[2011_06_28_03]社説 中央防災会議 反省踏まえた抜本策を(中日新聞2011年6月28日)
 大震災の教訓の一つは、従来の防災計画が甘すぎた点だ。国の中央防災会議は、過去の巨大地震を想定外にしていたと反省した。原発事故がもたらす災害対策も、根本的に見つめ直してもらいたい。
 「869年の貞観三陸沖地震などを考慮の外においてきたことは、十分反省する必要がある」。
 同会議の専門調査会は、今後の津波対策に対する中間報告の中で、そう述べた。もっと早く気付くべきだった。なぜ「考慮の外」と扱ってきたかの検証も必要だ。
 これまでの防災基本計画の見通しがいかに甘かったかは、被害想定の数字で明らかだ。明治三陸地震タイプのケースを想定して、死者数を約2700人と見積もっていた。現実には死者・行方不明者は約23000人にのぼった。
 現行の同計画は2008年に策定されたものだ。見通しが甘ければ、それぞれの地域での対応も甘くなる。今回は津波ハザードマップの想定浸水域外でも、犠牲者が出た。中間報告では「マップが安心材料となり、被害を拡大させた」とも記述された。
 堤防などに過度に依存したハード面の対策には限界があることを認め、住民避敷などソフト面からの対策が急務とも示された。実際に津波警報が出ているにもかかわらず、避難しなかった人も多い。防災計画も住民意識も根本的に改めねばならない。
 問題なのは、原発事故という大災害に中間報告がほとんど言及していないことだ。原発のある地域について「調査分析が必要」などと記すにとどまった。取り返しのつかない原発事故を招いてしまった事態に、調査会自体が思考停止に陥っているのではないか。
 津波の従来の想定が誤っているのなら、海岸沿いにある原発の立地条件にも大きくかかわるはずだ。関係省庁に気兼ねすることなく、一刻も早く科学的見地から、全国の原発立地について見解を述べてもらいたい。
 今回は放射性物質の拡散予測システムも、当初はほとんど公表されず、住民避難に大きな課題を残した。同システムを生かして、どう避難させるのかは、防災計画の柱の一つになる。
 原発を抱えた地域では、原子炉のメルトダウン(炉心溶融)は、もはや「考慮の外」ではない。首都直下型、東海・東南海・南海の三連動…。いつ来るか分からない大地震に備えた新防災計画を早くまとめるべきだ。
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