[2014_07_16_09]川内原発安全対策事実上“合格”取りまとめへ(NHK2014年7月16日)
 

川内原発安全対策事実上“合格”取りまとめへ

 鹿児島県にある川内原子力発電所について、原子力規制委員会は、九州電力の安全対策が事実上、審査に合格したことを示す審査書の案を、16日、取りまとめる見通しです。今後、一般からの意見募集を経て正式な審査書が完成すると、住民への十分な説明がなされるかや地元自治体がどのような判断をするのかが焦点になります。
 川内原発1号機と2号機で進められている九州電力の安全対策を審査してきた原子力規制委員会は、「原発の新たな規制基準に適合している」とする審査書の案を16日の会合で取りまとめる見通しです。審査書の案は、事実上、審査に合格したことを示すもので、今後、一般からの意見募集を経て正式な審査書が完成すると、川内原発は、原発事故を受けて見直された新しい基準に適合する初めての原発となります。
 その後は、再稼働の必要性や重大事故への対策などを住民が十分納得できるように国や九州電力の説明がなされるのかや地元自治体がどのような判断をするのかが焦点になります。一方、原発に設置された機器の詳しい設計の資料など、今後、九州電力が提出して規制委員会の認可を受けなければならない手続きが残されていて、九州電力が目指す川内原発の再稼働は10月以降になるとみられます。

再稼働までの流れは
 原子力規制委員会は、「審査書案」に対しておよそ1か月にわたり一般からの意見を募集します。
寄せられた意見を反映させた審査書が正式に決定すると、九州電力に再稼働に必要な「設置変更許可」という許可を出します。これを基に、九州電力は立地自治体である鹿児島県と薩摩川内市から再稼働の同意を得たいとしています。
 一方、地元の鹿児島県は、川内原発の30キロ圏内にある薩摩川内市やいちき串木野市など合わせて5つの市と町で住民説明会を開き、原子力規制委員会から審査結果の説明を受けたいとしています。その後、薩摩川内市と地元市議会、それに県議会の意向を確認したうえで、県知事が再稼働に同意するか判断するということです。
 こうした動きと並行して、九州電力は、安全設備や機器が地震の揺れに耐えられるかを計算した膨大な資料や重大事故対策の体制や訓練に関する規定を提出し、規制委員会の確認を受けるとともに、新しい設備については完成後の検査を受ける必要があります。

再稼働に向けた課題は
 川内原発の再稼働に必要な今後の手続きには課題もあります。
十分な説明
 まずは、地元自治体をはじめ社会への説明です。規制委員会は「安全対策が規制基準を満たしているからといって事故のリスクがゼロになったとはいえない」として、電力会社のさらなる安全性向上の取り組みとともに、原発周辺地域の十分な防災対策を求めています。国や電力会社は「安全神話」と決別し事故は起こりうるという前提に立ちながら、再稼働の必要性や事故が起きた場合の対策を住民が十分理解できるよう丁寧な説明が求められます。
同意の範囲
 また、電力会社が同意を得る自治体の範囲も議論になっています。原発の再稼働に際して、地元自治体の同意は法律の義務づけはありませんが、九州電力は安全協定を結んでいる立地自治体の薩摩川内市と鹿児島県の同意を得たいとしています。しかし、立地自治体ではないものの、周辺にある自治体からは「事故が起きた際に対応を求められる30キロ圏内の自治体も同意の対象とすべきだ」という意見が出ています。福島第一原発の事故では周辺自治体の多くの住民が避難を迫られただけに、こうした声に真摯しんしに応えていく必要があります。
防災対策
 そして、周辺自治体に課せられた大きな課題が重大事故に備えた防災対策です。住民からは「原発の安全対策とともに“車の両輪”であるはずの自治体の防災対策が不十分だ」という声が上がっています。具体的には、風下になりやすい場所が避難先に選ばれているほか、病院や介護施設で避難計画の作成が進んでいないということです。アメリカでは、国が自治体の避難計画を審査し認可しないかぎり、原発を運転できない制度を取り入れていて、日本でもそうした制度を求める意見が出ています。
再稼働判断
 こうした課題があるなかで、最終的な再稼働をどう判断するのかが焦点になります。法律上は、必要な許認可が下りれば、電力会社の判断で原発は再稼働できます。一方、ことし4月に閣議決定されたエネルギー基本計画で、政府は、「規制基準に適合すると認められた原発の再稼働を進める。その際、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう取り組む」としています。おととし、前の政権の下で再稼働した関西電力の大飯原発のケースでは、政府が再稼働を決めましたが、今回、同じような手順を踏むかどうかは明らかにされていません。
2014年7月16日

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