| [1960_03_11_01]第34回国会 衆議院 内閣委員会 第15号 昭和35年3月11日(衆議院_内閣委員会1960年3月11日) |
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04:00 000 会議録情報 昭和三十五年三月十一日(金曜日) 午前十一時十二分開議 出席委員 委員長 福田 一君 理事 淺香 忠雄君 理事 岡崎 英城君 理事 高橋 禎一君 理事 高橋 等君 理事 前田 正男君 理事 石橋 政嗣君 理事 石山 權作君 生田 宏一君 今松 治郎君 内海 安吉君 始関 伊平君 谷川 和穗君 富田 健治君 中川 俊思君 保科善四郎君 八木 徹雄君 飛鳥田一雄君 杉山元治郎君 中原 健次君 受田 新吉君 出席国務大臣 法 務 大 臣 井野 碩哉君 国 務 大 臣 中曽根康弘君 出席政府委員 総理府事務官 (科学技術庁長 官官房長) 原田 久君 総理府事務官 (科学技術庁計 画局長) 久田 太郎君 法務事務官 (矯正局長) 渡部 善信君 外務政務次官 小林 絹治君 外務事務官 (大臣官房長) 内田 藤雄君 委員外の出席者 専 門 員 安倍 三郎君 (中略) 001 福田一 ○福田委員長 これより会議を開きます。 科学技術庁設置法の一部を改正する法律案を議題とし、前会に引き続き質疑を許します。石山權作君。 002 石山權作 ○石山委員 この前中曽根長官からいろいろ説明を聞いて、非常に文化的な方向に進んでいるというようなことを承っていささか安心をしておりますけれども、最近の空の科学というものは、すぐ何か兵器と戦争に脈々とした連絡があるというふうな実績があるわけです。特に私この前長官にも要望を申し上げたように、日本の国は、いわゆる経済的にも生活的にも非常に民度が低い。その中にずっとおおらかな空を見ているようなこの問題は、ある意味では非常にいいわけでありますけれども、われわれとしてはある意味では非常に不満を持っているわけです。そういうお金があればというような考え方を持ちます。現在科学技術庁でおやりになろうとする問題に、何かこれに対して秘密事項にわたるようなことも研究なさっているかどうか、そういう点、一つお聞きしたい。 003 中曽根康弘 ○中曽根国務大臣 秘密事項にわたるようなことは絶対いたしておりません。 004 石山權作 ○石山委員 将来ともそういうふうな傾向はないというふうな見解でしょうか。 005 中曽根康弘 ○中曽根国務大臣 その通りでございます。 006 石山權作 ○石山委員 たとえば今度開発される中に、通信関係あるいは気象でもいいと思いまするが、アメリカと一緒にやる分野はどういうものがありますか。 007 中曽根康弘 ○中曽根国務大臣 気象観測のロケットの研究にいたしましても、あるいは宇宙探査のロケットの開発にいたしましても、すべてこれは平和利用を目的としておるのでありまして、軍事的な秘密とかあるいはそのほかの秘密というものは一切ございません。ただかりに商社間でやるというような場合はパテントの問題がございますが、こういう問題は一般の国際通念による商業上の問題で、われわれとしてはこれは是認しなくてはならぬと思いますが、少なくとも国家意思でこれを秘密にして国民の目の前に隠しておくというようなことは絶対にありません。 008 石山權作 ○石山委員 たとえば電波の問題、気象の問題にしましても、シベリア風というものがだいぶ影響力があるわけです。ゴビ砂漠の場合なんかも、あそこで原子爆弾の実験があれば、ゴビ砂漠の砂がおれのところまでくるのじゃないかというふうなことを心配している日本人も相当いるというふうなこういう気象状況、私の申し上げたい点は、アメリカとはかなりによく連携あるいは共同研究というふうな面も私出てくると思います。これはやりやすいわけですね。しかしそれは南の方の関係です。いわゆる季節台風、こういうふうな場合では、アメリカの協力は非常にありがたいことだと思うのだが、一方北、シベリア風、いわゆるゴビ砂漠からくる問題、こういうものの気象、電磁層の関係は、協力を得られるのかどうか、得ようとして努力をせられるのかどうかということをお聞きしたい。 009 中曽根康弘 ○中曽根国務大臣 特に気象のような業務は、地球上全部をおおうような国際的協力のあることが好ましいのであります。現に気象上のそういう国際協定もございまして、お互いに情報を交換し合うということになって現に実施しております。日本の天候の解明の上については、偏西風、つまりシベリアや蒙古の方からくる風の究明ということが非常に重要でありまして、その方面につきましてもあとう限り協力をして参りたいというように考えております。 010 石山權作 ○石山委員 これはそういう点では外交関係だろうと思うのですけれども、ただ希望条件だけでいては、今のような日本の場合の問題は進まないと思うのです。たとえば地磁気の問題等を考えてみても、そこが欠けておればやはり研究が不可能だ。ちょっとしたところが欠けていても、ここからここまでがわかればこの中はわかるということは当然あると思いますが、この中のことがわかったらなおさら万全だということは、科学上当然想定されるわけです。これは外交上の、あるいはいわゆる軍関係、兵器関係の問題でかなり困難があるかもしれません。しかしあなたの目ざしておるのはいわゆる科学という問題です。学問上の問題だということでやれば押していける点が多分にあるのではないかと思うのですが、実際上の問題としては、ソ連との関係はどういう工合になっておるのですか。 011 中曽根康弘 ○中曽根国務大臣 気象等につきましてはWMO、つまり国際気象機構というのがありまして、ソ連もたしか入っておりまして、そういう関係を通じて密接にインフォメーションの交換をやっておると思います。これは、運輸省、気象庁の管轄でありますが、私の聞いておる範囲では、こういうことをやっておると思います。しかし学術上の平和利用を目的としたいろいろな協力関係というものは、私はイデオロギーを越えて進むべきものだと思います。われわれの希望を満たしてくれる国とは、かけ隔てなく進めて参りたいと思っております。 012 石山權作 ○石山委員 秋田の道川というところで東大の糸川博士がロケットの実験をやっておるわけです。その糸川博士が最近アメリカへ行ったようですが、これは私用ではないのでしょうね。公用だとしますれば、あなたの方からも何か調査項目なり研究項目なりを御指示なされましたか。なされたとすればその内容を御説明していただきたい。 013 中曽根康弘 ○中曽根国務大臣 平和利用を目的とする宇宙開発等につきましてお互いに研究協力を進めよう、こういうことで糸川さんや電波研次長の青野博士、それから科学技術庁の井上調査官に行ってもらいまして、向こうの専門家といろいろ具体的な研究項目についてどの程度やれるかという話し合いをしてきたわけです。まだ正式の結論はございませんが、向こうの希望とかこちらの希望という関係を非常にざっくばらんに話し合いまして、どの程度そういう協力関係を具体的に設定していくか、それから進めて参ろうと思っております。今度のは第一回のそういう予備的な話し合いというわけで、大体向こうの考え方や何かもある程度わかって参りました。五月に国際ロケット・シンポジウムが東京でありまして、アメリカからは航空宇宙局のニューウェル氏等も参りますので、そのときもまたこちらの意見その他を話しまして、研究協力関係を設定する方向へ進めたいと思います。 014 石山權作 ○石山委員 私新聞でちょっと見たら、アメリカから援助をしてもらって業績を上げたいというような面があったのですが、それはあなたのおっしゃる宇宙開発に対しての協力体制か、それとも糸川さん自身が研究なさっている小型ロケットに対しての開発の協力ですか。 015 中曽根康弘 ○中曽根国務大臣 これは宇宙開発全般、つまり国際連合で去年の暮れに総会で決議いたしまして、特別の国際委員会を二十四カ国で作ろう、そういうこととか、それから宇宙科学者会議を今年または来年やろう、その線に沿って日本とアメリカで協力し合うという範囲内のことでいろいろ相談したわけであります。これは糸川さんの個人の考えというよりも、科学技術庁の考えで気象の問題も含めて、全般的な学術的な話し合いをしてもらいに行ったのであります。 016 石山權作 ○石山委員 糸川博士の研究は小型兵器の研究なんだ、こういうことが部内の中からも出ております。今の研究段階は、たとえばそれは小型のロケットであるわけですが、今の兵器とか核の問題が考えられた場合、これを兵器に利用するだけの状態になっているかどうか。たとえばそのまま使おうとすれば使い得る状態になっているのかどうか。 017 中曽根康弘 ○中曽根国務大臣 あれは兵器からはおよそかけ離れたものでありまして、小型兵器云々というお言葉は何か間違いではないかと思います。今兵器といわれるものはいわゆるミサイルというようなもので、たとえばナイキあるいは小さいところではサイドワインダーみたいなもので、日本がかりにもし万一防衛庁あたりでやるとすれば、地対空とか空対空とか空対地とか、そういう場合の弾道弾、ミサイルを考えるのだろうと思いますが、かりにそういうものであるならばもっと細い小型のものです。糸川さんがやっているのは全長二十メートルくらいのカッパ六、七というような程度のものでありまして、あんなものは兵器としては今使えない。そのかわり八十キロとか百五十キロの宇宙へ飛び込んでいろいろな電離層やその他のデータを持ってくるものに使い得るものなのであります。 018 石山權作 ○石山委員 初めはこんな小さなものでしたが、それがだんだん大きくできるわけです。一段を二段にすることができますし、三段にすればかなりの高空、長距離まで飛べる。そういう素因が糸川さんの研究の中にあるわけです。いわゆる金の使い方、溶けない合金、新しい燃料の研究、こういうものはかなり貢献するわけです。われわれの文化には貢献するのだけれども、その貢献は即もしかりに意図があれば兵器にも使用し得るというのが、糸川研究の現在ではないかと思うのですが。 019 中曽根康弘 ○中曽根国務大臣 同じ空気でも、軍人が吸って生きている空気もあるし、われわれのような政治家の吸っている空気も同じ空気でありまして、物質は酸素、水素、窒素とか同じものでできているわけですから、結果的にはあるいは牽連があるかもしれません。これは人類生活万般そうでありまして、アメリカの空軍がとってくる台風情報は、おそらく軍事目的でやっているのでしょう。それが台風の防御に役立っているという問題、これはその人たちのやっている意図とか組織とかそれを監督する機構、そういうものによって規制さるべきものだと私は思うのです。科学技術庁がやっております範囲のものは、全部平和目的のための体制でやっておるのでありまして、その点は御心配要らないと思います。 020 石山權作 ○石山委員 管理のものの考え方が、今のあなたのおっしゃったような、いわゆる日本の文明を高めるための考え方でいくのだ、そうすれば使用条件というのはおのずから規定されるわけなんで心配がないと思いますけれども、僕らとすれば研究の目的は常にはっきりさせておかないと、非常に危険性があるということは予知できるわけですね。では研究目的をはっきりさせて指導監督をしていただく。そしてそれをいつでもみんなにわかるような格好で、研究所などを公開するくらいの気がまえがないとやはり誤解されると思うのですね。 それから運輸の関係になるかもしれませんが、たとえばこういうことが最近出てきているわけです。海運が今非常に不況だ。どうしてもこれを解決づけるためには、原子力の貨物船というものを考えなければならぬ、こう言われているのですね。こういうふうな場合の科学技術庁と運輸省の関係はどういうふうなことになっておるのですか。 021 中曽根康弘 ○中曽根国務大臣 原子力船につきましては、原子力船の心臓部は原子炉でございますから、そういう意味において原子力船のことも原子力委員会において取り扱いまして、外国に対する調査とか、わが国における基本方針等を原子力委員会においても考究しております。それで最近の情勢を見ますと、イギリスは最近三万トンくらいの大型原子力商船を作ることに踏み切ったようであります。これは下院でイギリスの担当大臣が言明をいたしました。しかしいつそれに着工するかということはまだはっきりしておりません。とにかくそういう発言をしたようであります。アメリカにおいてはサバンナという原子力船を今艤装中でありまして、ことしの秋くらいには就航するだろうと思います。日本はこの間権威者を網羅して原子力商船の調査団を派遣いたしましたが、その調査報告によりますと、いろいろ基礎的な部門を先に充実する必要がある、そういう考え方でありまして、私もその考え方に賛成であります。単に船体だけ日本で作って、外国の炉をちょっと借りてきてそこへ突っ込んで、原子力商船だという考え方ではいけない。やはり炉自体も日本で開発して、いずれは全部国産化していくという、非常に深い姿勢の研究体制を作る必要がある。私らもそう思いまして長期計画は今策定中でありますが、そういう基本方針で進んで参りたいと思います。 022 石山權作 ○石山委員 英国から原子炉を入れる場合は、これは練習炉の一つの考え方もあるかもしれませんが、かなりそこつに学者間でも大へん準備が不行き届きにもかかわらず入れている。この前も私はあなたに申し上げたのですが、政治力が先行したという言葉を私は使ったわけですが、海運に対してはいやに低姿勢ではございませんか。日本の場合は海運こそ・・貿易・為替の自由化によって熾烈な経済戦が行なわれれば、当然われわれの貿易というものが減るのです。昔のわれわれの経済を見てみると、海運によって帳じりは黒になっておったのですけれども、今度の場合はそこの経済のところを見のがして努めて低姿勢だというのは、経済的に見ればちっとも政治力は働かぬということになるじゃないですか。 023 中曽根康弘 ○中曽根国務大臣 コールダーホールの輸入がそこつであったとは私は思いません。やはり慎重審議いたしまして、日本の現在の情勢から見れば適切であったと私は思います。 海運につきましては、原子力商船というものがまだ採算ベースに合わないのです。わずかにアメリカで相当な金をかけて、原価は普通の船の三倍くらいの金をかけて実はやっておるのでありまして、アメリカは潜水艦をやっているものだから、商船の方にもすぐ適用できたわけであります。しかし日本は原子力潜水艦なんかを作る力も意思もありません。従ってやはり商業採算ベースに合うということが非常に大事でありまして、コールダーホールの場合は大体商業採算ベースに合う、そういう見当もつき、そういう計算も出ましたからやったのでありますが、船はまだそこまでいっておりません。従って政治力が働く余地がないのであります。 024 石山權作 ○石山委員 せんだってあなたに日本の原子力兵器ができるかといったら、できないとあなたはお答えになりました。それは地方新聞に出ておりましたよ。ですからあなたのしゃべることは影響がある。今商業ベースとあなたはおっしゃったのですよ。これはちゃんと守っていただきたいと思うのです。そうでないと科学ということで・・今度の予算もその通りなんです。あなたは少し取り過ぎたと私は見ているのです。科学という名前に事かりて実力以上に取り過ぎたというふうに私は見ている。おそらく使い方は粗雑になるのじゃないかと心配しているのです。お金がたくさんあるから、模型品なんかじゃんじゃん作ってしまって、こわしてしまってというようなことになりかねはしないか、こういう心配を持っているわけなんです。海運の場合は低姿勢で、商業ベースに合うまで基礎を築かれる、こういうのは私も大へんいいことだと思っております。ただあなたたちになりますと、潜水艦の方でも一つ利用してみようかというふうなことになりかねない。これは今言われたようにいわゆる商業ベースからすれば三倍も四倍もかかって、採算のとれないコストになるわけですから、そういうところまであなたの方で研究なさるまいと思いますが、海の底に沈むいわゆる原子力の利用というふうなことをお考えになっているわけですか。 025 中曽根康弘 ○中曽根国務大臣 自民党は日本を近代国家にするために非常に科学技術政策を重要視してくれまして、そのために進歩的政策をとってくれたのでありますが、それでもまだ外国から比べると足りないと私は思います。第一、科学技術者の待遇ですらも外国から比べれば非常に悪いのでございまして、大学の教授の給与だけでも、われわれはもっとよけい取らなくちゃいかぬと思っておるのであります。従いましてこの程度の予算で絶対満足しておるものでありません。 潜水艦につきましては、日本は原子力関係の兵器は持たないということをちゃんと内閣もきめておりますし、また実際実力自体がそんなことはありませんので、かりに万一やろうといってもやれるものではありません。いわんや内閣がそういう方針を持っておるのでありますから、原子力潜水艦とか原子力商船というものを作る段階ではまだ絶対ないのであります。 |
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