[2011_08_18_02]全国の原発の運転、停止、建設状況(コンフォートあづみ野2011年8月18日)
 
参照元
全国の原発の運転、停止、建設状況

掲載日2011年8月18日                    斉藤 清

 信濃毎日新聞の2011年7月10日の記事に、「全国の原発の運転、建設中などの状況という、分かりやすい資料があったので、それをこのHPに引用して掲載しておく。今後の原発関係の記事をこのHPにアップする時、対象原発の場所を確認するのに便利だからである


全国の原発の運転、停止、建設状況(信濃毎日新聞2011年7月10日号より引用)


 電力会社と日本原子力発電が保有する原発は、合計54基。
 その内7月10日現在稼働中の原発は、北海道電力=2基、東北電力=0基、東京電力=4基、中部電力=0基、関西電力=7基、北陸電力=0基、中国電力=1基、四国電力=2基、九州電力=3基、沖縄電力=無し、日本原電=0基、合計=19基。この内、関西電力の大飯4号機と高浜4号機は、7月中に定期検査に入ったはずだから、稼働中の原発は17基になった。
 東日本大震災で自動停止又は事故で停止中原発=14基、定検検査中またはトラブルで停止中原発=23基。合計停止中原発=37基。(上記のマップに対して、2011年定期検査に入る関西電力の2基の原発を定期検査中に追加し、稼働中から削除した。)
 その他、建設中=3基、計画中(中止含む)=11基。

 この資料を見ると、東京電力だけが、その需要地である関東圏に1基も原発を建設していないのである。ただ日本原電が茨城県東海村に1基持っていて、東京電力と東北電力に売電している。
 東京電力のように他電力(東京電力の場合、すべての原発は東北電力の管内にある)の送電系統からも外部電源を受電している場合、外部電源の送電線は他電力が運用している事が多いため、東京電力が緊急に外部電源の系統切り替えなどが必要になった場合、他電力にお願いしなければならず、対応に遅れが出かねないのも心配である。

 福島第一原発では、地震ですべての外部電源は喪失してしまい、バックアップの非常用ジーゼル発電機も全て津波で動かなくなったので、被害が拡大したが、茨城県東海村にある日本原電の東海第二原発でも、すべての外部電源が一時喪失して、非常用ジーゼル発電機が3台中2台が動いたので、福島第一原発のような大きな被害にならなかった。

 そもそも外部電源がこんなに脆弱で信頼性の無いものであって良いはずが無い。大学電気科同期の西脇君からもご指摘があったが、外部電源は複数の信頼性の高い変電所と送電線から受電しているが、これらの変電所や送電線の地震での被害状況は、政府機関も電力会社もマスコミも全く報道していないのは何故だろうか?これも公開するべきである。これらの変電所や送電線が被災していれば、たとえ原発が被災しなくても電力を送ることが出来ないのである。原子炉は緊急停止(スクラム)しなければならないのである。非常用ジーゼル発電機は、あくまでもバックアップが本来の目的である。非常用ジーゼル発電機が津波で被災したことを強調して、本来動作すべき外部電源のトラブルを隠ぺいしているのではないかと勘ぐってしまうのである。

 原発が本当に絶対に安全であるなら、なぜ関東圏や東京湾内に建設しないのだろうか?これはトラブル発生の場合、少量の汚染水を日本海や太平洋に流すことも想定しているかもしれなこと、また放射能を帯びた塵(微粒子)を、トラブル発生時、排気筒から微量出すからだと思わざるを得ない。また人工密集地を避けているのも同じ理由ではなかろうか?但し、別途指摘したが、日本原電の東海第二原発は、茨城県の人口密集地に建っている。

 菅内閣は、7月に入ってから、原発の信頼性確保のため、ストレステスト(耐性評価)を新たに導入し、事故や定期検査で停止中の原発を再稼働する場合、ストレステストを実施するよう指示を出した。
 ストレステストは、実機で試験を行うのではなく、解析で模擬試験を行うものである。このテストには、一基当り中間報告で2〜3ヶ月、最終報告まで半年程度かかるらしい。

 筆者の手元に、インターネットから入手した「福島第一原子力発電所3号機の耐震安全性について」という平成22年5月に東京電力が作成した約100頁ほどの資料があるが、耐震解析モデルも建設当時の40年以上前に使われた原子炉建屋と原子炉本体の南北方向、東西方向、上下方向の1次元の簡易モデルであり、これに新たに想定される地震波を入力して、その応答計算をして安全率が十分あるという結論になっている。各種配管系は、簡易モーダル解析であり、複雑な3次元配管の有限要素法などによる詳細解析は行われていない。

(図は省略)

 最後の「9.まとめ」には次のように書かれている。

 「中越沖地震において柏崎刈羽原子力発電所で観測された地震波データ用いた概略評価の結果、並びに基準地震動Ssを用いて評価した結果、福島第一原子力発電所3号機の原子炉を「止める」、「冷やす」、放射性物質を「閉じ込める」に係わる安全上重要な機能を有する主要な施設については、耐震安全性が確保されていることを確認した。」

 現在の解析技術は建設当時と較べると格段に進歩しており、解析精度も高くなっている。原子炉建屋とその中の構造物(格納容器、圧力容器など)だけでなく、タービン建屋の解析モデルも含めた詳細な3次元の解析モデルを作って再計算するべきと思うが、官庁に提出してお墨付きをもらうためだけに作成した資料としか思えない代物であった。内容を見てがっかりしてしまった。

 今回のストレステストでも、これと似たレベルの解析(テスト)では、全く意味が無いと思った。現に福島第一原発は、津波の襲来前に地震で重要部が破損している可能性が高いので、昨年作成された耐震安全性の解析結果は、見事に外れてしまい、無意味だったことが証明されているのである。特に各種の機器間を繋いでいる蒸気や冷却水の流れる配管や、制御用電線の保護配管の耐震性の解析は、ほとんど行われていないに等しい資料だった。タービン建屋と原子炉建屋の基礎上のロッキング振動の固有振動数は異なるはずであるから、地震の経過時刻と共に両者の揺れ方にずれが生じはじめ、反対位相で揺れ始めることもあるのである。その時、両者の配管などの相対変位による応力は許容値内に入っているのか、解析結果には全く記載されていなかった。

 今回実施されるストレステストでは、最新の解析手法を用いて、細部の配管まで含めた耐震解析を行う必要がある。それをチェックする「原子力安全保安院?」は、そこを見逃さずに厳密にチェックしていただきたい。

 原発が立地する自治体の多くは、ストレステストの結果を見極めるまで、停止中の原発の再稼働には同意しないとみられる。佐賀県の知事は、九州電力の玄海原発2,3号機の再稼働を7月中旬に判断するといっていたが、このストレステストの導入により、その判断を見送った。これは年内の再稼働は事実上無いということであると思う。

 8月16日のTVニュースによると、北海道電力の調整運転中の泊原発3号機に対して、北海道知事はストレステストを省いて再稼働を許可する意向を表明したとのこと。今年3月の初めから調整運転と称して実際に発電・送電中であり、最近、政府から再稼働しても支障が無いとの連絡があったからだそうだ。泊原発3号機も来年3月以降、13ヶ月以内の法定の定期検査に入るので、その時、ストレステストをやるつもりらしい。泊原発3号機は、当初から発電電力にカウントしているため、これで北海道電力の電力供給に余力が出来たことにはならない。それにしても定期検査完了前に調整運転が数ヶ月も続くとは、車検中の車を路上で運転する行為と同じではないか。このようなことが認められて良いものなのだろうか?原子力安全保安院は、いったい調整運転をどう考えているのだろうか??調整運転中の泊原発3号機を一旦停止すると、再稼働の手続きが大変になり、再稼働時期が大幅に遅れることを心配して、原子力安全保安院側から調整運転の長期間実施を要請したと疑われてもしようがないと思う。

 現在稼働中の原発の定期検査入りの予定を下表に示す。合計19基になる。原子炉は最大13ヶ月毎に定期検査をするよう法律で定められている。(自動車の車検のようなものである。)定期検査期間(プラント停止期間)は一般に3〜6ヶ月であるが、新鋭機は1ヶ月で完了することもあるし、補修個所が多い稼働年数の長い原子炉の場合、1年以上掛ることもある。

(表は省略)

 ストレステストの実施や、福島原発の甚大な事故被害の影響で、定期検査入りする全ての原発が検査が終了しても再稼働できない事態も予想され、その場合は来夏には電力各社と日本原子力発電が保有する原発54基がすべて停止する可能性が大きくなった。

 現在運転停止している原発は、定期検査中や東日本大震災で被災したりした37基。(但し福島第一原発の1号基〜4号基は廃止が決定しているがカウントした。また日本原子力研究開発機構の「もんじゅ」は、負荷試験時は短時間ではあるが発電して電力会社に送電しているが、実験炉のためカウントしなかった。なお「もんじゅ」は、たび重なる事故で、運転再開の目途も立っていない。)

 筆者は長野県在住なので、中部電力から電力の供給を受けている。菅内閣から浜岡原発の3基の原発全ての停止要請を受け、中部電力は全ての原発が停止している。域内にはトヨタとその関連会社などの自動車産業や精密機器や電子機器のメーカーが多いため、今夏の電力のひっ迫に対処できるか非常に心配されたが、休止火力発電所の再開、各事業所の自家発電電力の積み増しと節電努力や操業曜日の変更と、一般家庭などの節電努力で、ピーク需要が発電設備容量の90%以内になんとか収まっている。

KEY_WORD:FUKU1_:TSUNAMI_:CHUETSUOKI_:汚染水_: