[2016_02_26_04]原発40年ルール 早くも形骸化 到底容認できない(愛媛新聞オンライン2016年2月26日)
 
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原発40年ルール 早くも形骸化 到底容認できない

 「原発の運転期間を原則40年に制限する」。東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえて改正されたはずの原子炉等規制法のルールが、事故から5年を前に早くも形骸化しつつある。
 原子力規制委員会が、運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機(福井県)を事実上「合格」とした。7月7日までに追加の審査に通れば、最長20年の延長が可能になる。
 高浜原発は、プルサーマル発電の4号機が今日にも再稼働する。加えて老朽化した1、2号機が再稼働すれば危険度が一層高まる。到底容認できない。
 「40年ルール」は、当時の民主党政権が、古い原発を順次廃炉にしていくために導入した。40年の科学的根拠について、国は原発の導入で先行してきた米国の例を参考に「原子炉の圧力容器が中性子の照射を受けて劣化する時期の目安」と説明。最長20年の運転延長は、あくまで「例外」と位置付けていた。
 規制委の田中俊一委員長も、2012年の委員会発足当初、「40年くらいが一つの節目だと認識している。20年の延長は相当困難」と話していた。にもかかわらず、最初に出てきた延長申請を早々と認めた。今後、追随する原発が相次ぎ「例外」が例外でなくなる可能性がある。看過できない。
 何よりもまず、圧力容器本体が持つのかという根本的な疑問が解消されていない。40年以内なら絶対大丈夫という根拠もなかったはずだ。審査が通ればいきなり20年も延長が可能とするのは無謀と言わざるを得ない。
 配管などの劣化もある。中でも古い原発は、電気ケーブルの防火対策が大きな障壁だった。新規制基準は難燃性ケーブルの使用を求めているが、総延長は1基当たり数百キロに及び、費用的に困難とされていた。
 ところが関電は、ケーブルの6割を難燃性に交換し、残りは防火シートで包む方法で申請、規制委もこれを了承した。十分な耐火性が発揮できるのか疑問が残る。新規制基準自体が有名無実化する恐れもある。
 規制委は審査の期限切れを避けたかったのだろう。高浜の審査を優先し、11カ月で終えた。「合格ありき」の疑念が拭えない。老朽化対策に特化した追加の審査は、7月の期限にとらわれることなく、厳格に全うするべきだ。
 四国電力の伊方1号機も今年9月末で39年になる。廃炉か、運転延長かの決断が6〜9月に迫っている。原発30キロ圏内の首長らが要望している通り、「原則40年」の厳守を求めたい。
 老朽原発の運転延長は本来、将来的に原発依存度を下げるとする政府方針に反する。ただ、安倍政権は30年度の電源構成で原発の比率を20〜22%にする目標を掲げており、明らかに運転延長や新増設を見込んでいる。なし崩し的な「ルール改変」による原発回帰の姿勢が、国民の不信を招いていることを猛省するべきだ。

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