[2011_04_28_01]3連動 津波の高さは未知 液状化 砂丘崩れる可能性 不安消えぬ「浜岡」 東海地震対策を検証(中日新聞2011年4月28日)
 9割近い確率で30年内の発生が予想される東海地震。想定震源域のほぼ真ん中にある浜岡原発(御前崎市)で、中部電力は3号機の再起動を模索する。福島第一原発の事故を受け緊急対策を進める中電だが「現状でも安全性は確保している」と想定を見直さず、対策施工中も運転を止める様子はない。本当に「想定外」は起きないのか一。

 ∇想定8メートル超

 中電が想定する浜岡原発の津波の高さは最大で8・3メートル。過去最大だった安政東海地震(1854年)の約6メートルに、活断層連動など不確定要素を加えて算出した。
 だが、津波に詳しい名古屋大の川崎浩司准教授は「これまでの想定で十分と言えるわけではない」と話す。さらに東日本大震災に匹敵する規模の東海、東南海、南海の三連動地震の想定は、国が本格的な検討を始める段階で「(三連動で)どんな波が起きるか分からない」と指摘する。
 福島第一原発では、高さ5・7メートルの想定に対し、15メートル近い津波が押し寄せ非常用を含めて電源が喪失。原子炉冷却機能が失われた結果、水素爆発などを招いたとされる。
 事故後、中電は非常用電源喪失を避けるため、発電機を建屋二階に追加。現状では原子炉を安定冷却させるほどの発電能力がなく、敷地の高台にも設置する予定だ。冷却用海水を送水するポンプの予備品も確保し、防水対策としてポンプ周囲を金属板で囲む工事を始めた。
 こうした対策を実施する中電は「新たな知見が得られれば再検討する」と想定を見直さず、3号機の運転再開を目指す。4、5号機は今も運転中で、廃炉となる1、2号機(停止中)の建屋内にほ、まだ使用済み核燃料が保管されている。
 浜岡原発の現状や今後に対し、地元自治体からは「住民が納得できる安全審査が必要」(御前崎市)などと慎重な意見が強い。

 ▼砂丘の強度

 中電が津波対策に自信を持つ根拠が、原発の海側に広がる砂丘の存在だ。高さ10〜15メートルの砂丘が「防波堤」の役割を果たし「津波に対する安全性が確保されている」(水野明久社長)という。
 さらに、想定する800ガルの揺れで砂丘の一部が崩壊しても、10・4メートルの高さは維持できるとして「想定する8メートル程度の津波が砂丘を越えることはない」と説明する。
 ただ、専門家からは疑問の声が上がる。
 名古屋工業大の喜岡渉教授(海岸工学)は「仙台空港では、空港手前の10メートルの砂丘を津波が越えた」と指摘。「浜岡でも同レベルの津波を防げるかば分からず、何度も押し寄せると、砂丘が削られる可能性がある」と不安視する。
 中電は念のため、砂丘と敷地の間に、海面からの高さ12メートル以上の防波壁を設置することを決めた。五日から地盤の強度などを調べ始めたが、喜岡教授は「砂丘の下には地下水が流れており、端は液状化しやすい。防波壁の立つ土地が液状化したり、液状化で砂丘自体が崩れたりする心配もある」と課題を口にする。
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