[2014_02_27_04][エネ計画政府案] 公約違反ではないのか南日本新聞社説(南日本新聞2014年2月27日)
 

[エネ計画政府案] 公約違反ではないのか

 政府は中長期的なエネルギー政策の指針となる新たなエネルギー基本計画案を決定した。原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、原発再稼働を進める方針を示した。
 昨年末の当初案では、原発を「基盤となる重要なベース電源」と表現していた。だが、与党内から「原発推進を強調し過ぎている」と異論が出たため、表現を弱めて修正したという。分かりづらい修正だ。
 ベースロード電源とは常時一定量発電し続ける電源のことで、要するに原発を使い続けるという基本的な方向性は変えていない。
 原発輸出と再稼働を成長戦略の中に位置づける安倍政権の政策を反映した内容といえるだろう。
 東京電力福島第1原発事故を受けて民主党政権が掲げた「2030年代原発ゼロ」の目標を否定し、事故前へ回帰する姿勢が鮮明である。
 12年の衆院選で自民党は「原子力に依存しない社会の確立」を公約した。公明党の公約も「すみやかな原発ゼロを目指す」だった。
 原発重視を強調したエネルギー政策への転換は、公約違反ではないのか。
 政府案は原発依存度を可能な限り低減させるとする一方で、「確保していく原発の規模を見極める」としている。原発の新増設に道を残したとも受け取れる。
 原子力規制委員会の審査を通過した原発に関しては「規制委の判断を尊重し再稼働を進める」と明記した。さらに「国も前面に立って立地自治体の理解と協力を得る」と積極的だ。
 再生可能エネルギーについては、13年から3年程度「導入を最大限加速し、その後も積極的に推進していく」と強調した。しかし、原発や火力、再生可能エネルギーなど電源構成の数値目標は盛り込まず、具体的なエネルギーの将来像は示されていない。
 当初は1月中に閣議決定する予定だった。大幅にずれ込んだのは、2月の東京都知事選で原発問題が争点化するのを避ける思惑があったからだ。選挙前は主張を隠し、選挙が終わってから原発推進の本音を見せるようなやり方では国民の理解は得られまい。
 自民党の調査会と関係部会の合同会議では、政府案を評価する声の一方で「原発は過渡的なエネルギーであるという位置づけを明確にすべきだ」などの批判が噴出した。
 政府は今後、与党との協議を経て3月中の閣議決定を目指す。民意に沿ったエネルギー政策となるよう説明を尽くしてもらいたい。

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