[2016_02_25_05]高浜1、2号機、新基準に適合 老朽原発が相次ぎ延命も(東京新聞2016年2月25日)
 
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高浜1、2号機、新基準に適合 老朽原発が相次ぎ延命も

 原子力規制委員会は二十四日の定例会合で、七月七日に運転期間満了を迎える関西電力高浜原発1、2号機(福井県)について、原子炉建屋の放射線対策やケーブルの防火対策などを進めれば、新規制基準に適合するとの審査書案を了承した。老朽原発が新基準を満たす初めての判断となった。

 東京電力福島第一原発事故後に改正された原子炉等規制法では、原発の運転期間は四十年に制限され、最大二十年間の運転延長は「例外」とされてきたが、早くも例外が認められる見通しとなった。今後、延長を目指す電力会社が相次ぎ、実質的に「六十年廃炉」になっていく恐れがある。

 この日の会合で、事務局は、建屋上部に遮へいドームを造り、ケーブルには防火シートを巻き、事故時の対策拠点を新設するなど関電の方針を説明。これらが実行されれば、新基準を満たすとした。委員から若干の質問は出たが、審査書案に異論はなく、議論は十五分ほどで終わった。

 規制委は二十五日から三月二十五日まで意見募集を実施して審査書を決定。対策工事の詳細設計や老朽化の審査も進めた上で、延長の可否を決める。

 四十年廃炉の原則は二〇一二年、米国の制度も参考にして法制化された。二十年延長の例外規定も設けられたが、当時の細野豪志原発担当相(民主党)は「例外が認められるのは、極めて厳しい。例外中の例外」と明言していた。

 四十年超の原発を延命させるためには、新基準で要求される設備を整えるほか、老朽化に伴い原子炉がもろくなっていないか、建屋のコンクリートの強度は十分かなどの審査にもパスすることが求められる。

 関電は、1、2号機は出力が八十二万六千キロワット、3、4号機は八十七万キロワットと大きく、新基準などに適応する対策費に四基合わせて約三千百九十億円をかけても採算が合うと判断した。

 新基準ができた後、関電美浜1、2号機(福井県)など五基の廃炉が決まったが、いずれも最大五十万キロワット台と比較的小さい。

 今後十年のうちに、十五基が四十年を迎え、廃炉か延長か判断を迫られる。しかし、大型化の傾向は明確で、十一基までが八十万キロワット超。もっと新しい原発は百万キロワット超が主流だ。

 各社とも方針を明らかにしていないが、採算性を優先すれば、延長を狙ってくる可能性が高い。そうなれば、四十年廃炉の原則は失われることになる。

◆規制委「費用かけ克服」

 原子力規制委員会の田中俊一委員長は二十四日の定例記者会見で、老朽原発の関西電力高浜1、2号機(福井県)が新規制基準に基づく審査に適合としたことに関し、「(老朽原発も)費用をかければ技術的な点は克服できる」と述べた。

 田中委員長は今後の老朽原発の審査方針について「個々に判断していく」としたほか、高浜原発の追加の安全対策について「新しく原発を造る半分の費用がかかっている。それなりの覚悟があったのだろう」と述べ、関電の対応に一定の評価を示した。

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