[2015_09_15_02]解説 オピニオン 福島第1地下水 まず838トン海洋へ 除去難しい放射性物質「トリチウム」 原発ごとに放出基準値 事故前から 世界的な措置 (東奥日報2015年9月15日)
 東京電力福島第1原発の汚染水対策「サブドレン計画」で、くみ上げた地下水の海洋放出が14日、始まった。水は浄化処理しているが、放射性物質のトリチウムは除去できていない。トリチウムは、ろ過や蒸留などによる除去が難しいため、原発ごとに基準値を定め、海に放出することが認められている。第1原発事故以前からの制度で、世界的にも同様の措置が取られている。【本記3面】

 法令では、原発から放出される放射性物質による周辺住民の被ばく限度を年間1_前に定めている。さらに、より厳しい「目標値」として年間0・05ミリシーベルトを設定し、トリチウムなどの放出基準値はこの目標値を下回るように定められている。
 原子力規制委員会による2004年度から10年度までの統計によると、事故前の福島第1原発では年間22兆ベクレルの基準値に対し、トリチウム放出量は1兆〜2兆6千億ベクレルだった。
 他の原発では、原子炉の数や型式、稼働率によって差があるが、年間で数億〜100兆ベクレルを放出した。福島第1原発と同じ沸騰水型に比べ、九州電力川内原発(鹿児島県)と同じ加圧水型の原子炉の方が放出量は多い傾向がある。
 最も多かったのは10年度の九電玄海原発(佐賀県)で100兆ベクレル。他にも04年度の関西電力大飯原発(福井県)で98兆ベクレル、11年度の北海道電力泊原発(北海道)で38兆ベクレルと福島第1原発の数十倍の量を放出しているが、いずれも基準値を下回っている。
 原子炉を停止していても定期検査中に放出することがあり、東日本大震災後全基が停止している東北電力女川原発(宮城県)では12年度に170億ベクレルを放出した。
 使用済み核燃料再処理工場は工程上、原発に比べて放出量が多く、日本原燃の再処理工場(六ヶ所村)は07年度に1300兆ベクレルを放出した。
 トリチウムの放射線はエネルギーが弱く、1b当たりの線量はセシウムの約千分の1。電力会社などは「ベクレルだけでみれば数字が大きくなり、人体への影響も大きいと思われがちだが、放出基準値は周辺住民の被ばく量が十分低くなるように定めている」と理解を求めている。
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