[2008_05_22_04]柏崎刈羽原子力発電所の耐震安全性向上の取り組み状況(東京電力2008年5月22日)
 
参照元
柏崎刈羽原子力発電所の耐震安全性向上の取り組み状況

 04:00
 平成19年(2007年)7月16日発生の新潟県中越沖地震を受け、発電所周辺の地質調査結果や地震観測データの分析結果をもとに、発電所の耐震安全性の評価に用いる基準地震動をとりまとめ、平成20年(2008年)5月22日に原子力安全.保安院に報告いたしました。
 今回とりまとめた基準地震動について、お知らせいたします。(基準地震動の詳細についてはP.7を参照)

1 中越沖地震の分析

 中越沖地震は、これまでの地震と比較して、大きな特徴がありました。それは、周辺と比べ発電所が大きく揺れたことと、1〜4号機(荒浜)側の方が、5〜7号機(大湊)側よりも大きな揺れに見舞われたことです。

○中越沖地震の概要
○発電所の概要
○中越沖地震での発電所の揺れの特徴 1〜4号機の揺れが大きい

○中越沖地震の揺れを受けても重要な設備は健全でした。
 安全上重要な設備は、一般建築吻に建築基準法で要求される3倍以上の地震力(静的地震力)に耐えるだけの耐震強度を有しています。中越沖地震の揺れは基準地震動の大きさを上回るものでしたが、揺れによってこれらの設備に加わった力は、静的地震力も考慮した設計値とほぼ同じレベルでした。設計上の余裕を各所で見込んであること等により、言嚇の健全性は保たれ、安全機能は確実に働きました。

2 地震メカニズムの解明

 当社は、発電所周辺の地質地下構造の調査を、海域・陸域とも詳細に実施しました。調査の結果、地震の揺れが、増幅されていくメカニズムカ粉かりました。

(1)発電所での揺れが大きくなった要因

要因1 地震規模から推定される揺れが通常より大きかった(約1.5倍)

 当社は、柏崎刈羽原子力発電所内の地震計を始め、新潟県各地に設置されている地震観測点で観測された地震の揺れの記録を用いて、震源に関する解析を実施しました。その結果、この震源(断層面)は、同程度の規模の地震の1.5倍程度の地震動を発生させる特徴があることが分かりました。

○中越沖地震:観測点と震源の解析結果
○地震が発生するメカニズム

要因2 深部地盤の傾きにより波が同時集中した(約2倍)

 発電所周辺では、地表から深さ4〜6kmまで通常よりも深く堆積層が広がっています。一般的に、震源から伝わった波は、堆積層の中では伝わる速度が遅くなります。今回、この厚い堆積層に先に入った波に、堅い層を高速で進んだ波が追いつく現象が起こったと考えています。このように、時間差をおいて発生した波が、発電所に同時に到達することにより、揺れが大きくなることが分かりました。この現象で2倍程度の増幅が起こると考えています。

【参考】一般的な地盤での地震波の伝わり方
【要因2:図解】柏崎刈羽原子力:堆積層が厚く傾斜しているため、後から来た波が追いつき揺れが増幅

(2)1〜4号機が5〜7号機に比べ、大きな揺れを観測した要因

要因3 敷地地盤の摺曲構造により1〜4号機側に波が集中した(約2倍)

 発電所の地下2kmくらいのところには、古い褶曲(※)構造があります。この摺曲構造の谷の部分の上に1〜4号機が、山の部分の上に5〜7号機が位置しています。谷状になっている部分では、レンズのように地震の波が集中することから、1〜4号機(荒浜)側の地震動が、さらに2倍程度強まったと考えられます。

(※)摺曲(しゅうきょく):地殻にはたらく力によって地層が波状に押し曲げられること。また、その状態。

【要因3:図解】海側から来る地震波は1〜4号機側で5〜7号機に比べ2倍に増幅

3 基準地震動のとりまとめ

(1)断層の評価
 地震の規模は、活断層の長さに関係することから、活断層の長さを慎重に評価しました。活断層によって生じる地震は、活断層が長いと規模が大きくなる傾向が分かっています。そこで、敷地周辺の活断層のうち、海域では、F-B断層については、調査結果の27kmをさらに7km分長いものとして、全長を34kmと評価しました。また、F-D断層と高田沖断層が同時に活動する場合を考えました。陸域では、角田・弥彦断層、気比ノ宮断層、片貝断層が同時に活動する場合(長岡平野西縁断層帯)を考えました。これらの活断層が発電所に及ぼす影響を評価した結果、発電所への影響が大きいものとして、F-B断層と長岡平野西縁断層帯によって生じる地震を選定しました。

(2)基準地震動
 発電所への影響が大きいものとして選定したF-B断層(海域)と長岡平野西縁断層帯(陸域)によって生じる地震の揺れを、前述の地震動増幅メカニズムを反映したうえで、2つの手法※で評価し、この評価結果に基づき、発電所の耐震安全性評価に用いる地震(=基準地震動)を設定しました。この基準地震動による解放基盤表面(注1)での揺れは、1〜4号機側:2,280ガル、5〜7号機側:1,156ガルとなりました。また、この基準地震動による原子炉建屋基礎版(注2)での揺れは、543ガル〜829ガルとなりました。

※応答スペクトル法と断層モデル法。活断層が起こす地震動を推定する手法で、国の定めた「耐震設計審雪旨釧では、この2つの手法を用いることが示されています。
(注1)解放基盤表面
 地下の固い地盤上に表層や構造物がないものとして設定する仮想的な岩盤面
(注2)原子炉建屋基礎版
 原子炉建屋の最地下階部

○原子炉建屋基礎版の地震動評価
 基準地震動は地中約150〜300メートルの解放基盤表面と呼ばれる地点での地震動です。原子力発電所の設備の耐震強度を考えるには、原子炉建屋基礎版での地震動が重要です。
 各号機について基準地震動が地表近くの原子炉建屋にどのように伝わるかを計算し、原子炉建屋基礎版上での地震動を評価しました。

○基準地震動・原子炉建屋基礎版での揺れ

4 耐震安全性向上に向けて

 同じ地震を想定する場合、1〜4号機(荒浜)側と5〜7号機(大湊)側さらに個別のユニット(号機)の地震の揺れは異なっていますが、当社は、耐震強化に向けた揺れを原子炉建屋基礎版で一律1,OOOガルとしました。今後、設備の耐震安全性の評価を行い、安全性向上のための工事を行っていきたいと考えています。今後、国・県の審議会で、地震メカニズム、活断層の評価や基準地震動のあり方などが審議される予定ですが、当社は、これらの審議の結果を適切に反映します。

○安全性工場のための工事例@
○安全性向上のための好事例A

(後略)

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