[2011_10_16_03]日向灘M7超必ず 巨大津波「危険な地域」 震災強い都市計画を 国土地理院・地震予知連絡会 島崎邦彦会長に聞く(宮崎日日新聞2011年10月16日)
 東日本大震災を受けて、地震の巣・日向灘を抱える本県は、国や全国の自治体同様、地震の想定の見直しを急いでいる。国土地理院の地震予知連絡会の島崎邦彦会長(東京大名誉教授)に、巨大地震が起きる可能性や避難時に取るべき対策などを尋ねた。(報道部・斉藤僚一) −マグニチュード〔M)7を超える地震が日向灘でも起こると指摘されている。
 島崎 日向灘では1662〔寛文2)年に南部で外所地震、1968(昭和43)年に北部で大きな地震があった。
 同規模の地震が何度も繰り返されているわけではないが、30年以内に10%の確率でM7・6前後の地震が起こるとされている。広い場所のどこであるかは、情報が少なくよく分かっていない。
 −規模の大きな日向灘地震は必ず起こると考えなければならない。
 島崎 もちろんそうだ。繰り返しの間隔が400年なのか500年なのか分かっていないが、過去に地震のあった場所では必ず起こる。
 −東海・東南海・南海の3連動に日向灘を加えた4連動地震の可能性が指摘されている。しかし、日向灘地震の震源域は、駿河湾沖からつながる海溝の「南海トラフ」が南西へ折れ曲がった部分にあるため、発生しにくいのでは。
 島崎 理屈上は確かにそうだ。ただ、海側のプレート(岩板)はずっと陸側に沈み込み続けていて、ある地点だけ止まっているわけではない。動きづらいというだけで、(周りのぺースに合わせようと)最後に大きく動くことも考えられる。その場合は津波も巨大になるだろう。逆に「危険な地域」と考えることもできる。厄介だ。
 −南西諸島までの運動を指摘する専門家もいる。
 島崎 現在の観測状況では海溝付近のプレートの動きがよく分かっておらず、否定する証拠はない。地上に設置した衛星利用測位システム(GPS)で確認すると、宮崎は海のプレートが沈み込む影響で陸が西へ押された格好をしている。一方、鹿児島から南西諸島、沖縄までの海域はそうではない。鹿児島では、陸に近い海域では大地震が起こらないはずだ。
 −日本ではM9級の巨大地震は発生しないと想定してきた。反省点ではないか。
 島崎 それは事案で、改めなければいけない。プレートの動きについて、専門家の知識が足りなかった。チリやスマトラ島沖などで発生したM9超の巨大地震は「プレートが若く、動きが速い場所で発生する」と信じられてきた。
 ところが、大震災でいずれも間違いだと分かった。
 −地震学者は何も分かっていなかった、ということか。
 島崎 その通り。昔のデータを引っ張り出して議論していただけだった。経験のないことを物理的な法則から予測するのは非常に難しい。だから、過去の地震を照らし合わせて考えてきた経緯がある。
 一「人命を守る」という意味では、地震を予知できるようになるのが最も近道だ。
 島崎 前兆現象を捉えるだけではいけないと、地震が繰り返される中で物事の変化を観測してきたが、不十分だった。海溝の観測を続け、これから海と陸のプレートのひずみの状況をキャッチすることが肝要。5〜15年で、今まで見逃していた海溝での大きく滑る場所を特定できると考えている。ただ、いつ起こると予知するのは難しい。
 −では、巨大地震にどう備えればいいか。
 島崎 まずは住宅の耐震化。家具の転倒防止も手だてをしてほしい。津波からは逃げることに尽きる。その際、車での避難は問題が多い。海岸付近では液状化が起こるからだ。大震災でも橋の近くに段差が生じて通行できなかった地域があった。家屋倒壊など悪条件が重なれば、さらに渋滞が起こりやすくなる。行政には「地震に強い町づくり」の都市計画が求められている。(東京都千代田区・地震予知連絡会会長室で)
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