[2011_12_28_01]若狭湾に大津波「過去なし」結論 電力会社に「性急」批判(中日新聞2011年12月28日)
 原発14基が立ち並ぶ福井県・若狭湾岸で津波の議論が活発化している。発端は、電力会社側が「過去にない」と主張してきた大津波が、複数の歴史書の記述から見つかったことだ。電力会社側はあくまで過去の大津波を否定するが、27日に都内で開かれた経済産業省原子力安全・保安院主催の意見聴取会では、専門家から疑問の声が相次いだ。(中崎裕)

 「選ばれた調査地点は、陸地が防波堤になっていて、津波が届きにくい場所ではないか」。聴取会で、保安院の説明が終わると」山本博文・福井大教授が口火を切った。
 東日本大震災後、あらためて耳目が集まった戦国時代の宣教師ルイス・フロイスの「日本史」にはこう書かれている。「大量の家屋と男女の人々を連れ去り、その他は塩水の泡だらけとなって、いっさいのものが海にのみこまれてしまった」
 天正大地震(1586年)で若狭湾沿岸が大津波に襲われたとの記述を受け、保安院は関西電力と日本原子力発電、日本原子力研究開発機構に再調査を指示。三社は今月21日、久々子湖(福井県美浜町)などで湖底の掘削調査を実施し、「大した津波はなかった」と方向づけた。
 しかし、この日の会合では、山本教授のほか、産業技術総合研究所の岡村行信活断層・地震研究センター長も「津波堆積物は必ず残るとは限らず、堆積物がなかったから津波がなかったとは断じられない」と話し、電力会社側の結論は性急すぎると指摘した。
 大津波が若狭湾を襲う危険性を訴えてきた石橋克彦神戸大名誉教授は「大津波がこないとは言えない。簡単に『ないです』というのは問題だ」と述べ、事業継続を優先して、津波や震災を過小評価しがちな電力会社の体質を批判する。島根原発(松江市)では、中国電力が、活断層があるとの研究者の説を否定した場所で、実際に活断層が見つかった例もある。
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