[2013_01_14_01]規制委 原発新基準 敷地内断層の扱い 明文化めぐり攻防 (東奥日報2013年1月14日)
 原発の新たな安全基準で敷地内の断層をどう扱うか。原子力規制委員会(田中俊一委員長)は「原子炉などを活断層の直上に設置してはならない」と明文化したい意向だが、一部の専門家は「断層のずれの量を予測し、影響がなければ設置を認めるべきだ」と反対する。新基準は東京電力福島第1原発事故を受けた安全規制見直しの目玉の一つで、7月に施工予定。地震や津波対策の厳格な規定が盛り込まれるか。骨子案は1月中にまとめる見通しだ。

 地震や津波関係の基準は、地震学者の島崎邦彦委員長代理(東京大名誉教授)と外部の専門家による検討会が担当している。
 原発で考慮する活断層は、地震を起こす主断層のほか、主断層に付随して地盤をずらす副断層などを含む。従来は主断層以外を重視していなかったが、原子炉建屋の直下で断層がずれると建屋が傾いたり、重要設備が損傷したりする恐れがある。規制委の調査団は日本原子力発電敦賀原発(福井県)を調査し、原子炉直下に活断層の疑いがあると指摘した。

  ◆‥‥‥◆・‥‥・◆

 国は活断層直上の設置を認めていないが、根拠は「安全審査の手引き」にある「活断層の直上に重要な建物、構築物を設置することは想定していない」との記述。規制委側は検討会で、新基準でより明文化するよう提案した。
 だが電力中央研究訴出身の谷和夫・防災科学技術研究所研究員は「(断層が)施設にどう影響するのかきちんと計算して、アウトかどうか審査しましょう」と反対。ゼネコン勤務経験もある高田毅士東京大教授も「物造りは工学的判断だ」と同調した。直下でも、ずれが小さいと予測できる副断層は「おとがめなし」とする考え方だ。
 これに島崎氏は「ずれの量はあらかじめ想定できない」としたが、谷氏は「かなり主観的なご判断だ」と強く反発した。
 島崎氏は重ねて「活断層上に重要施設は設置しないほうがいい。非常に致命的な問題だ」と強調。活断層が専門の鈴木康弘名古屋大教授も「直上に原子炉がある場合、何が起きるか予測するのは無理だ」と指摘し、日本建築学会長を務める和田章・東京工業大名誉教授は「断層の上に(原子炉を)わざわざ造る必要はない」と一喝した。

  ◆‥・‥・◆‥‥‥◆

 津波対策では、原発の敷地の高さを一律に規定するかがポイント。島崎氏や鈴木氏らは、福島事故を教訓として「原発敷地の高さは海抜20メートル以上」などと一律に規定するよう求めている。
 これに対し、釜江克宏京都大教授(耐震工学)は「地域性も含めて考慮すべきだ」と話し、谷氏も「20メートルという数字を見ると、ちょっとぎょっとする」と条件の厳しさに難色を示す。防潮堤の研究に取り組む平石哲也京都大教授は、敷地の高さだけでなく防潮堤による浸水対策も認めるよう主張。新基準に盛り込まれるかは微妙な情勢となっている。
 新基準は地震や津波関係のほか、福島事故のような「過酷事故」への備えも充実させる。
KEY_WORD:OOI_:TSURUGA_:TSUNAMI_: