[2016_08_15_01]<社説>伊方原発再稼働 複合災害前提に安全対策を(琉球新報2016年8月15日)
 
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<社説>伊方原発再稼働 複合災害前提に安全対策を

 愛媛県伊方町の四国電力伊方原発3号機が再稼働した。15日にも発電と送電が始まる。
 東京電力福島第1原発事故を踏まえて策定された原子力規制委員会の新規制基準に適合した原発としては鹿児島県の九州電力川内1、2号機、福井県の関西電力高浜3、4号機に続き5基目だ。川内1号機の再稼働から1年たち、政府は原発活用を加速させたい考えだ。
 しかし、伊方原発の再稼働には不安が根強い。最も大きな懸念材料は住民の避難対策だ。
 伊方原発は「日本一細長い」と言われる佐田岬半島の付け根にあり、岬側に約5千人が暮らす。内陸部へは原発のそばを通る国道が主要幹線だ。一帯は地滑りが頻発する地域で、土砂災害で、傾斜地にある多くの集落が孤立する恐れがある。伊方町内の放射線防護対策施設7カ所のうち4カ所は土砂災害警戒区域にある。
 伊方原発は国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」から約6〜8キロの距離に立つ。熊本地震の震源域は、中央構造線断層帯の延長線上にある。2回の震度7など強震を繰り返した熊本地震では家や避難所が損壊し、使用不能になるケースも相次いだ。
 さらに周辺地域では南海トラフ巨大地震による大きな被害も想定されている。
 しかし国や愛媛県がまとめた原発事故時の住民避難計画は南海トラフの被害を前提としていない。
 四国電力は原子力規制委員会の指摘を受け、中央構造線と大分県側の別府−万年山(はねやま)断層帯が連動した場合も想定して650ガルの基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)に耐えられる対策をしたことなどで、耐震安全性に問題はないとしている。
 しかし福島第1原発事故は地震に津波が加わり全電源を喪失。大量の放射性物質が放出され、被害が拡大した。
 県による南海トラフ地震の被害想定は緊急輸送道路200カ所以上で陥没や浸水被害が発生し、家屋など約40万棟が全半壊する。地震と原発事故が同時に起きれば、避難や屋内退避は難しいと予想される。
 3・11の教訓から自然災害と原発事故の複合災害はあり得ると考えなければならない。国や県は複合災害を前提に対策を抜本的に練り直す必要がある。再稼働を先にすべきではない。

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