[2014_07_16_19]川内原発 審査書案の要旨(東奥日報2014年7月16日)
 九州電力川内原発1、2号機について、原子力規制委員会が16日にまとめた審査書案の要旨は次の通り。

【審査書の位置付け】
審査書は原子炉等規制法に基づき、九電が規制委に提出した川内原発1、2号機の発電用原子炉設置変更許可申請書の内容が、原発の新規制基準などに適合しているかどうかの審査結果を取りまとめたものである。
 【基準地震動】九電は震源を特定した場合の基準地震動を最大加速度540ガル、震源を特定しない場合を同620ガルとした。最新の知見を踏まえて想定しており、新規制基準に適合している。

【地盤】
川内原発に分布する断層は新第三紀鮮新世以降の活動がなく、地盤は原子炉建崖などを十分に支持でき、新基準に適合している。

【基準津波】
九電は、最も影響の大きい琉球海溝北部から中部による津波(マグニチュード9・1)を基準津波と定義した。最大水位上昇量は1・98メートル、最大水位降下量はマイナス1・60メートルで、干満との重ね合わせなどで遡上(そじょう)高さは最高で約6メートルとなる。津波が到達する可能性のある海水ポンプエリア(海抜5メートル)に防護壁を設置する方針で、新基準に適合している。

【竜巻】

 九電は、竜巻に対する防護設計のため、国内で過去に発生した最大の竜巻にさらに余裕を持たせた最大風速100メートルを設定。竜巻による飛来物となり得るものを固定するなどの対策を講じ、施設の安全機能が損なわれないことを確認した。

【火山】

 九電は、敷地から半径160キロにある30火山のうち将来活動する可能性がある14火山について、原発の運用期間中に火山爆発指数7(9段階で上から2番目の規模の噴火)以上の噴火の可能性は十分に小さいと評価した。指数6以下の噴火が起きても敷地への影響はないとしている。
 また原発運用期間中の活動可能性が十分小さいものの、過去に影響が敷地に到達したことが否定できないとして、姶良カルデラなどについては地殻変動の観測などのモニタリングを行い、噴火の可能性がある場合は原子炉停止や核燃料搬出を実施する方針を示した。

【電源喪失対策】

 全交流電源喪失に備えて、重大事故に対処するための電源設備から電力供給されるまでの間(約25分)、原子炉の安全な停止や冷却、格納容器の健全性確保のための設備に、電力を1時間以上供給できる蓄電池を備える方針を確認した。

【重大事故の拡大防止】

 炉心損傷防止対策では、2次冷却系からの除熱機能設失や全交流電源喪失など八つの想定について審査。格納容器破損防止対策では、格納容器の温度や圧力の上昇、水素燃焼など六つの想定について審査した。九電による事象進展解析のためのコードによる解析結果は妥当である。対策や復旧作業に必要な要具燃料についても確認した。九電が計画している対策は有効であると判断した。

【重大事故対処施設】

 九電は緊急時対策所(免震重要棟内)と、対策所完成までの代替緊急時対策所を設置する。2施設とも、断層のずれなどが起こらず、重大事故対処機能が損なわれる恐れがない地盤に設置するとしており、新基準に適合している。
 長周期の地震も考慮し、他の施設とは別に基準地震動を設定。施設内に備える設備の種類に応じた耐震設計で、必要な機能が損なわれないようにするとした。周辺斜面の崩壊の恐れもないとしており、新基準に適合している。
 津波、火災による損傷防止対策として、原子炉建屋などに準じた適切な設計を示した。

【格納容器破損防止】

 原子炉格納容器内の冷却機能が喪失した場合でも炉心溶融を防止し、炉心が溶融した場合でも格納容器の破損を防止するため、九電は代替冷却設備として複数の冷却系統を設けるほか、消防車の配備など自主的な追加対策の方針も示しており、対策がより確実に実施されることを確認した。

【水素爆発対策】

 九電は水素爆発による格納容器や原子炉建屋の破損を防止するため、水素濃度を低減する設備や可搬式の分析装置などを整備する方針を示した。

【放射性物質の拡散抑制】

 格納容器の破損などが起きた場合に発電所外への放射性物質拡散を抑制するため、九電は移動式ポンプ華や放水砲などを整備する方針を示した。

【電源設備および電源確保手順】

 電源喪失により重大事故が発生した場合に、炉心溶融や格納容器の破損などを防ぐ対策に必要な電力を確保するため、九電は電源車や蓄電池などの整備方針を示し、他号機からの電源融通など自主的な対策も示した。

【大規模な自然災害やテロ対策】

 大規模な自然災害や大型航空機衝突などのテロで、原子炉施設の大規模損壊が発生した場合に備え、九電は手順書、体制、資機材を適切に整備する方針を示した。

【審査結果】

 九電が提出した川内原発の申請書を審査した結果、新規制基準に適合していると認められる。
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