[2014_04_12_04]社説 エネルギー計画 これは計画に値しない(毎日新聞2014年4月12日)
 

社説 エネルギー計画 これは計画に値しない

 政府が、エネルギー基本計画を閣議決定した。中長期的なエネルギー政策の指針となるべきものだ。
 しかし、与党の議論を経ても原発など電源別比率の数値目標は盛り込まれず、将来像はぼやけたままだ。これではとても指針にはなるまい。
 原発の危険、燃料費の高騰や停電のおそれなどエネルギーを巡る国民の不安は大きい。それを解消していくためには、政府が計画の肉付けを急ぐ必要がある。
 今回の計画は、福島の原発事故を契機に策定作業が始まった。原発依存を強めることにしていた2010年策定の前計画を見直すのが主眼だったはずだ。
 ところが出来上がった計画は、原発依存度低減を目標に掲げてはいるものの、原発再稼働には積極的だ。将来にわたって一定規模の原発を確保する方針も示し、新増設に道を開いた。使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルは事実上行き詰まっているが、使用済み燃料の最終処分について具体策がないため、これまで通り推進する。
 要するに、民主党政権が12年に決めた原発ゼロを目指す方針を転換し、原発に依存してきた従来の政策をほとんど追認したということだ。こうした計画の本質的な部分は1カ月半に及んだ与党の協議を経ても、まったく変わらなかった。
 与党協議の最大の焦点は再生可能エネルギーの扱いだった。30年に再生エネの比率を30%にすると公約している公明党が、数値目標を入れるよう主張した。それに対し、再生エネだけに数値目標は入れられないと政府が抵抗した。
 結局、前計画で掲げた30年に約2割という目安を参考値として脚注に入れ、それを「さらに上回る水準の導入を目指す」ことで決着した。しかし、計画に必要なのはその目標や方策を具体的に示すことである。
 それができなかったのは、政府が目標とする将来像を描けていないからだ。問題先送りをレトリックでごまかすばかりでは、「計画」の名に値しない。
 与党協議ではいったん、計画の意義を述べる冒頭部分から、福島の事故に関する反省を表現した文章が削除された。一部議員の反発もあり最終的にはほぼ元に戻ったが、政府・与党内では原発の「安全神話」が復活したかのようだ。
 「安全神話」は崩壊したと改めて肝に銘じなければならない。原発依存からは、できるだけ早く脱却すべきなのだ。それには社会的なコストもかかる。政府は国民の理解を得ながらエネルギー政策の具体化を急ぎ、原発に依存しない社会への道筋を示していくべきだ。

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