[2014_06_07_03]凍土遮水壁の工事着手 建屋の汚染水減らす効果 来春から20年まで運用(東奥日報2014年6月7日)
 
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 東京電力は2日、福島第1原発で深刻化した汚染水問題の抜本的な対策「凍土遮水壁」の工事に着手しました。
 Q 土を凍らせて壁にするのですか。
 A そうです。1〜4号機の原子炉建屋には、山側から地下水が1日約400トン流れ込み、汚染水となっており、これを食い止めます。四つの建屋を囲むように約1.5キロにわたり、約1550本の配管を地下約30メートルまで打ち込みます。これらに零下約30度の冷却材を循環させ、周りの土壌を地下水とともに凍らせる仕組みです。
Q 期待する効果は。
A ほかの汚染水対策と併せると、地下水を約280トン減らせるとされています。建屋の汚染水を少しでも減らし、溶け落ちた燃料の取り出しなど、本体の廃炉作業を進めなければなりません。
Q 大がかりな工事になりそうですね。
A これほど大規模な工事は初めてです。前例がないため、当初は原子力規制委員会にも、建設による地盤沈下の恐れなど安全性をめぐる慎重な意見が多くありました。
Q 東電の説明は。
A 建屋の地盤沈下は最大でも16ミリにとどまるとしています。これを受け、規制委は「着工を妨げるものではない」として、5月にゴーサインを出しました。ただ建屋内に汚染水がどの程度あるか正確に測定する方法や、トラブルや自然災害への備えなど課題も残っており、規制委で今後議論されます。
Q いつ運用を始めますか。
A 来年3月に凍結を始め、2020年まで運用する計画です。
Q 建設費はいくらですか。
A 国が「研究開発」の名目で320億円の建設費を負担します。この予算を得るため、あえて技術的に難しい凍土壁を採用した政治的な側面も指摘されています。
Q 維持費は。
A 東電は具体的な数字を明らかにしていません。年間の電力量は一般家庭の最大約1万3千世帯分に上るそうです。
Q ほかの汚染水対策は進んでいますか。
A 汚染される前の地下水をくみ上げ、海に放出する「地下水バイパス」の運用も5月に始まりましたが、効果はまだ分かりません。汚染水を浄化する「多核種除去設備(ALPS)」もトラブルが続いています。
Q 現時点の汚染水の量は。
A 1〜4号機の建屋地下にある汚染水は、3日時点で約7万2千トン。これまでに処理した汚染水の総量は48万トンに達しています。
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