[2014_02_25_02]「膨潤」支持する意見も 東北電東通原発・規制委評価会合 活断層可能性は全員指摘 「科学的議論が必要」東北電(東奥日報2014年2月25日)
 
 東北電力東通原発の敷地内断層に関する24日の原子力規制委員会評価会合で、同社が地層のずれやたわみの要因と主張する「膨潤」をめぐり、有識者の間で見解が分かれた。「根拠に乏しい」との否定的な見方の一方、「膨潤の可能性は高い」と同社を支持する意見も出た。ただ、膨潤だけで敷地全体を説明できるとした有識者はなく、意見を述べた4人とも活断層の可能性を指摘した。議論は今後も続き、原子力規制庁は本年度内に結論を出すのは難しいとの見通しを示した。
 「膨潤」は、もろくなった岩盤が水を吸って膨らむ現象。東北電力は膨潤や風化などで岩盤の体積が膨張し、周辺の地層を変形させたと分析している。
 都内で開かれた評価会合で、佐藤比呂志・東京大地震研究所教授は「膨潤のプロセスが検証できるようなデータを示してほしい。きちんと説明されたとは思えない」と疑問を呈した。熊木洋太・専修大教授も「(断層活動を含めた)可能性をよく考えてはしい」と述べた。
 これに対し、金田平太郎・千葉大大学院准教授は「変状(地層のずれやたわみ)の成因は活断層とは思えない。膨潤が関わっている可能性が高い」と指摘。前回までの主張よりも東北電力に近い見解を示した。ただ、敷地を南北に走る断層「Fー9」については周辺の地形変化が大きく、活断層の可能性を考慮する必要がある−とした。
 会合の最後に、粟田泰夫。産業技術総合研究所上級主任研究員は「(地形変動の要因として)膨潤が半分くらいあり、活断層の可能性はそれより少ないと思うが、無視できるほど小さくはない。安全側に立って判断する場合、東北電力のデータのまとめ方では不十分だ」と述べ、より詳細なデータの提示を求めた。
 島崎邦彦・原子力規制委員会委員長代理は今回、個人の見解を示さなかった。次回の評価会合は、議論のポイントをまとめた上で開く。  (古川靖隆)

 「科学的議論が必要」東北電

 東北電力の安倍宣昭副社長らは24日、東通原発の敷地内断層の評価会合終了後に都内会場で会見した。同社が地層のずれ、たわみの成因だと主張する「膨潤説」に一部支持があった一方で、活断層の指摘もあり、安倍氏は「地質学の観点でいろいろな角度から調査データをしっかりと検証し、科学的・学術的な議論をもっと深めていく必要がある」と述べ、議論を継続する中で理解を求めていく姿勢を示した。
 同社は1月に東通原発の基準地震動(耐震設計の目安となる地震の揺れ)の引き上げを表明。安倍氏は活断層の存在を想定した、さらなる引き上げについて「まだ評価会合で断層の活動性評価の議論が尽くされていない」と否定した。
 再稼働の前提となる原子力規制委員会の安全審査の申請時期は「準備ができ次第、申請するという基本的な方針は変わらない」として、評価会合と並行して申請準備を進める方針。
   (阿部泰起)

 有識者会合メンバーの主な見解
 
○栗田泰夫・産業技術総合研究所上級主任研究員
 【前回までの主張】活断層の可能性を否定するのは困難
 →【今回】膨潤は半分くらいあり、活断層の可能性はそれより少ないと思うが、無視できるほど小さくはない。東北電力のデータのまとめ方は不十分

○金田平太郎・千葉大大学院准教授
 【前回までの主張】膨潤もあり得るが、それだけでは説明できない
 →【今回】地層のずれやたわみは膨潤が関連している可能性が高い。「F−9断層」だけ は活断層の可能性が残る

○熊木洋太・専修大教授
 地表付近と地下深くの現象が単純につながっているわけではない。断層活動がなかったと自信を持って言えず、いろいろな可能性を考えるべき

○佐藤比呂志・東京大地震研究所教授
 膨潤は具体的な根拠が乏しい。断層が集中し、広域的な力がかかっていると見る方が自然。敷地内に活断層があると解釈している
※島崎邦彦・原子力規制委員会委員長代理は個人の見解を明らかにしなかった
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