[2012_02_17_01]3.11大震災 青森考 フクシマの教訓 第6部 断層問題6 「常識」どこまで通用 安全性の担保、道のり遠く (東奥日報2012年2月17日)
 
 東日本大震災の発生以降、日本付近の地殻が不安定さを増し、今も連日のように大地が揺れている。本県では今後、どのような地震が起き得るのか。
 県が1963年に策定した「県地域防災計画地震編」(一部改訂)は、本県を襲う地震として(1)太平洋側海溝型地震(2)日本海側海溝型地震(3)内陸型地震ーの3種類を想定する。原子力施設が集中立地する下北半島では、太平洋側海溝型地震で震度4〜5クラス、日本海側海溝型地震で震度3〜4クラスの揺れを観測すると予測。内陸型地震については、五所川原市から平川市にかけて走る「津軽山地西縁断層帯」の活動を想定し、断層の真上では揺れが震度7に達する一方、下北半島では最大で震度3程度に収まると予測している。
 同計画は津軽山地西縁断層帯を構成する二つの断層をはじめ、計五つの断層を主な活断層と位置付けている。県は外部有識者の指導と助言を得て、95年度から4年間にわたり、独白に各断層を調査。入内断層(青森市)は比較的活動性が高いものの、全般的には活動性が低いと評価した。

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 だが、2008年に活断層と認定された横浜断層では、県は独白の調査を行っていない。原子力防災の観点から、各断層の活動性を独自に検証した形跡もない。県原子力安全対策課の工藤英嗣課長は「原子炉と一緒で、断層は中を見て確認できない。専門家が集まる国の審議会の結論を信じるしかない」と、県としての対応に限界があることを認める。
 弘前大学理工学部の小菅正裕准教授(地震学)は「これまでの経験から(太平洋沖の)大地震の震源域近くでは、大きな余震が起きた例がある。本県太平洋沖の地震の発生確率は高まっていると見た方がよい」と語る。
 一方、内陸の活断層については「東北地方はもともと、活断層の存在と日々の地震活動がほとんど対応していない。震災以降、本県付近でも内陸の地震は多く発生したが、大半は人が感じない程度」と指摘。震災をもたらした東北太平洋沖地震が、直下型地震を起こす断層活動の引き金になる可能性は「分からない」とする。
 ただ、福島県南部から茨城県北部にかけてなど、震災以降の地震に伴い、地表に断層が現れた例も確認された。国は昨年6月、各原子力事業者に、耐震設計上考慮する必要がないとしてきた断層などについても、地震の影響がないか調査を指示した。東通原発を抱える東北電力は、下北断層など八つの断層や変位地形を調べた結果、活動性はないと判断。六ヶ所再処理工場など核燃料サイクル施設を運営する日本原燃も10カ所の断層を再検討した結果、「新たな知見を加えても、これまでの評価が有効であることに変更はない」と活動性を否定した。

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 「3・11」以降、本県一円の地震活動は岩手県以南に比べて、11年4月の最大余震を除けば、比較的穏やかに推移してきた。だが、震災は、日本一帯の地震活動について、まだまだ未知の事柄が多い事実を浮き彫りにした。しかも、一連の大地震によって、地球科学に関するこれまでの「常識」がどこまで通用するのか、不透明な時代を迎えている。
 原子力施設の安全性をめぐり、国や審査体制への信頼そのものが揺らぐ中、最終的に誰がどう、いつまで、地震に対する施設の安全性を担保できるのか。県民が安心できる材料がそろったとは言い難い状況にあることは否めない。(本紙取材班)
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