[2011_05_11_02]経産省所管の独法 「津波で炉心損傷」想定 07年度から 「電源喪失で100%」(毎日新聞2011年5月11日)
 大津波がきっかけで起こる原発の炉心損傷を、経済産業省所管の独立行政法人「原子力安全基盤機構」が07年度から報告書の中で想定し、公表していたことが14日分かった。東京電力福島第1原発の炉心損傷事故について、国や東電は「想定外の大津波が原因と主張しているが、公的研究機関が進めていた研究成果が公表されているだけに、規定外と主張する釈明の是非が問われる。【河内敏康、日野行介】

 津波による影響を評価するよう義務付けた国の新耐震指針が06年9月に策定された。これを受け、同機構は07年度から、福島第1原発のような沸騰水型や、加圧水型といった原発のタイプごとに機器が津波を受けるケースなどを想定した解析を始めた。
 07年度の報告書は、非常用ディーゼル発電機や冷却用の海水ポンプが津波で損傷した場合、「電源喪失から炉心損傷に至る可能性がある」と指摘した。解析は年々詳細になり、09年度の報告書(昨年12月公表)では、3〜23bまで津波の高さごとに危険性を評価。津波の来襲によって、海水ポンプが損傷し、非常用ディーゼル発電機が機能を喪失。原子炉建屋内の機器の損傷や、全電源喪失などの結果、防波提(海面から高さ.13bと仮定)がない場合は7b以上、ある場合でも15b以上の津波が来た場合、ほぼ100%の確率で炉心損傷まで至ると解析した。実際の福島第1原発の原子炉建屋は、解析の想定より約3b、防波堤は約7b低い。
 さらに過去には、三陸沖を震源に広範囲に津波被害をもたらした貞観地震(869年)

 「知らなかったでは済まない」
 小林圭二・元京都大原子炉実験所講師(原子炉物理)の話 震災前にすでに大津波による炉心損傷の可能性が想定されており、知らなかったでは済まないはずだ。過去には貞観地震による大津波も発生している。あえて無視していたとも考えられ、「想定外」という東電や国の責任は重い。
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