[2015_05_31_01]小笠原沖M8.5 震度5強、関東でも 広範囲で長い揺れ(朝日新聞2015年5月31日)
 
 30日午後8時24分ごろ、小笠原諸島西方沖を震源とする強い地震があり、東京都小笠原村母島と神奈川県二宮町で震度5強、埼玉県春日部市、鴻巣市、宮代町で震度5弱を観測したほか、関東を中心に全47都道府県で震度4から震度1の揺れを記録した。
 気象庁によると、震源の深さは約590キロ、地震の規模を示すマグニチュード(M)は8.5(速報値)。日本周辺でM8.0以上を観測したのは、2011年3月の東日本大震災(M9.0)以来。M8.5は1885年以降でみても、東日本大震災に次ぐ2番目の規模だという。
 規模が非常に大きかったうえ、震源が深かったことから広範囲で揺れが観測されたが、津波の心配はない。気象庁の中村浩ニ・地震情報企画官は、「強い揺れの余震が起きる可能性は低い」との見解を示した。
 気象庁は今回、高層の建物を大きく揺らす「長周期地震動」を観測した。室内で物につかまらないと歩くのが難しいような揺れが横浜市鶴見区、長野県諏訪市などで観測された。一方、緊急地震通報は発表しなかった。震源が深い場合、震源から離れた場所の揺れが大きくなることもあり、「正確な震度の予測が困難なため」としている。
 この地震の影響で、東海道新幹線やJR山手線など多くの鉄道が一時運転を見合わせ、首都圏を中心に交通が混乱。JR東と東海の新幹線だけで約7万7千人に影響した。JR東海は東京、名古屋、新大阪の各駅に停車した東海道新幹線の車両を帰宅できない人に開放した。東京電力によると、東京都と埼玉県で一時、最大で約600軒が停電した。各消防によると、川崎市川崎区の男性会社員(56)が階段で転倒し、肋骨が折れるけが。
 震度4を観測したのは、茨城県北部、南部、栃木県南部、群馬県南部、千葉県北東部、北西部、南部、東京都23区、神奈川県西部、山梨県東部・富士五湖、長野県中部、静岡県伊豆など。
 今回の地震は、速報値でM8.5という非常に規模が大きい地震だった。大きい地震は断層がずれ動く範囲が大きく、破壊が始まってから終わるまでに時間がかかるため、東日本大震災(M9.0)のように揺れが良く続いた。
 ただ、震源の深さは東日本大震災の24キロに対し、約590キロと深かった。東日本大震災は太平洋プレート(岩板)が沈み込む境界で起きたのに対し、今回は沈み込んだ先のプレート内部で起きたとみられている。地表から遠かったため、最大震度は5強にとどまった。
 阿部勝征・東京大名誉教授は「プレートの先端が割れて地震が起きたのだろう」と指摘する。纐纈一起・東大地震研究所教授は「深発地震としては最大級だと思う」と話す。硬いプレートを伝わる形で関東から東北に強い揺れが伝わり、広い範囲を大きく揺らしたとみられる。
 福和伸夫・名古屋大減災連携研究センター長は「大きな地震は長周期の揺れが多く、東京や大阪のような大きな堆積平野では増幅しやすい。長周期地震動は高層ビルを大きく揺らす性質がある」と話した。
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