[2011_04_15_01]社説 震災後 地震国の原発 政策の大転換を図れ(毎日新聞2011年4月15日)
 いつ、どこで「どれはど大きな地震や津波が起きても不思議はない。
 しかも、それを予測するすべを私たちは持たない。
 日本列島の現実を改めて思い知らされる1カ月だった。
 予測不能な大地震だけでも日本が抱える大きなリスクである。その海岸沿いに54基の原発が建ち並ぶ。地震と原発の共存がいかにむずかしいか。警告は何度も発せられてきた。
 石橋克彦・神戸大名誉教授のように「原発震災」という言葉で惨事を予見してきた科学者もいる。しかし、電力会社も政府も「少数派」として退けてきた。その帰結が今、私たちが直面する東京電力福島第1原発の深刻な事故である。

 「想定外」許されぬ

 大地震がもたらした地殻のゆがみは各地に影響を与えている。今後の地震活動は、予断を許さない。
 地震国日本は原発と共存できるのか。真摯に検証した上で、早急に打つべき手を打ちながら、原発政策の大転換を図るしかない。
 まず、誰もが問題だと思うのは津波対策の不備だ。06年に改定された原発耐震指針に盛り込まれているが、扱いは非常に軽い。新指針に基づく再点検も後回しにされ、東電は点検を終えていない。
 一方で、東海第2原発のように新潟県中越沖地震の後に津波対策を一部強化していたところもある。「想定外の津波」という言葉で事故を総括することは許されない。
 事故対応にも疑問は多い。79年の米スリーマイル島原発事故をきっかけに、設計の想定を超える事態への対応として「過酷事故対策」が日本でも用意された。
 ところが、今回のようにすべての電源が失われ、原子炉が長期間にわたって冷却不能に陥った場合の具体的備えが東電にはなかった。
 事故対応には初動が何より大事だ。にもかかわらず、電源車の用意や、原子炉の換気、海水注入などに手間取った。過酷事故対策を運用する準備があったとは思えない。
 当面の課題は、全国の原発で電源確保を確実にすることだ。津波対策や耐震強化の見直しも急がねばならない。

 国の規制や監視体制も改革を迫られている。監督官庁である原子力安全・保安院が原発推進の立場にある経済産業省に属する矛盾はこれまでも指摘してきた。今回の対応にもその矛盾を感じる。原子力安全委の存在意義も問われている。完全に独立した規制機関を再構築すべきだ。
 ただし、こうした「手当て」を施して良しとするわけにはいかない。
 事故発生後、原子力安全委の班目春樹委員長は「割り切らなければ原発は設計できないが、割り切り方が正しくなかった」と述べた。安全委員長の発言として納得できないが、それに加えて疑問が浮かぶ。
 割り切り方を間違えなければ大事故は起きないのか。安全規制を厳しくし、設備や緊急時の対応策を整えれば、事足りるのかという点だ。
 これまで、電力会社も政府も、原発は安全装置を何重にも重ねた「多重防護」に守られ、安全だと強調してきた。しかし、今回の事故で多重防護のもろさがわかった。どこまで安全装置を重ねても絶対の安全はなく、過酷事故対策も事故を収拾できなかったというのが現実だ。

 依存度下げる決意を

 リスクがあるのは飛行機や列車も同じだという議論もあるだろう。しかし、原発は大事故の影響があまりに大きく、長期に及ぶ。地震国であるという日本の特性も無視できない。予測不能な地震と原発の掛け算のようなリスクを、このまま許容できるとは思えない。
 大震災の影響を考えれば、女川原発など被災した原発の再開も非常に慎重に考えざるをえない。今後の原発の新設は事実上不可能だろう。
 こうした現実を踏まえ、大災害を転機に、長期的な視点で原発からの脱却を進めたい。既存の原発を一度に廃止することは現実的ではないが、危険度に応じて閉鎖の優先順位をつけ、依存度を減らしていきたい。
 第一に考えるべきは浜岡原発だ。近い将来、必ず起きると考えられる東海地震の震源域の真上に建っている。今回、複数の震源が連動して巨大地震を起こした。東海・東南海・南海が連動して巨大地震・大津波を起こす恐れは見過ごせない。
 老朽化した原発も危険度は高い。原発の安全性の知識も地震の知識も進展している。古い原発にはその知識を反映しにくい。
 日本は電力の3割を原発に依存してきた。安定した電源として擁護論は強い。原発なくして日本の経済が成り立たないのではないかという懸念もある。
 しかし、経済と安全をてんびんにかけた結果としての原発震災を直視したい。最終的には国民の判断ではあるが、原子力による電源に頼らなくても、豊かに暮らすための知恵を絞りたい。
 そのためには、温度化対策で注目された再生可能エネルギーの促進や低エネルギー社会の実現がひとつの鍵となるはずだ。地震国日本に適した電源と、それに基づく暮らし万を、今こそ探っていく時だ。
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