[2012_01_15_02]原子力発電所の全交流電源喪失規制はなぜ遅れたか 大津波の可能性の知見がなぜ福島第一発電所に活かせなかったか I.教訓とすべき事象 元日本原子力研究所 宮坂靖彦(ATOMS 日本原子力学会誌 2012.12012年1月15日)
 
参照元
原子力発電所の全交流電源喪失規制はなぜ遅れたか 大津波の可能性の知見がなぜ福島第一発電所に活かせなかったか I.教訓とすべき事象 元日本原子力研究所 宮坂靖彦

(前略)
I.教訓とすべき事象
 フランスのルブレイエ発電所(Le Blayais : PWR 型,90万 kWe×4基)では,1999年12月27日午後7時30分,225kV 外部電源を喪失して4基の原子炉が停止した。2号機及び4号機では,400 kV 電源ラインも喪失したが,この間,非常用ディーゼルにより電源が供給された。しかし,1号機及び2号機では,高潮を伴う暴風雨でジロンド河が増水して設計防水堤水位5mを大きく超え,浸水し,ポンプや配電設備などが水につかり安全系喪失事故事象を起こし,冷却システムが停止して発電所内緊急事態に陥った。この事象発生後,幸い,蒸気発生器によって炉心冷却することができたこと,基本サービス給水系(ESWS)が12月30日午後に回復し,さらに温帯停止状態に置いてあった4号機が30日未明に再起動に成功して,電源が確保され緊急事態を脱出している。なお,3号機は,燃料交換の終了直後で,準備を終え,再起動を試みたがトラブルで運転できなかった。
 また,マドラス原子力発電所2号機(PHWR 型,20万kWe)では,2004年12月26日のスマトラ島沖地震(M 9.1)による津波がインドに到達し,ポンプ室の必須プロセスポンプのモータが水没して原子炉が停止した外部溢水事象を起こしている。
 これらの情報は,どれだけ真剣に調査・検討されたか,学会誌,報告書等を調べても極めて少なく,疑問である。実証試験できない事象だけに実プラントでの前兆SBO事象を学ぶことは,現場技術者にとって極めて重要である。また,規制当局及び事業者には本当に重要な情報であると見抜く能力・対応力が求められる。
(後略)

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