[2009_08_30_01]たんぽぽ舎 今月の原発 ついに浜岡原発が地震で停止 地震で壊れた5号機は 山崎久隆 震度6弱? この程度で済むは天恵 ある異変(たんぽぽ舎2009年8月30日)
 
 震度6弱?

 8月11日午前5時7分、折しも台風が接近中で大荒れの駿河湾でマグニチュード6.5の地震が発生した。
 最も心配される浜岡原発は、震源からの距離は約45キロ(震央距離約40キロ)だった。海底下23キロで起きたこの地震は、幸いなことに東海地震ではなかった。
 地震学者の石橋克彦さんが「大地動乱の時代」に「なお、想定されている東海地震とは別に、静岡県中部付近で近い将来M六クラスの直下型地震がおこる可能性がある。」と予測した地震が起きたと思われる。
 この「駿河湾地震」では倒壊家屋ゼロ、死者1名と、地震としては比較的被害が少なかった。もっとも、震度6弱で倒壊家屋ゼロは奇跡的で、この地域の人々が地震防災に高い関心と備えをしていたことを物語るものと思われる。
 ところが、またしてもというべきが、地震こより原発だけが意外な現象を起こしていた。
 浜岡原発は廃炉になっている1と2号機の他、3号機が定期検査中、4と5号機が運転中だったが、地震の影響でスクラムしたと発表されている。
 浜岡原発は震源からの距離が40キロだから、旧指針で定める「S1」の基準にさえ達しない。旧指針では距離が10キロ以内、マグニチュード6.5の地震に対して「最低保障」を義務づけていた。ところが4倍も遠くのマグニチュード6.5の地震だったのに、5号機のみ部分的とはいえ「S1」を超える揺れに襲われていたのである。
 他の4基ではそれほど大きな揺れに襲われていないので、大きな被害は報告されていないが、5号機のみまたしても放射能漏れが発生した。
 中部電力は人為的ミスで地震の影響ではないとするが、放射性物質(ヨウ素131)が環境中に出てしまったことに変わりはない。
 気象庁や防災技研の地震計は浜岡原発の近くにも設置されていたが、この地震計の記録は1号機がら4号機の記録とほぼ同じ水準(南北129ガル,東西98ガル,上下78ガル)であるが、5号機だけは南北219ガル、東西439ガル、上下177ガル、建屋1階では488ガルに達している。
 防災技研の地震計を設置する地盤よりも浜岡原発5号機が立地する地盤の方が劣悪だとしか考えられないのだ。

 この程度で済むは天恵

 地震の影響で原発は全て止まった。このおかげで電力需要は逼迫したかというと、そんなことはない。もともと産業需要の大きい中部電力は、この間の不況の影響で電力消費量は昨年よりも少ない上、猛暑でもないので2700万キロワットの最大需要予測に対して14.2%もの予備率を持っていた。
 浜岡原発の全て(約360万キロワット)が止まっても電力に占める原発の割合は11%程度なので、数字の上では乗り切れる。現在の消費量であれば予備率はまだ13%程度確保できる程だ。
 これは天恵であろう。東海地震が東南海地震と連動して起きれば、この約干倍のエネルギーになって浜岡原発に襲いかかる。耐震補強をしたはずの5号機で、たかだかマグニチュード6.5の地震でさえ基準(S1)を超えてしまい、さらにトラブルがいくつも起きるなど、志賀原発や柏崎刈羽原発で起きたことをそのまま繰り返した。
 これで東海地震に耐えられますか?という自然による「試験」が行われたと思うべきだろう。結果は、当然ながら「落第」だった。
 人が自然に対して謙虚にならなければ、もはや大規模災害の前に甚大な被害を免れない。
 一つの地震が残した教訓に応えられるのがどうか。それこそが叡智である。

 ある異変

 今年の夏は例年に比べて過ごしやすい。
 そのためもあってか、東京電力の電力消費量が低い。最大使用量は現在のところ5500万キロワットを下回る水準(7月30日の5450万キロワットが最高)で、これは1993年来なかったことである。
 もっとも大きいのは景気の影響であろうが、それに加えて省エネの取り組みが功を奏しはじめていると考えられる。
 これまでは気温が摂氏30度を超えると一度上がるたびに170万キロワットの電力需要が増大すると言われてきたが、今年の夏は摂氏30度を大きく超える日が少ないとはいえ、1度あたりの電力消費量は170万キロワットを下回ることが多い。
 現在、東電の原発は17基中9基が止まっていた。柏崎刈羽原発では7号機を除く全て、福島第一原発も3号機が8月13日まで停止しており、福島第二原発に至っては4号機が定期検査中。現在も7基が停止しているわけだ。
 これだけ止まっていても電力需要が逼迫する気配もない。東電は最大6100万キロワットを予測し、6730万キロワットの設備を準備したが、それを1200万キロワットも下回った状況が続いている。
 特に顕著なのはお盆過ぎである。
 従来の経過を見るとお盆までは電力消費量が低く抑えられていて、お盆過ぎに急激に需要が高まる傾向があった。気温動向とは別に、そう言う傾向があったのだ。これは梅雨明けの季節が例年気温も高く需要が増大する時期に当たり、各企業に対して夏休みの前倒しをすることで需要を抑えてきたため、いわばその反動でお盆明けの電力消費量が増大したと考えられる。
 しかし今年の夏はお盆休みが終わった8月17日以後も電力消費量は伸びていない。
 気温もそこそこ高く、景気回復の兆しもあるはずなのだが、電力消費量が伸びない最大の理由はおそらく省エネ努力の成果であろう。
 これが徹底されれば通年を通して電力消費量5500万キロワットという、1990年代はじめ頃の水準に下げることが出来る。あとは、酷暑日と呼ばれる摂氏35度を超える気温の際に、系統遮断を含めて、どれだけ需要を抑えられるかと、そのような気温にならない環境作りの二つが成功すれば東京電力が用意する必要のある発電設備は5500万キロワットで良い時代がすぐそこに来ている。
 電力中央研究所では、日本の人口減少などがら2020年頃には電力需要のピークを迎え、以後は漸次減少すると予測している。それを10年ほど早めることで全体の需要増加を抑えることが出来れば、エネルギー浪費構造がらそれだけ早く抜け出せるのである。
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