[2012_10_06_05]2030 あおもりの未来 原発依存から自立へ 大間原発工事再開 函館市、訴訟で対抗 市民団体「悔しい」「不安」(東奥日報2012年10月6日)
 
 「工事が本格化する時期に、市が原告となり建設差し止めの訴訟を起こしたい」。電源開発(Jパワー)が大間原発の工事を再開した1日、函館市の工藤寿樹市長は会見で、来春にも法的措置で対抗する姿勢を強調した。
 これより3日前の9月28日、同原発の建設再開方針が判明したのを受け、工藤市長はJパワーと国を相手取って函館地裁に訴訟を起こしている同市の市民団体「大間原発訴訟の会」の弁護団と初めて市役所で面会し、訴訟について相談した。自治体が原発差し止め訴訟を起こすのは前例がないが、弁護団は可能との見解を示したという。
 工藤市長は昨年4月、東日本大震災直後の市長選で現職を破り初当選、公約の一つが「大間原発の無期限凍結」だった。同市は大間原発から最短で23キロしか離れていない。双方を隔てるのは津軽海峡だけで、事故が起こった場合、遮へい物がないため直接被害を受ける1というのが市の言い分だ。国は福島第1原発事故を受け、防災対策の重点地域を原発から約30キロ圏の「緊急防護措置区域(UPZ)」に拡大する方針。市は30キロ圏内の自治体の同意がなければ大間原発の建設を再開させるべきではない、と主張してきた。
 市と歩調を合わせるように同市議会が9月25日、大間原発建設凍結を断固求める−とする決議案を可決した。
 「大間と函館は昔から交流が深い。私は大間のことを函館市大間町と思っている。だが、原発の問題は別だ」。能登谷公市議会議長は議会応接室で本紙取材に語った。大間原発立地に伴う漁業や農業の風評被害を懸念する一方、市に対してJパワー幹部から直接の説明がない−と不信感をあらわにした。
 9月28日、大間原発訴訟の会の竹田とし子代表は工事再開方針の一報を受け、函館地裁での第7回口頭弁論直前の会員団結式で「本当に悔しい」と訴えた。一行はデモ行進して裁判所に向かった。
 会員で小学生の子ども2人を持つ同市の主婦ヴァランス紀子さんは「福島の人は大変な生活を強いられている。自分の身に同じようなことが起きたら一体どうすればいいのか」。8月に原告団に加わった弘前市の団体職員三浦協子さん(47)は「大間原発が隣の人(道南住民)に迷惑を掛けており、申し訳なく思う」と話す。
 同会は2010年7月、原告約170人で建設差し止めを求める訴訟を起こした。11年12月には208人が同様の内容で第2次訴訟。今年12月には200人以上で第3次の訴訟をする予定だ。
 「枝野幸男経産相が青森で建設再開を容認する発言をして以降、逆に原告になりたいという市民が増えている」。同会の大場一雄事務局長は話す。ただ、会員から「デモやチラシまきをしても市民の反応が鈍いと感じる」との指摘も上がっている。
 一方、大間町民は函館の動きをどう見ているか。買い物などでよくフェリーを使うという30代主婦は「原発反対だが、原発関係の仕事をしている友人も多いので自ら声は上げられない。その分、北海道の人たちに頑張ってほしい」と託す。傳法清孝・町商工会長は「注視しているが、それほど気にしていない」と表向きは平静を保つ。
 その傳法会長は28日、函館地裁を初めて訪れ、訴訟の会会員の様子を遠巻きに見ていた。
 (月舘憤司)

 緊急防護措置区域(UPZ)

 屋内退避やヨウ素別の準備など、原子力防災対策を重点的に充実すべき取囲。現在は原発から半径8〜10キロを重点区域盲PZ)としているが、福島第1原発事故で放射性物質の影響が広範囲に及んだことを受け、旧原子力安全委貝会が30キロ圏に拡大する考えを示した。9月に発足した原子力規制委員会が10月末までに原子力災害対策指針を定めて、取囲を正式に示す。大間原発の場合、10キロの対象地域は大間、風間浦、佐井の3町村の約9600人だが、30キロ圏に拡大されると、函館市やむつ市が加わり、約3万1800人が対象となる。このうち函館市は1万200人余。
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