[2016_07_14_01]溶融燃料 炉内残存か 福島第1原発 推計200トン初確認 複数工法で取り出し 新たな廃炉プラン(東奥日報2016年7月14日)
 
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 東京電力福島第1原発2号機の原子炉圧力容器内を、物質を透過する性質を持つ素粒子「ミュー粒子」を使った調査で透視した結果、溶け落ちた核燃料(燃料デブり)の大部分が圧力容器の底に残っているとみられることが13日、関係者への取材で分かった。デブリや周辺の構造物など、原子炉底部に存在する物質の総量は推計で200トン前後と判明した。
 2号機のどこにあるか分からなかったデブりの具体的な位置を特定できたのは初めてで、廃炉で最大の難関であるデブリ取り出しに向け、工法を絞り込める可能性が出てきた。東電と高エネルギー加速器研発機構(茨城県つく.ば市)などが調査と分析を続けており、近く結果を出表する。
 調査結果によると、事故当時は運転中で、約100トンの燃料が入っていた炉心部には、核燃料などの高密度の物質がほとんど存在しないとのられる一方、圧力容器の底には大量のデブリが残っていることが確認された。
 「ミュー粒子の観測を基に圧力容器の底部周辺にある物質の総量を推計すると、200トン前後だった。事故で冷却ができなくなった燃料が周囲の構造物を巻き込みながら溶け落ち、圧力容器の底にたまったとみられる。2号機と同種の調査で、1号機では圧力容器内部にほとんど燃料が残っておらず、ほぼ全量が溶け落ちたとみられることを2015年3月に確認。3号機は調査していない。
 炉心溶融が起きた1〜3号機の原子炉内は放射線量が高いため内部の調査は進んでいない。2号機の溶けた燃料について、東電はコンピューター上の試算で「一部は圧力容器に残り、一部は格納容器の底まで落ちた」と推定していたが、位置は特定できていなかった。」

 複数工法で取り出し 溶融燃料 新たな廃炉プラン

 原子力損害賠償・廃炉等支援機構は13日、東京電力福島第1原発事故の廃炉作業の新たな「戦略プラン」を公表した。これまでは溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出し方法を一つに絞り込む方針だったが、燃料のある場所に応じて複数の工法を組み合わせる可能性が高まった。燃料を取り出さずに建屋をコンクりートで覆う「石棺」に初めて言及した。
 工法を組み合わせるのは、原子炉内の調査・分析が進んだ結果、溶けた燃料が圧力容器の底や、さらに下の格納容器の底に散在し、1工法で取りきるのは難しそうなことが分かってきたため。政府の廃炉工程表では、2021年の溶融燃料取り出し開始を目指し17年夏ごろに号機ごとの対応を決める予定で、今後具体的な工法を検討する。
 昨年の戦略プランは@格期容器に水を満たして上部から取り出す「冠水工法」A水を張らない「気中工法」で上部から取りり出すB気中工法で側面から取り出すーの3通りを挙げ、燃料の状況に応じて絞り込む方針を示していた。
 チェルノブイリ原発事故で採用された「石棺」については「当面の閉じ込め確保に効果があるとしても、長期にわたる安全管理が困難」と問題点を指摘。現時点では引き続き取り出しを目指し、今後明らかになる内部状況に応じて柔軟に見直すベきだとした。
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