投稿を載せて編集した以上、県からの回答を握りつぶさないでいただきたい」

読売新聞 「メディアを通して(県民に声を)届けられないのであれば、実際にご自身が選挙で街頭に立って直接選挙で訴えたらいいのではないか」
泉田知事 「毎日40万部発行される新聞と、目の前の聴衆数十人に対する全県を回っての訴えかけがどこまでどう届くのかということについては、やはり差があるかと思う」
産経新聞 「今後、新潟日報社の説明責任のあり方について、どのようにお考えか」
泉田知事 「事実に反する部分というのを県は具体的に指摘している。これについて、どこが新潟日報社と主張が違うのかということを紙面上で議論していただきたい。それから『説明しろ』という投稿を載せて編集した以上、県からの回答を握りつぶさないでいただきたい。その上で議論したらいいと思う。県のホームページは(1日あたり)数千アクセスで、もう一方は40数万部が毎日出ているというのでは、やはり議論にならないのではないかと感じている」
産経新聞 「今後知事として新潟日報社、あるいは多様なメディアを通じてどのような発信、働きかけをしたいと考えているか」
泉田知事 「老兵は去りゆく。今知事としてやることは、県民の皆様の付託に誠実に応えて県政を推進するということ」
毎日新聞 「老兵は去りゆくというが、一方で、春先の県政報告会で、原子力防災に関しては訴えていきたい、誰が言おうと訴えていきたいと、非常に情熱をもって仰っていた。矛盾していないか」
泉田知事 「今回の選挙がこの日本海横断航路の船舶問題ということになると、訴えられない。皆さん方の関心が船舶購入で県の関与があったかどうかに向くと。調査を待たないとわからないが、これまでのところ『だまされた感』もある。県と言うより、現場が。ブローカーが入ってというようなところ。
 県がどうしたというところばかりに関心が集まると、情熱をもって原子力防災どうあるべきか、原発とどう向き合うべきかという話は関心の外。今までそういう流れできているので、むしろ引く方が結果として新潟の未来をどうするのか、原発をどうするのかというところに(関心が)行くので、初心貫徹だと思う」

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泉田知事の撤退で上がった東電の株価、「世の中そういうふうに見ていたのかと、素直にそのまま受け止めている」

新潟日報 「今回の選挙は、知事の後援会が自民党や公明党など各党に推薦願を出していたが、各党が前回までの知事選と違い、告示1か月近く前まで対応を決めていない状況について、その理由、原因を知事はどのように分析しているのか」
泉田知事 「認識はあるが、新潟県として行政のための記者会見なので、コメントは差し控えたい」
テレビ新潟放送網 「知事の撤退が発表されて東京電力の株価が上がっているが、どのように受け止めているか」
泉田知事 「森民夫・長岡市長の知事選出馬会見のときは上がらず、私が撤退すると上がるというのは、世の中そういうふうに見ていたのかと、素直にそのまま受け止めている」
テレビ新潟放送網 「今まで厳しい姿勢をしていたわけですが、それが逆に(柏崎刈羽原発の)再稼働に進んでいくのではないか」
泉田知事 「次の新潟県知事選挙が日本海横断航路問題への県の関与がテーマではなく、自分たちの故郷をどうするかというテーマで議論が進んでいく。また、株価も影響を受けるかもしれないので、今は予断をもって何かお話する段階ではない」
 「私が引くことで新潟をどうするか、原発にどう向き合うのかという純粋な議論ができる」
NHK 「これまで原発、原子力の政策に力を入れてやってきて、途中で任期が終わられる。これをどのようにご覧になっているのか」
泉田知事 「外部から見守っていきたい」
NHK 「今まで知事は福島第一原発事故の検証と総括なくして(柏崎刈羽原発の)再稼働の議論はないと言っていたが、それはどのようにとらえているのか」
泉田知事 「だからこそ、原発事故の検証と総括、対策をどうしていくのかというところは次の県知事選挙で議論していただきたい。今、福島県からも大勢の方が新潟県に避難をしてこられている。この方々の苦しみは、新潟県民は肌身で感じている。これに向き合った選挙、自分たちで意思表示ができるような選挙戦を期待している。そのためには退いた方がいいということ」
NHK 「退くことで、もしかしたらすごい再稼働に向けて進むかもしれない」
泉田知事 「反対だと思う。私が(知事選に)出ると多分、日本海横断航路問題が選挙戦のテーマになる。私が退くとそうではなくて、新潟の未来をどうするか、原発にどう向き合うのか、原子力防災どうするのかという純粋な議論ができるので、退いた方が思いを遂げられるということではないか」

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新潟日報が反論!「新潟日報としては事実を書いている。圧力には屈せない」

新潟日報 「新潟日報としては事実を書いている。知事および桐生交通政策局長からの申し入れも、適正な報道を求めるというものが多くて、適正な報道をしているのに適正な報道を求めると言われても、『はい、そうですか』で終わりだし、事実を書いている以上、それを直せという圧力には私たちは屈せない。
 先ほどから、選挙戦になったら40万部以上の新聞社と自分の街頭演説とを同じように並べ立てて、まるで私たちが偏向している報道をするかのようにおっしゃっているが、これに対しては抗議する。
 争点化の話だが、今回の日本海横断航路の問題は新潟県庁の体質や、今後どうするかといった、県の未来に密接に関わっている問題だと認識している。それが争点になったらいけないというのを、まさに当事者である知事本人が言うのは有権者に対して非常に失礼なことではないか」
泉田知事 「まず、訂正を求めている。内容についてもあくまでも『適正な報道を』と言っているわけで、(自らの主張に)自信があるなら、県の申し入れを書いたうえで、『我々はこう判断した』と紙面上で訴えたらよろしいのでは。言論には言論で、というのが民主主義の鉄則だと思う」
新潟日報 「だからそういう県の要望、申し入れを踏まえて、その翌日なり、翌々日なりに記事として出している。それが回答」
泉田知事 「こういう県の申し入れがあった、というのが出ていない。それから読者の投稿欄に対する回答はなぜ載せないのか」
新潟日報 「それは会社として、私ら記者の決めることではない。今、私がここでは答えられない」
泉田知事 「では、会社として回答をいただけるか」
新潟日報 「先日あったでしょう」
泉田知事 「だから『総合的に(判断)』ではなくて、なぜ説明責任を果たせと書いておいて、その部分について回答しないのか」
新潟日報 「それはやめましょう、ここでは。わかりました。あとで文書なりでください。時間がもったいない、それは」
泉田知事 「どうしてそこはもったいないのか。大事なところだと思う」
新潟日報 「私が答えられないのに、今それを言われてもしようがないではないか」
泉田知事 「上司に報告していただけるか」
新潟日報 「先日うちの局長が知事に述べたとおりです」
泉田知事 「だからなぜ回答を載せないのか。自らの編集で説明責任を果たせという投稿を載せておいて、県が回答をすると今度はそれを掲載しない。この判断が、なぜ『総合的な判断』なのか。ここを回答いただきたい」
新潟日報 「それは伝える」

 「なぜ回答を紙面に載せないのか」という泉田知事の問いに、「私ら記者は答えられない」と逃げを打ちながら、社を代表するように「抗議する」と言う記者。知事と記者の応酬は公然と行われたのだから、この記者の「上司」は、なぜ県からの回答を紙面に載せなかったのか、県民、国民に向かって説明する義務がある。

 泉田知事の撤退は新潟県だけの問題ではない。全国に影響を与える問題である。撤退の決断に追い込んだのは新潟日報である。新潟日報なりに新聞社としての信念を持って報道を行った結果であろう。しかし、そのプロセスで生じた「県からの回答を紙面に掲載しなかった決断」については、報道機関として誠実に説明すべきである。この記者の説明では、説明になっていない。

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撤退の撤回はありえる?泉田知事「基本的に政治家が出処進退に言及したらそこで決まり」

新潟日報 「今後、仮に公の場で、出馬要請のような意見がきた場合でも、やはり翻意はあり得ないのか」
泉田知事 「現段階ではそのような事態は起きていないので、コメントするにはなかなか適さないのではないか」
新潟日報 「今朝、そういった(撤回してほしいという)意見があるが翻意はないか、と聞かれたときにはあり得ないと言われていたが」
泉田知事 「煎じ詰めればそういうこと。政治家が一度撤退すると表明したものを翻すことがあるのか、調べてみたら、そういうことはあったらしい。私が翻すという意味ではないが、基本的に政治家が出処進退に言及したらそこで決まり」

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福島に免震重要棟を設置させた立役者の泉田知事「原発震災を疑似体験したのが中越沖地震だった」

朝日新聞 「これまでの任期の中で、原子力防災や原発に関連して印象深かったことはどのようなことか」
泉田知事 「私が知事に就任する30時間前に地震が発生したので、最初の職務は震災対応だった。
 特に災害と原子力という意味で言うと、その2年半後に起きた中越沖地震で、柏崎刈羽原発が震災によって火災事故を起こした。複合災害、世界で初めての原発震災ということだったと思う。あのときは微量のコバルト60は出たが、ほぼ放射能漏れはないという状況だった。
 しかし、救急車、消防車が現場に到達することが困難で、原発で火災が起きているときに消火栓が動かないと、世界にどのようなメッセージが出ていくのか。また、避難する方々にどのような影響があって、そもそも情報が届かないケースがあるなど、原発震災を疑似体験したのが中越沖地震だったと思う。
 そもそも柏崎刈羽原発とのホットラインが通じなかった。なぜホットラインが通じないのか、事後的に確認したところ、ホットラインがある部屋が地震でゆがみ、ドアが開かなくなり、県庁とのホットラインがつながらなかったということで、それで『何とかしてくれ』と言ってできたのが、免震重要棟。そして、『免震重要棟が柏崎刈羽原発だけにあるのはおかしい』と言って、福島にも免震重要棟ができた。これが東日本大震災の8か月前だった。
 福島第一原発事故の際、今度は新潟県として直接的に対応した。特に福島県からSOSで、電源が落ちて、モニタリングポストもうまく機能しないので、新潟県に助けて欲しいと。県からは専門能力を持った職員と機材を送った。
 そのあとの展開はいろいろあるが、結果として避難された方がどのような形でこられるのか、スクリーニングはどのような形で進めればいいのか、避難所の振り分けはどうするのかなど、当事者の一人として経験した。
 原発震災が起きたらどうなるか、避難するとどのような問題が生じるか、組織として、職員として経験したので、大変印象深かった。この経験で、どこに穴があるのかわかっているにもかかわらず、目をつぶってしまうことは後世に対して責任を果たせないだろうということで、これまで問題点を提起させていただいている。それがもしかするとこういうかたちで退任に結びついているかもしれないが、馬鹿正直で真面目なのかもしれませんが、一生懸命やらせていただいたつもりだ」

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「原子力規制委員会が決めたことは金科玉条のごとく守るということでは、住民の命、健康を守るのは難しい」

朝日新聞 「昨日発表された文書の中に、『東京電力の広告が新潟日報に今年5回掲載されている』という一文があるが、この一文が入った意味は」
泉田知事 「事実関係だけです」
共同通信 「日本海横断航路計画に関して県がどうしているのかというところにばかり焦点が当たっているというが、出馬表明から半年が経ち、選挙戦も間近になっていても、知事は公約を出していない。何をやりたいかという話を具体的にしていない中で、県の現状に焦点が当たるということも致し方ないのでは」
泉田知事 「次の知事選挙は、未来を語り、原発・原子力防災とどう向き合うのか、しようがないではすまない話。未来を語る選挙にする必要があると思う」
UX新潟テレビ21 「原子力災害時における避難計画が現実にそぐわないという点を常に指摘されているが、先週末に関西電力高浜原発で(過酷事故を想定した)広域避難訓練が行われたところ、悪天候により(住民輸送用の)ヘリ4機のうち2機が飛ばず、船も3艘すべて使えなかった。
 悪天候について想定されておらず、とりあえずはバスと救急車を使用したということだが、避難計画の想定が甘いということなのか、知事としてはどのようにすべきだと考えるか」
泉田知事 「新潟県の訓練ではないので新潟県知事としてのコメントは少し差し控えたいが、一般論で言うと、現実にそぐわない原子力災害対策指針になっていることは間違いない。
 平成28年の熊本地震を例に挙げると、今の指針に従えば、UPZ(30km)圏の方は屋内退避ということになる。ただし、余震が続く中で屋内退避すると、命に影響が出るケースがあり、実際に熊本地震では前震の後に屋内退避して亡くなった方が出ている。こういった複合災害の場合にどうするのかということは、指針上書かれていない。
 さらに、屋内退避した後に放射線量が上がった場合は避難するが、避難する場合の基準が毎時500マイクロシーベルト。つまり、避難しなければいけなくなったときには、2時間で避難しないと年間被爆線量の上限を超える。
 新潟県で言うと、柏崎刈羽原発から5〜30キロ圏内にいる約44万人を2時間でどうやって避難させるのかということを、自治体に丸投げしているということになる。
 そうでなく、やはり分散避難させるとか、簡易シェルターを家の中に造るとか、もう少し現実的な対応をしないと対応できないということになり得る。原子力規制委員会が決めたことは金科玉条のごとく守るということでは、住民の命、健康を守るのは難しいのではないか。ぜひこういった点も(県知事)選挙戦で議論していただきたいと思う」

 事故が起きれば、誰が県民のために正しい議論をしているのか、明らかになる。だが、事故が起きてしまってからでは取り返しがつかない。すべて手遅れとなる。事故を起こさないようにするためにこそ、真剣な議論が必要なはずである。

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